論文紹介:Do accountants make better chief financial officers?(会計士はいいCFOになれるのか?)

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この記事では,会計のバックグラウンドを持ったCFOと企業業績についての関係を調べた論文”Do accountants make better chief financial officers?”を紹介します。

何についての論文か

“Do accountants make better chief financial officers?”(以下Hoitash et al. (2016))は,会計畑出身のCFOが保守的な企業成果と関連しているかを調べた論文です。

Rani Hoitash, Udi Hoitash, Ahmet C. Kurt, Do accountants make better chief financial officers?, Journal of Accounting and Economics, Volume 61, Issues 2–3, 2016, Pages 414-432, ISSN 0165-4101, https://doi.org/10.1016/j.jacceco.2016.03.002.

どこが面白いのか

Hoitash et al. (2016)が面白いのは,CFOのバックグラウンドに注目し,企業の投資行動や資金調達の動向と関連付けている点です。

会計の知識や経験はCFO(最高財務責任者)にも求められるものではありますが,Chief “Financial” Officerはあくまでファイナンスの総責任者であり,企業の投資や資金調達に関する専門性を発揮する機関であって,会計(Accounting)とはスキルセットが異なります。

特に,会計は利益の測定や投資効率の追求といった管理的側面も強く,規則の順守や保守性が求められるケースもあります。

Hoitash et al. (2016)はファイナンスとアカウンティングの差異に着目し,会計系のバックグラウンドを持つCFOと企業行動を関連付けて分析している点で,独創的です。

どんな示唆があるか

Hoitash et al. (2016)によれば,会計系CFOは企業の成長性と関連があり,また,その関連性が大きく異なっています。

成長の高い産業においては,会計系CFOのいる企業は研究開発や設備投資への投資が少なく,外部からの資金調達も少ないといいます。

一方,成長率の低い産業においては,会計系CFOのいる企業はコスト効率が高いのだそうです。

企業価値との関係についても分析しており,高成長産業では企業価値と負の相関,低成長産業では企業価値と正の相関があることが明らかになりました。

こうした現象が起こる理由についてHoitash et al. (2016)は「リスクの回避」を挙げています。

たしかに,会計系のバックグラウンドを持つ人は保守的な傾向を持っている気がしますし,アグレッシブな支出を回避しそうという印象がありますね(笑)。成長産業においてこういった傾向がコスト効率の向上や企業価値増加に良い影響をもたらすことは,納得できます。

成長性の低い成熟した産業では,会計系のバックグラウンドは企業価値とポジティブな関連があるとのことですから,自分は会計人っぽいなと思っている人は,成熟した組織の方が活躍できるのかもしれません。

もちろん,この分析は全体的な傾向ですから,会計人材がCFOとして活躍しているケースも多々あるでしょう。自分の適性に合った環境を選ぶのが大事です。

関連する文献

会計系の専門職と言えば公認会計士です。最近は会計士をとってからCFOを目指すというキャリアパスもよく聞きます。

会計士はどんな経験を積むことができるのか,その先にはどんなキャリアがあるのか気になる方は,こんな本を読んでみてもいいでしょう。


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