割引計算を「換算」と考えてみる

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この記事では,貨幣の時間価値とはなにか簡単に説明します。そして,将来キャッシュ・フローを現在価値に割引くプロセスが,通貨換算と同じような理屈で説明できることを述べます。

貨幣の時間価値とはなにか

今100万円もらうよりも,将来100万円もらうほうが,価値が低いとされます。あまり複雑な状況をイメージせずに考えてください。

例えば,今100万円もらって,それを預金すれば,将来100万円にいくらかの利息がついて返ってきます。このような状況から,同じ額面のキャッシュ・フローでも,現在より将来のほうが価値が低いといわれているのです。

発生時点の違いによるキャッシュフローの価値の多寡を,貨幣の時間価値といいます。

設備投資の意思決定

企業が設備投資を行うか否か意思決定をする際に,貨幣の時間価値を考慮した分析を行います。

設備投資の意思決定は,その効果が長期に渡ります。意思決定によって多額の投資キャッシュ・アウト・フローが生じ,設備の稼働を通じて将来に渡る収益を生み出し,キャッシュ・イン・フローとして回収されます。

将来のいくつもの時点でのキャッシュ・フローを全て考慮して,この投資意思決定が採用に値するかどうかを決めたいので,設備投資の意思決定にあたってはキャッシュフローの時間価値を考慮すべきです。

割引現在価値によるキャッシュ・フローの換算

異なる時点で発生するキャッシュ・フローを比較するためには、将来キャッシュ・フローをそれと同じ価値を持つ現在のキャッシュ・フローに変換する必要があります。

この変換プロセスを現在価値に割引くといい,これにより求められる将来キャッシュ・フローの価値を割引現在価値といいます。

将来キャッシュ・フローを現在価値に割引くプロセスは,換算と表現してもいいでしょう。

外貨換算と割引現在価値への換算

会計の文脈における換算といえば,外貨換算が有名です。

3ドルと300円のどちらが安いかを直接比べることはできませんが,1ドルが110円に等しいということがわかれば,3ドルは330円と等価だとわかります。したがって,3ドルより300円の方が価値が低いと判定できます。

時点の異なるキャッシュ・フローの比較も,これと同じようなアイデアによって比較ができるようになります。

もし1年に10%の利殖が期待されているということがわかれば,1年後の1円は現在の0.909円(\( =\frac{ 1}{ 1+10%}\))と等価だとわかります。

この0.909という数字は,1年後のキャッシュ・フローを現在の価値に換算するレートと解釈できます。これをディスカウント・ファクターといいます。

将来の100万円と今の100万円を直接比べることはできませんが,将来の1円が現在の0.909円に等しいということがわかれば,将来の100万円は現在の\( 90.9\)万円と等価だとわかります。したがって,将来の100万円より今の100万円の方が価値が高いと判断できます。

参考文献

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