仮想通貨の所得計算③税務署に行ってきた編

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税務署に質問に行ってきました

別の記事で解説したタックスアンサーおよびFAQでは明確になっていなかった処理について、税務署に聞きに行ってきました。

本記事は、税務署での質疑応答の内容のまとめです。本記事の内容は国税庁の公式見解とは異なる可能性があります。また、税務署職員および私の解釈を多分に含むものであり、本記事の内容に沿った計算をしても、実際の申告において否認される可能性があります。

目次
FAQ1売却に関して
 手数料を仮想通貨で支払った場合は?
 ウォレットへの送金時の取扱は?
 手数料を支払い時に必要経費とすることは可能?
FAQ2商品購入に関して
 低額譲渡もしくは無償で贈与した場合の取扱は?
FAQ3交換に関して
 取引時の時価がわからないときは?
 時価データは何を使えばいい?
 海外取引所は非課税?
FAQ4取得価額に関して
 取得価額の計算での円未満切り上げって?
FAQ5分裂に関して
 キャンペーンで仮想通貨を無償付与されたら?
FAQ7所得区分に関して
 必要経費の範囲は?
 どこからが事業?
FAQ8証拠金取引に関して
 仮想通貨FXの所得区分は?
FAQ9マイニングに関して
 使用や売却してないのに所得なの?
その他

FAQ1売却に関して

手数料を仮想通貨で支払った場合は?

手数料を仮想通貨で支払った場合にも、支払った仮想通貨を時価で円に換算できるので、それを取得価額に含める。
ケース1
1BTC2,000,000円のとき、取引所において0.3BTCを購入し、0.001BTCの支払手数料を支払った。
この場合、購入した0.3BTCの取得価額は、以下のようになる。

購入代金0.3BTC✕2,000,000円/BTC=600,000円
支払手数料0.001BTC✕2,000,000円/BTC=2,000円
取得価額=購入代金+支払手数料=602,000円

ケース2
1BTC2,000,000円、1ETH70,000円のとき、取引所において0.1BTCを購入し、0.01ETHの支払手数料を支払った。
この場合、購入した0.1BTCの取得価額は、以下のようになる。

購入代金0.1BTC✕2,000,000円/BTC=100,000円
支払手数料0.01ETH✕70,000円/ETH=700円
取得価額=購入代金+支払手数料=100,700円

ウォレットへの送金時の取扱は?

取引所とウォレットの間の送金などに手数料がかかった場合でも、原則としてこれを取得価額に含める。
ケース1
取得価額1,000,000円の0.5BTCを取引所からウォレットに送金した。このうち、0.001BTCは支払手数料として徴収され、残りの0.499BTCが着金した。
この場合、送金後の0.499BTCの取得価額は、以下のようになる(円未満切り上げ)。

送金前取得価額0.5BTC当たり1,000,000円(2,000,000円/BTC)
送金後取得価額0.BTC当たり1,000,000円(2,004,009円/BTC)

ケース2
取得価額1,000,000円の0.5BTCを取引所からウォレットに送金した。別途、0.001BTCを支払手数料として徴収された。このときの時価は1BTC2,200,000円であった。
この場合、送金後の0.5BTCの取得価額は、以下のようになる。

送金前取得価額0.5BTC当たり1,000,000円(2,000,000円/BTC)
支払手数料0.001BTC✕2,200,000円/BTC=2,200円
送金後取得価額0.5BTC当たり1,002,200円(2,004,400円/BTC)

手数料を支払い時に必要経費とすることは可能?

原則として認められない。手数料は取得価額に参入する。
ただし、期末に保有する仮想通貨が僅かである場合など、取得価額に含めた場合と利益計算の結果が大きく異ならない場合であって、継続的に手数料を支出時の経費として扱う場合には、即否認されるものではない。

FAQ2商品購入に関して

低額譲渡もしくは無償で贈与した場合の取扱は?

