ひらめいたアイデアや仮説を検証し考察してから論文を書こうと思っても,書けません。なぜなら,検証や考察に終わりはなく,自分が納得の行く結論にはいつまで経ってもたどり着けないからです。研究者としての探究心があればあるほど,分析の「終わり」は遠いと感じるでしょう。
論文を書き進めるために大切なことは,考えたことを論文にまとめるのではなく,論文を書きながら考えをまとめるのだという意識を持つことです。論文を研究の最終工程と捉えるのではなく,研究を効果的に進めるためのプロセスと考えるのです。
研究しながら論文を書き進めることで,得られるメリットがあります。
第一に,自分のアイデアをすぐに誰かに見せられるようになります。これによってアドバイスや意見をもらいやすくなります。予め自分以外の研究者から論文に対する意見をもらい,それをもとに改善を行うことで,研究をよりよいものにできます。
第二に,論文を書く過程で考えが整理され,新たな研究アイデアが湧きます。ゼロから考察を行うのは難しいものですが,自分の考えを都度文書化することで,自分の理解を客観視できます。自分の考えをアウトプットしながら思案を巡らせることで,足場を固めながら前に進むことができ,そこから別の研究アイデアを得ることも可能になります。
このように,論文は研究のまとめとして執筆するのではなく,研究の進捗に合わせ書き続けていくと効果的です。
このアプローチは社会人博士として数多くの研究業績を挙げた中川さんにご教示いただきました,どうもありがとうございます。
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