本記事では確率論の基礎的事項であるボレル集合とボレル関数の定義を整理しています。
目次
σ-加法族(sigma-algebra, sigma-field)と可測集合(measurable set)
\( \Omega\)をある集合とします。\( \Omega\)の部分集合の族\( \mathcal{F}\)が以下の3条件を満たすとき、\( \mathcal{F}\)をσ-加法族といいます。
- \( \Omega \in \mathcal{F}\):全体集合はσ-加法族の要素
- \( A\in \mathcal{F}\Rightarrow A^c\in \mathcal{F}\):σ-加法族の要素の補集合はσ-加法族の要素
- \( A_1,A_2,\cdots \in \mathcal{F}\Rightarrow \bigcup_{k}{A_k}\in \mathcal{F}\):σ-加法族の要素の加算無限和はσ-加法族の要素
σ-加法族の集合を可測集合といい、\( \Omega\)とσ-加法族\( \mathcal{F}\)を組として考えた\(\left( \Omega, \mathcal{F}\right)\)を可測空間といいます。
σ-加法族の概念は積分や確率を考えるときに重要になります。
\( \Omega\)の部分集合に対してその面積や確率を定義したいわけですが、その際どの程度「細かく」観測するかという基準が必要になります。そのときにσ-加法族を定めておくと都合がいいのです。
ボレル集合族(Borel field)、ボレル集合(Borel set)
\( S\)を位相空間とし、\( S\)の開部分集合族\( \mathcal{O}\)が定義されているとします。
\( S\)の開部分集合族\( \mathcal{O}\)はσ-加法族であるとは限りません。開部分集合族\( \mathcal{O}\)はσ-加法族の定義1.\( S\in \mathcal{O}\)と3.\( A_1,A_2,\cdots \in \mathcal{O}\Rightarrow \bigcup_{k}{A_k}\in \mathcal{O}\)は満たしていますが、\( A\in \mathcal{O}\)ならば\(A^c\in\mathcal{O}\)であるとはいえないからです。
そこで、\( S\)の開部分集合族の要素をすべて含むようなσ-加法族を考えます。そのようなσ-加法族はいくつもあり得ますが、それらのなかで最小のものを\( \mathcal{B}(S)\)で表し、これを\(S \)の(位相的)ボレル加法族とよびます。
\( \mathcal{B}(S)\)の要素を(位相的)ボレル集合とよびます。
ボレル加法族は\( S\)の開集合を含んでおり、またボレル加法族の要素は可測集合です。
ボレル関数(Borel fucntion)
\( \left( X ,\mathcal{B}(X)\right)\)\( \left( B ,\mathcal{B}(B)\right)\)を可測空間とします。
関数\( \phi:X \to B\)がボレル関数であるとは、\( \forall B \in \mathcal{B}(B)\)に対して\( \phi^{-1}(B)=\left\{x \in X:\phi(x)\in B \right\}\in\mathcal{B}(X)\)であることをいいます。
つまり、ボレル集合\( B\)の\( \phi\)による逆像がボレル集合であるということです。
参考文献
この記事で扱った定義は以下の書籍に基づいています。確率論の基礎から始めて、確率微分方程式とその応用について学べる良書です。
また、位相空間に関しては、下記の書籍を参照しました。集合・位相の基本的事項を扱った有名な教科書です。