企業はその経営を効率的なものにするために、利益目標を立てます。
利益目標は組織の道標になるとともに、事後的に活動を振り返る際の基準になります。
この記事では利益目標と実際利益に差異が生じたとき、その原因を究明するための手法「事後的分析」について紹介します。
事後的分析とは
会計学者デムスキーが提案した事後的分析(事後的差異分析)は、利益目標と実際の利益との差異を明らかにするためのフレームワークです。
伝統的な差異分析では、企業を取り巻く環境に変化があっても、計画を細かく修正することを前提としておらず、計画に沿った活動を継続することで生じる機会損失が考慮されていませんでした。
事後的分析では、こうした従来の差異分析の限界を「事後利益」という概念の導入によって解消します。
事後利益とは、環境変化などが生じ、企業にもたらされる各種の情報が更新されたあとで「最適な戦略」を採ったときに稼ぎ出される利益を言います。
事後的分析は、計画利益と事後利益、事後利益と実際利益の、それぞれの差を計算しその原因を調べます。
こうすることで、計画の予測誤りや機会損失を認識できるのです。
過去の振り返り方を学ぶ
事後的分析は「過去の振り返り方」に関する教訓を与えてくれます。
事後的分析は十分な情報を得たという条件のもとではじき出された「本来得られたであろう利益」を比較対象とすることで、計画の予測の巧拙や機会損失を知ることができます。
この考え方は私たちの日常生活においても応用できます。
私たちは目標と実際の達成度に乖離が生じたとき、後悔したり反省したりします。後悔という点に関していえば、変えられない過去を振り返るのは無意味であるという考え方もよく聞かれます。
しかし重要なのは、目標と実際の差をしっかり検証し、将来の成功につながる反省を得ようという前向きな姿勢です。
事後的分析は、十分な情報があれば達成できたであろう水準を見極めることで、自分が選択しなかった「より良い方策」の有無を把握するきっかけになります。また、そういった方策を計画時点で選択することはできたのかを振り返ることで、将来においてより良い選択ができる可能性を高められます。
目標と実際の乖離をそのまま考察するのではなく「十分な情報があれば到達できたであろう達成度」を振り返りの基準にすることで、反省はその効果を高めるのではないかと思います。