低額譲渡もしくは無償で贈与した場合には、贈与税の考え方を適用する。この場合、贈与した側では、贈与した仮想通貨の取得価額を必要経費とすることは出来ない。

低額譲渡もしくは無償で贈与された場合にも、贈与税の考え方を適用する。この場合、贈与税の基礎控除110万円を超える金額は、贈与税の課税対象となる。

FAQ3交換に関して

取引時の時価がわからないときは?

取引「日」の時価をもちいて差し支えない。ただし継続的に適用することとし、ある一時点の取引のみ、その瞬間の時価を用い、他の取引では取引日の時価を用いるようなことは認められない。

時価データは何を使えばいい?

明文の規定はないため、申告者が主に利用する取引所の提供する時価データを用いるのが無難である。

仮想通貨によっては主に利用する取引所で扱っていないことも考えられる。そのような場合には、別の取引所の時価データを用いることも許容される。

時価データを公表する第三者が提供するデータであっても、上記データと著しい乖離がない場合には、即否認されるものではない。いずれにせよ、正当な理由に基づき継続的に取り扱うものであれば、許容範囲であると考えられる。

海外取引所は非課税?

海外取引所で行われた取引であっても、取引の都度日本円に換算に利益を計算する。

タックスアンサー
No.1937 居住者が海外で株式等を売却した場合の課税関係等https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1937.htm

海外で納税されている分については、明文の規定がないため、問合せて欲しい。

FAQ4取得価額に関して

取得価額の計算での円未満切り上げって?

取得価額の計算上、円未満の端数は切り上げてよい。これは納税者に有利になるような計算を意図したものである。

FAQ5分裂に関して

キャンペーンで仮想通貨を無償付与されたら?

明文の規定はない。
”売却又は使用した時点で所得が生じる”とするFAQの基本的な考え方を重視すれば、無償付与の時点で所得は生じず、取得価額を0として計算する。
一方、FAQ9では、経済的利益を得た場合にはそのときの時価で課税されるという考え方をとっており、これを重視すれば無償付与時点の時価を収入金額とし、当該金額を取得価額として計算する。
現時点ではいずれの方法も否定しかねるが、後者の方法はより早い段階で利益を認識するものであり、利益が生じたときにその金額を申告するという所得税の観点からは、無難であると考えられる。

FAQ7所得区分に関して

必要経費の範囲は?

家賃や飲食費は原則として含まれない。これは生活上なされる支出としての意味合いが強いものであるため。いわゆる接待交際費は、雑所得の計算における必要経費とはならない。
書籍代、PCの購入費、通信費等は、雑所得を生じさせる原因にかかるもののみ認められる。PCの購入費や通信費等は、自家使用と目的使用とで按分して計算する。マイニング専用機であるとか、専用のネット回線を引いた場合には、全額を必要経費とすることが出来る。
いずれの費目についても、利益との対応関係が確実であるもののみ、必要経費とすることが出来る。

どこからが事業?

主たる収入を仮想通貨の取引から得ているような場合には、事業所得となる可能性がある。

FAQ8証拠金取引に関して

仮想通貨FXの所得区分は?

FAQに記載の通り、仮想通貨FXは通常のFX(申告分離課税)とは異なり、仮想通貨の現物と同様の所得区分、すなわち雑所得として申告する。




※税務署職員は仮想通貨FXの存在を知らない場合があり、単にFXと言った場合には通常のFXと誤解される。

FAQ9マイニングに関して

使用や売却してないのに所得なの?

FAQの通り。当該規定は「売却又は使用した時点で課税する」という原則に則っていないとも考えられるが、一方で経済的利益を得た場合には利益とする考え方もあり、後者の立場をとっている。

その他

仮想通貨を含め、雑所得の申告において、計算根拠の資料は確定申告書に添付不要である。これには、各種領収書等も含む。
ただし、証憑の保管義務があるため、7年間は保管すること。

まとめ

①概略編、②FAQ解説編と合わせて、上記内容まで含めると、仮想通貨の所得計算は90%以上カバーできると考えます。

もちろん、明文の規定がないものは税務署によって回答が違う場合があります。しかしながら、基本的にはFAQの内容を斟酌して計算することで、税務署からお叱りを受けることはないでしょう。

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