この記事では,会計における「支配」の概念について,具体的にどのようなシーンで登場するのかをまとめています。
概念フレームワーク
企業会計における基本的考え方や用語の定義をまとめた資料が,概念フレームワークです。概念フレームワークには資産と負債の定義が記述されています。
資産の定義は,過去の事象の結果として企業が支配する経済的資源です。また,負債の定義は,企業が支配している経済的資源を放棄または引き渡す義務です。
いずれの定義にも「企業が支配する」という言葉が使われています。
このように,支配という概念は,資産や負債という会計の最も基本的な概念の定義に用いられる重要な概念です。
金融商品会計
金融資産の認識中止(オフバランス)の考え方には,リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチとがあります。
このうち財務構成要素アプローチは,金融資産に含まれる財務構成要素の支配が移転時点で,それぞれの財務構成要素を貸借対照表からオフバランスするという考え方です。
支配の移転が金融資産のオフバランスという会計処理を決定づけるという意味で,重要な役割を果たしています。
収益認識
2021年4月より適用予定の「収益認識に関する会計基準」では,収益認識の対象となる契約にかかる履行義務の充足時期を判定するに当たり,財・サービスの支配の移転に着目します。
財・サービスの支配が取引相手に移転するタイミングで収益認識されるため,支配は会計処理のタイミングを決定づける重要な要素であると言えます。
連結会計
連結会計は,企業グループ全体の財務諸表を作成・公表することで,企業のグローバル展開や多角化経営に関する会計情報を提供するものです。
企業グループとしてどの範囲までの企業を含めるかという視点(これを連結範囲といいます)は,グループの中核となる親会社の支配の及ぶ範囲とされます。これを支配力基準といいます。
連結会計における支配は,連結の範囲を決定する重要な要素であると言えます。
参考文献
この記事の内容は以下のテキストを参考にしました。会計の基本的な考え方や,現代のルールとそこに至る歴史的経緯,ビジネスにおける会計の重要性などについて解説してあり,語り口も軽やかで読みやすい教科書です。