日本公認会計士協会(JICPA)の中に調査・研究のチームがあるのをご存じでしょうか。その名もJICPAリサーチラボ。
2017年にできたJICPAの下部組織で、公認会計士業務に関する調査・研究をリードする役割を担っています。
JICPAリサーチラボの活動
JICPAのお知らせによると、JICPAリサーチラボは以下のような研究活動を行っています。
- データと分析に基づく会計士業務の実態把握
- 諸外国との制度比較
- 各種施策の記録と整備
- 公認会計士向けの情報発信
- 外部組織や経営者との連携
JICPAリサーチラボの研究は、JICPAの機関紙『会計・監査ジャーナル』にも掲載されるようです。
『会計・監査ジャーナル』2021年3月号には「上場企業の監査実施状況に係る分析」として、監査報酬や監査時間、監査報酬の度数分布などが紹介されています。
以下は上記報告から抜粋した、監査報酬と監査時間の推移の図です。
2015年以来監査報酬は一貫して上昇傾向、時間数もほぼそれに対応する形で増加しています。この分析はJICPAの監査実施状況調査をもとに作成されており、JICPAリサーチラボの活動の一つである、データ分析による実態把握の賜物です。
ちなみに、このデータに以下のような視点を加えると、将来の監査報酬・監査時間の予測ができたりするのかもしれません。
- 長期のデータを使って適当な関数で近似する
- 経済イベントや関連するマクロデータ(GDP成長率や株価指数や企業の利益水準など)を回帰する
公認会計士業務をリサーチで支援する役割に期待
JICPAリサーチラボの取り組みは非常に魅力的です。特に、会計・監査に関するデータから業界に役立つ洞察を得ようという取り組みは、大いに歓迎するところです。
会計士の使命は「国民経済の健全な発展に寄与する」ことですが、この使命を果たすべく、監査法人・会計事務所・事業会社の垣根を超えた広い視野での情報整理と共有が必要です。
業界の共有知を発掘・拡大する主体として、JICPAリサーチラボの活動から目が離せません。
ちなみに、過去には調査・研究スタッフの募集も行われていたようです(リンク)。機会があれば私も挑戦してみたいですね(ただし英語が……)