Excel VBA「RPAです」「よし、通れ!」に潜む危うさ

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こんにちは、毛糸です。

先日こんなツイートを見かけました。

このツイートをパク……いえ、インスパイアされて、こんな呟きをしました。

本記事ではこのツイートの内容を深掘りし、VBAをRPAと間違えて通してしまうような状況がどうして起こるのか、その問題はどこにあるのかについて考えてみます。

RPAというバズワード

RPAとは、次世代の新しい労働力と期待される自動化システム(ロボティック・プロセス・オートメーション)のことです。

いまビジネス界ではAIと並ぶ技術として多くの企業が注目し、実際に業務に適用されています。

RPAに関しては、以前開催された勉強会PyCPAでも取り上げられ、大変反響がありました。

RPAは一種のバズワードとして、ビジネスマンなら知らないでは済まされない言葉になりつつあり、企業の「偉い人」たちの中でも、業務に組み込めないものかと画策する人は少なくありません。

冒頭のツイートは、そんなRPAブームを風刺するものです。

VBAではなくRPA、その心は

RPAは業務アプリケーションをまたぐようなプロセスの自動化を可能にするソフトウェアです。

業務自動化という点に着目すれば、すでに「広く普及したツール」により、ある程度のことは可能になっています。

それがExcelマクロであり、その記述プログラミング言語であるVBAです。

Excel VBAはエクセルの操作の自動化や、他のOfficeソフトやインターネットエクスプローラーとの連携により、様々な処理を自動化可能です。

実際、大企業ではExcel VBAによる大規模なツールを開発・導入し、業務効率化を行っている例が数多くあります。

しかし、RPA全盛期の今、「それExcel VBAでもできますよ」というフレーズは、「偉い人」たちの心には刺さりません。

「RPAじゃないの?それじゃあだめだよ、RPAを使わなくちゃ」

と一蹴され、RPAではなくExcel VBAでプログラム組みましょうとはなりづらい現状があります。

このような現象はひとえに「RPAを使いたい」ということが目的化していることが原因です。

RPAは本来、従来の方法では自動化できなかったアプリケーション間の連携などを柔軟につなぎ合わせることが可能な技術として、業務改善に用いられるべきものです。

しかし空前の「RPAブーム」によって、「RPAを使うこと」それ自体が目的化し、そのために課題を探すという逆転現象が起こっているのです。

配られたカードと、課題と解決の一致

もちろん、RPAという新しい技術が世に広く知られたことで、見えてきた課題もあるでしょう。

スヌーピーでおなじみの漫画ピーナッツにもこんな名言があります。

配られたトランプで勝負するっきゃないのさ……(YOU PLAY WITH THE CARDS YOU’RE DEALT…)

RPAというカードが配られたからには、そのカードを使って勝ちを挙げたい、と考える人は多いでしょう。

しかし他者もやっているからうちも、とか、Excel VBAでできるような比較的簡単な自動処理もRPAでやりたい、とかいう話になってくると、手段と目的が入れ替わっていると言わざるを得ません。

ベストセラーになった『起業の科学』には、事業の成功の条件の1つに、問題と解決策が一致していること(プロブレム・ソリューション・フィット)を挙げています。

起業という文脈を抜きにしても、課題とその解決策が一致していなければその取組みから成果を上げることは難しく、したがって「解決策(RPA)」ありきで課題を見つけるようなやり方が、常にうまくいくとは限りません。

ましてや冒頭のように、Excel VBAを「RPAです」と言って「よしよし」と納得してしまうのは、RPAという技術がなんたるかを知らないばかりか、自分の課題すらも見失っているのではないかと心配になる状況です。

残念ながら、こんな笑い話のような状況が、たまに見聞きされるのです。

まとめ

RPAの革を被ったVBAが、「偉い人」の機嫌をとる風刺は、課題より解決策が先に来て目的化する危うさを含んでいます。
バズワードに惑わされることなく、いま自分たちが直面している課題はなにか、本当に必要な解決策はどういうものかということを、きちんと考える必要があるように思います。

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