仮想通貨の所得計算②FAQ解説編

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「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」が公表されました

国税庁より12月1日付けで、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」(以下FAQ)が公表されました。

FAQでは確定申告の対象となる仮想通貨の損益等について、具体的な取扱を数値例とともにまとめたものです。仮想通貨の所得計算に関する9つの「よくある質問」に答える形で、仮想通貨に関する所得の計算方法等を解説しています。

仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf

本記事では当該9つの設例を紹介し、注意すべきポイントについてコメントしていきます。
目次

Q1:仮想通貨の売却

保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨
の取得価額との差額が所得金額となります。

ポイントは購入時の支払手数料の取扱です。

FAQ1の(例)に記載の通り、購入時に支払った手数料は、購入した仮想通貨の取得価額に含めます。例えば、以下のようなケースが考えられます。

ケース1-1
1BTC2,000,000円のとき、取引所において0.5BTCを購入し、1,000円の手数料を支払った。
この場合、購入した0.5BTCの取得価額は、以下のようになります。

購入代金0.5BTC✕2,000,000円/BTC=1,000,000円
支払手数料1,000円
取得価額=購入代金+支払手数料=1,001,000円

ケース1-2
1BTC2,000,000円のとき、取引所において0.3BTCを購入し、0.001BTCの支払手数料を支払った。
この場合、購入した0.3BTCの取得価額は、以下のようになります。

購入代金0.3BTC✕2,000,000円/BTC=600,000円
支払手数料0.001BTC✕2,000,000円/BTC=2,000円
取得価額=購入代金+支払手数料=602,000円

Q2:仮想通貨での商品の購入

保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商
品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。

ポイントは、仮想通貨を仮想通貨のまま使用した場合にも所得が発生するという点です。
最近、仮想通貨建てで決済可能なお店が増えつつあります。そういったところで仮想通貨を使用した場合は、取得価額と使用時の時価の差額が所得金額とされます。
タックスアンサーが公表される前は、仮想通貨を仮想通貨のまま使用した場合は課税されないのではないか、と考えられていた時期もありましたが、この考えは明確に否定されましたので、ご注意ください。

Q3:仮想通貨と仮想通貨の交換

保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使
用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差
額が、所得金額となります。

ポイントは、仮想通貨間の取引であっても課税されるという点です。
FAQが公表される前は、仮想通貨間の取引は取引時に等価な2種の仮想通貨を交換するものであり、使用には該当せず課税されないのではないか、と考えられていた時期もありましたが、この考えは明確に否定されましたので、ご注意ください。

Q4:仮想通貨の取得価額

同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の当該仮想通貨の取得価額
の算定方法としては、移動平均法を用いるのが相当です(ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えありません。)。

ポイントは、取得価額の算定方法が明示された点です。原則として移動平均法、継続適用を要件として総平均法が認められます。

いずれの方法を採用するかによって、期中に売却した仮想通貨の取得価額の金額が相違するため、結果として収入金額も相違します。また、いずれの方法による場合にも、Q1の支払手数料を忘れないようにしましょう。

Q5:仮想通貨の分裂(分岐)

取得時点では所得が生じず、その新たな仮想通貨を売却又は使用した時点において所得が生じることとなります。
なお、その場合の取得価額は0円となります。

ポイントは、ハードフォークにおける新たな仮想通貨の付与は、付与された時点では何ら課税されないということです。

本年はビットコインが複数回のハードフォークを実施するなど、新たな仮想通貨の付与が行われる場面に出くわした方も多かったと思います。そのような場合には、付与された仮想通貨は(仮にハードフォーク直後に上場され価格が形成されたとしても)、付与時点では所得を生じさせず、取得価額を0として計算することになります。

Q6:仮想通貨に関する所得の所得区分

ビットコインをはじめとする仮想通貨を使用することによる損益は、事業所得
等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分される

ポイントは、基本的には仮想通貨による利益は雑所得になるという点です。雑所得とはなにかについては、別記事を参照してください。

状況次第では、事業所得となる可能性があります。具体的には、以下の様な場合、仮想通貨による損益は事業所得となります。

例えば、事業所得者が、事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業に付随して生じた所得と考えられますので、その所得区分は事業所得となります。

このほか、例えば、その収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります。

Q7:損失の取扱

雑所得の金額の計算上生じた損失については、雑所得以外の他の所得と通算す
ることはできません。

ポイントは、他に雑所得の金額がマイナスになっているものがあれば、それは通算できるということです。

例えば、仮想通貨の他に別途アフィリエイト収入がある場合を考えてみます。アフィリエイト収入を得る目的で支出した書籍代やセミナー費が、アフィリエイト収入を超える場合、アフィリエイトにかかる雑所得はマイナスとなります。

このような場合、当該マイナスの金額は、仮想通貨の取引から生じた雑所得と相殺することが可能です。もちろん、仮想通貨の利益を圧縮する目的でむやみに支出した場合は、否認される可能性があります。

Q8:仮想通貨の証拠金取引

仮想通貨の証拠金取引による所得については、申告分離課税の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります。

ポイントは、いわゆる仮想通貨FXは、通常の仮想通貨の取引と同じく、雑所得になる点です。

外国為替証拠金取引(いわゆるFX)は、租税特別措置法の特例規定により、申告分離課税の対象とされています。

しかし、FAQの以下に示される通り、仮想通貨FXは当該特例の対象外であるため、通常の仮想通貨の取引と同じく雑所得として計算します。

租税特別措置法上、先物取引にかかる雑所得等の課税の特例(申告分離課税)の対象は、金融商品取引法等に基づき行われる①商品先物取引等、②金融商品先物取引等、③カバードワラントの取得等とされており、仮想通貨の証拠金取引は、これらのいずれの取引にも該当しませんので、申告分離課税の適用はなく、その取引により得た所得については、総合課税により申告していただくことになります。

Q9:仮想通貨のマイニング等

いわゆる「マイニング」(採掘)などにより仮想通貨を取得した場合、その所得は、事業所得又は雑所得の対象となります。

この場合の所得金額は、収入金額(マイニング等により取得した仮想通貨の取得時点での時価)から、必要経費(マイニング等に要した費用)を差し引いて計算します。

ポイントは、マイニングに成功したとき所得となり、所得金額はマイニング成功時の時価となるという点です。

仮想通貨のマイニングや、ネットワークの維持管理の目的で仮想通貨が付与されたときには、たとえ使用や売却をしていなくとも、所得を生じさせることとなるので、注意が必要です。

おわりに

FAQの公表により、仮想通貨の所得計算の具体的な方法がかなり明らかになってきました。

基本的にはFAQの内容を遵守し、明文の規定がないものもこれを十分斟酌することで、適切な所得計算ができるものと思われます。

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