この記事では,企業価値評価手法のひとつである残余利益モデルについて説明します。
残余利益モデルがどういうアイデアに基づいているのか,その使用にあたってどういった情報が必要になるのかを述べます。
残余利益モデルとはなにか
残余利益とは,正常利益から株主が期待する利益分を差し引いたものとして定義されます。ここでいう株主が期待する利益とは,株主資本簿価に株主資本コストを乗じて算定されます。
残余利益は企業価値評価(とくに株主価値の評価)に用いることができます。
具体的には,将来の各期における残余利益の割引現在価値を株主資本コストを用いて求め,その総額に評価時点の株主資本簿価を加えることで,株主価値が計算できます。この企業価値(株主価値)評価手法を残余利益モデルや残余利益アプローチといいます。
株主価値を計算する手法としては,配当割引モデルも有名です。実は一定の仮定のもと,クリーン・サープラス関係が成立する会計のもとでは,残余利益モデルと配当割引モデルは同じ結果を導きます。
残余利益モデルの解釈と使用する情報
残余利益モデルは,株主価値に(株主)資本コストを反映する評価方法です。資本コストは投資家の要求収益率としての意味を持ちます。
残余利益モデルは,資本コストに見合う利益を超過した分について,株主資本簿価を超える価値がつくと解釈できます。
残余利益モデルに必要な情報は株主資本簿価と会計上の利益と資本コストです。資本コストについては自社の財務戦略上これを把握しているケースは増えてきていると考えられます。株主資本簿価と利益は会計上の数値であるため,把握は容易です。こうした状況もあって,残余利益モデルは実務的にも利用しやすい手法と言えます。
参考文献等
リンク