2021/5/24(月)21時から,Twitterスペースで「専門性」に関するトークセッションに参加します。
専門性を身につけたい,専門性を高めてビジネスで活躍したいという声を,私の周りでもよく聞きますが,そもそも「専門性」とは何なのか,会計士であり作家の田中先生とディスカッションします。
この記事ではその準備として,専門性を考える上でどんな視点が重要になりそうか整理してみます。
専門性の定義
こちらの記事では,専門性とはそもそもなんなのかという疑問を提示しています。
weblio辞書によれば,専門性とは
特定の分野についてのみ深く関わっているさま。高度な知識や経験を要求されること、またはその度合い。
とあります。この定義には大いに納得するところです。
専門性という言葉は,主に職業上のスキルに関連して使われるシーンが多いと考えられます。実際,以下の記事「人生の先輩達に聞いた専門性についての見解」の節でも,専門性という言葉を仕事と関連付けて認識しているコメントが多いです。
職業に関して専門性を有する人を専門職といい,Wikipediaには以下のような属性を持つ人が(労基法上の)専門職であるとされます。
- 博士の学位を持つ者
- 会計士や弁護士や医師などの有資格者
- 特許の発明者
- 一定の学歴を持つ技術者で年収が比較的高い人
ただし,一般に「専門性」といった場合には,職業的専門性以外の専門性もあるのではないでしょうか。
趣味が高じて高い技能を持つ人など,能力的な希少性をもつ人もまた専門性を有する人と認識されているように思います。
以上を踏まえると,専門性の定義を考えるにあたっては,辞書的な意味には含まれない「仕事をする主体としての能力」というニュアンスを意識する必要があるように思います。その能力を表象する資格や知名度も,当然関連するでしょう。
専門性と他者評価
専門性が他人から価値を見出してくれるものなのか,という視点は重要です。その視点があって初めて「稼げるか否か」といった議論が成り立つからです。
このような論点は,専門性に対する他者評価の問題といえるでしょう。具体的には以下のような問いかけがあります。
- 専門性は収入に影響を与えるものなのか
- 専門性に価値を見出してくれる人は多いのか
- 専門性を見出してくれる機会は多いのか
- 価値を見出してくれる人がつけてくれる価値は大きいのか
これらは「他者から評価されない専門性に意味はあるのか」という議論と表裏一体です。
前述の労基法上の専門職には「博士の学位を有する者」が挙げられていますが,現代の日本において博士課程をビジネスパーソンとして重用する下地は十分整っているとは言えず、一部では「博士をとっても食えない」と言われることもあります。
博士という学位は研究能力の表象であり,専門性の証明ともいえるものです。まだ解明されていない問題に対して合理的な答えを提示することのできる能力に対して,博士という学位が与えられます。
「博士は食えない」という主張は,日本企業という環境においてはそれらの能力を適切に評価できない可能性があるということを示唆しています。一方で、欧米のTech系企業では多くの博士課程の修了がビジネスにおいて活躍されているとも聞きます。
こうした日本と海外の差は専門性を発揮する環境の重要性を物語っているのではないでしょうか。
専門性と組織
『専門性で稼ぐ人、専門性で稼げない人|田中靖浩 』では,独立して自らビジネスと営むという生き方と,専門性の関係についても言及しています。
専門性があるとフリーランスとして独立した後も活躍できるという考え方は,直感的には頷けます。
しかしよくよく考えると,専門性が高くともそれが収入の保障として機能するかは,専門性の内容や分野やアピールのし方に大きく依存します。また,組織人として活躍しながら,高い専門性を有する人も数多くいます。
こうした状況を踏まえると,フリーランスに適した専門性,組織に適した専門性というものがありそうです。
専門性の身につけ方
独立するにせよ,組織人として働くにせよ,専門性を高めることによって自身の価値を高めることができるなら,その専門性をどう培えばよいのかが気になります。
この点については,以下の2軸で考察すると上手に整理できそうです。
- 専門性が体系的に学ぶ機会があるかないか
- 習得が難しいか簡単か
体系的に学ぶ機会があり,習得が難しい専門性の例は,難関資格です。
体系的に学ぶ機会があり,習得が簡単な専門性の例は,簡易な資格や,最近だと基礎的なプログラミングもそうかもしれません。
体系的に学ぶ機会がなく,習得が難しい専門性の例は,『専門性で稼ぐ人、専門性で稼げない人|田中靖浩 』で述べられている表現力や,マネジメントスキルなどでしょうか(MBAなどではそれなりに体系的に教えているかもしれません)。
体系的に学ぶ機会がなく,習得が簡単な専門性の例は,組織内の専門業務の基礎的な部分などが当てはまるでしょう。
いずれの場合も,そのスキルに対して他者がどう評価するかという視点を合わせて議論するのが有益だと思われます。
習得の難しさが他者評価に大きく影響し,体系的に学ぶ機会の有無はオリジナリティに関わってくるものだと考えています。
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