簿記代数に可逆性は必要なのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

複式簿記を代数的に表現するという研究があります。私はそれを簿記代数と呼んでいます。

簿記代数では、仕訳や試算表といった「複式簿記のオブジェクト」の集合に「仕訳の追加」「試算表の合算」といった加法を定義し、群や環上の加群を導入します。

【参考記事】【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

複式簿記の構造を群として考えるということは、複式簿記のオブジェクトにはどれも逆元が存在するということです。

この逆元というのは、ある仕訳の逆仕訳が想定されます。この逆仕訳というのは、ある仕訳の取り消し処理のことです。

どんな仕訳にも逆仕訳が存在するということは、どの仕訳も取り消せるということです。その取り消しは実務的な要請(誤謬の訂正)という意味合いが大きいように思えます。

しかし、もし「理想的な」会計実務が想定でき、仕訳の誤りがなくなったら、どうでしょうか。それはつまり、仕訳の取り消し処理が不要ということです。そのような場合、もはや複式簿記の代数的構造において必ずしも逆元の存在を認める必要はありません。

したがって、群よりもさらに原始的な構造であるモノイドを複式簿記の構造として考えることができます。

【参考記事】代数的構造の関係を図示してみた(マグマ、半群、モノイド、群、アーベル群、環、可換環、整域、体)

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*