ビットコインが話題になっています
Twitterではビットコイン価格とチューリップ・バブルやITバブルを比較して見せるグラフが注目を集めました。
ビットコインは従来の金融資産とは違うのか
株は、たとえ配当がなくとも、企業の清算による分配を得られる(可能性がある)ので、資産です。
ビットコインは、購入価格以上の価値を得られそう、という期待のみでキャッシュフローによる裏付けがないので、理論上は完全にバブルの産物です。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月8日
ビットコインは配当も生まなければ清算価値もない、ただ将来より高く売れそうだという期待によって値を上げている。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年12月6日
ビットコインはバブルなのか
ビットコインの価値の源泉はキャッシュ・フローではなく、明日には今日より値上がりするだろうという「期待」であると考えることが出来ます。
この「期待」を価値の源泉とする資産は、標準的な経済学の枠組みの中で起こりうるバブルという意味で、合理的バブルと呼ばれます。
ビットコインはバブルだと申しました。ここでいうバブルとは、将来キャッシュ・フローの裏付けなく、上がると思うから買う、が繰り返されて値を保っている資産の意味です。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年12月8日
キャッシュ・フローの裏付けがある資産は、あまりに値を下げるとそのキャッシュ・フローを狙った買いが入るので、価格がゼロになったらなることはありません(ゼロなら裁定機会)。
しかしバブルは違う。皆がほしいと思うから買われているバブル資産は、みんなが要らないと思えば消えてなくなります。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年12月8日
バブルははじけます。べらぼうな値段になっていきなりはじけます。
怖いのは、いつはじけるかわからないこと、そしてはじけたあといくらになるかわからないこと。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年12月8日
合理的バブルは欲しいと思うプレーヤーが多ければ、際限なく価格を上昇させます。
しかし、キャッシュ・フローの裏付けのない資産を(持っていても誰も保証してくれない資産を)大金をはたいて買うことに疑問を抱き始めると、バブルははじけます。いつそれが訪れるかはわかりません。しかし、いつか必ずはじけます。
みんなが「ビットコイン要らね……」と思うまで続くババ抜きみたいなものですね— 毛糸 (@keito_oz) 2017年12月8日
まとめと経済学的補足
時点tにおける資産価格P_tは、次の時点での配当d_{t+1}と、そのときの時価P_{t+1}での売却代金の期待値を割り引いて計算できる。
つまり、
P_t=E[d_{t+1}+P_{t+1}]/R— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
P_{t+1}もまた、その次の時点の配当と売却代金の割引現在価値でもとめられる。つまり
P_{t+1}=E[d_{t+2}+P_{t+2}]/R— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
これをどんどん繰り返して「入れ子」の計算をしていくと、
P_t=E[d_{t+1}/R+d_{t+2}/R^2+d_{t+3}/R^3+…]
と表せることになる。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
ここで、この足し算の項が、ずっと将来では0に限りなく近づく、つまり
d_{t+n}/R^n→0(n→∞)
となるとき、この資産価格P_tはある一つの値に定まる。
これが資産価格のひとつの決まり方であり、配当割引モデルと呼ばれる。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
し か し!
この「ずっと将来では0に限りなく近づく」という条件が仮になくとも、このモデルは破綻しない。つまり資産価格が「ずっと将来では0に限りなく近づく」配当部分P_tと、そうでない部分B_tからなるような例を、合理的期待の枠内で考えることが出来る。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
このB_tとは、
B_t=E[B_{t+1}]/R
を満たすような、しかし「ずっと将来でも0に近づかない」部分であって、これを合理的バブル項と呼ぶ。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
理論的には合理的バブル項の期待値は、ずっと将来では正か負の無限大に発散する。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
資産価格が無限大にならない以上、合理的バブルといえど、いつかはじける。しかし、だからといってショートポジションが報われるかといえばそんなことはなく、多くのショートセラーは資産価格の上昇局面で焼かれる。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
とはいえ、バブルはいつかはじける、確実に。ただ、いつはじけるか、何がどうなったらはじけるかに関して、学術的結論は出ていない。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
さて、この話は学者の飯の種ではない。今この瞬間、合理的バブルと思われる資産が脚光を浴びている。そう、ビットコインです。
— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
ビットコインを始めとする仮想通貨の多くは、配当を生まない(d_{t+n}=0 for all n>0)。従って配当割引モデルから計算される価値(ファンダメンタルな価値)はゼロ。なので、その価格は将来の換金価値の期待からのみ生じていると考えるべき。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
将来の換金価値は保証されていないので、これはまさしく合理的バブル項による価値を指している。この事実を以て、「ビットコインはバブルである」という主張は、経済学的に正しい。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
ただ、先述の通り、このバブルがいつはじけるか・何がどうなったらはじけるかは標準的な経済学のモデルの中では予測できない。もちろんネットワーク外部生など別の概念を用いて何らかの説明を加えることは可能かもしれない。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
以上、「ビットコインはバブルである」が経済学的に正しいことの説明。— 毛糸 (@keito_oz) 2017年11月25日
終わりに
ビットコインを標準的な経済学のフレームワークで考えると、これはバブルであると考えられます
しかし、バブルがいつはじけるか、はじけた後いくらになるかは、誰にもわかりません。
ビットコインが革新的技術の産物であることは否定しようもありませんが、これを投機対象とするには、相応の覚悟が必要です。