「苦労は買ってでもせよ」という言葉があります。苦労は人間を成長させる機会であるため、苦労はしたほうが良いという教えです。
一方、「同じ苦労を味わわせたくない」と後進を案じる気持ちの大切さもよく知られてます。自分たちは不便な思いをしたけれど、それを乗り越えることができたので、後進には同じ苦痛を味わってほしくないという想いの現れです。
「苦労は買ってでもせよ」という教えと、「同じ苦労を味わわせたくない」という想い。相反する二つの考え方を、どう整理したら良いのでしょうか。
目次
苦労はポジティブなものか、ネガティブなものか
「苦労は買ってでもせよ」という言葉の裏側には、苦労は人間を成長させるポジティブなものである、という価値観が存在しているように思います。
一方で、「同じ苦労を味わわせたくない」という気持ちの裏側には、苦労は出来ることなら避けた方が良いネガティブなものである、という考えが存在しているように思います。
苦労と一言で言っても、良い苦労も悪い苦労もあります。成長機会となる苦労もあれば、単なる疲労のもとという類の苦労もあります。
苦労という言葉をポジティブなものと捉えるのか、ネガティブなものと捉えるかによって、苦労を歓迎するのか避けるのかという態度が決まるというわけです。
苦労は経験すべきか?に対する答えの4つの類型
「苦労は買ってでもせよ」という教えは、ポジティブな苦労を経験させたいという態度と解釈できます。
「同じ苦労を味わわせたくない」という想いは、ネガティブな苦労を経験させたくないという態度と解釈できます。
ここにはポジティブかネガティブかという軸ともうひとつ、それを誰かに経験させたいか否かという軸が存在しています。
したがって、「苦労は経験すべきか?」という問いかけに対して、苦労がポジティブかネガティブか、経験させたいか否かという2軸から、以下の4つの類型が考えられます。それぞれに名前もつけてみました。
- 成長志向型:苦労はポジティブ・経験させたい
- 成長阻害型:苦労はポジティブ・経験させたくない
- 逆襲型:苦労はネガティブ・経験させたい
- 慈愛型:苦労はネガティブ・伝えたくない
成長志向型:苦労はポジティブ・経験させたい
相手の成長を願って「苦労は買ってでもせよ」と叱咤激励するのは、この類型です。
苦労はネガティブなものという考えを持っている人に対して成長志向型の応援をすると、返ってプレッシャーを与えてしまうかもしれないので、注意が必要です。
成長阻害型:苦労はポジティブ・経験させたくない
苦労は良いものとわかっていながら、それを経験させようとしないタイプです。誰かの成長をよく思わない人は、こうした考えを持つかもしれません。
苦労はネガティブなものと考えている人にとって、成長阻害型の人は自分の苦労を増やさないので好まれそうですが、良い苦労も遠ざけてしまっているおそれがあります。
逆襲型:苦労はネガティブ・経験させたい
「俺はこんな辛い思いをしたんだから、お前も同じ苦労をして当然だ」と強要する人がたまにいますが、この類型に属します。
こういう人が先輩だとどんどん苦労が降ってきますが、自分の成長を促してくれる機会もあるので、ポジティブに捉えたいです。
慈愛型:苦労はネガティブ・伝えたくない
「同じ苦労を味わわせたくない」「苦労するのは私で終わりにして、後進は同じことに悩まないようにしてあげよう」というタイプがこれに該当します。
悪い苦労は継承せず、良い苦労を丁寧に継承できれば、良い人間関係が生まれるはずです。
まとめ
ポジティブな苦労もネガティブな苦労もあります。
それを他の誰かに経験させるかどうかは、個人の価値観や誠実性に依存します。
成長阻害型や逆襲型にならず、成長志向型や慈愛型の考えを持てるようになりたいものです。