節税効果を企業価値に織り込む2つの方法

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こんにちは、毛糸です。

最近こんな本を読んでいます。

本書『Equity Valuation』は、企業が発行する株式の評価方法について、会計学と経済学の立場から論じた研究書です。

この本の中で、節税効果(タックスシールド)を企業価値に織り込む2つの方法について述べられていたので、簡単にまとめておきます。

税引き後資本コスト(WACC)による方法

1つ目の方法が、フリーキャッシュフローや営業利益などの会計数値を割り引く際に用いる資本コストとして、税引き後の割引率を用いる方法です。

フリーキャッシュフローは債権者と株主に配分されるべきキャッシュフローで、これを以下のように定義される税引き後WACC(加重平均資本コスト)で割り引くことで、企業価値を算出できます。

\begin{equation} \begin{split}
k=\frac{ E}{ D+E}k_E+\frac{ D}{ D+E}(1-\tau)k_D
\end{split} \end{equation}ここで\( E\)は株主資本、\( D\)は負債、\(k_E \)は株主資本コスト、\( k_D\)は負債コスト、\( \tau\)は税率です。

この方法はPenman2007Lundholm&Sloan2004に詳しく説明してあるようです。

修正賞味現在価値法(Adjusted NPV、APV)

節税効果を企業価値に織り込むもうひとつの方法が、修正賞味現在価値法(Adjusted Net Present Value Method, APV)です。

この方法は、節税効果(タックスシールド)を営業活動から生じるキャッシュフローの一部であるかのように扱い、割引率には税引前のWACCを使って企業価値を計算をする方法です。

Grinblatt&Titman2002にはAPVによる企業価値評価が説明されているようです。

税引き後WACCとAPVの比較

いずれの方法でも、条件が同じであれば同一の結果を導きます。

しかし、『Equity Valuation』によれば、APV法のほうがより柔軟で、企業価値の源泉となる営業活動と(税引前で)NPVがゼロの金融活動とを区別する考え方と整合しているといいます。

倒産コストを明示的に扱うような応用的なケースにおいては、税引き後WACCによる計算では企業価値に「歪み」が生じます。

しかしAPV法によれば、倒産コストも営業活動の一部として、通常の割引計算のなかで対応できるため、適用範囲が広いのです。

税引き後WACCもAPVも、企業活動をいくぶん単純化しているため、必ずしも現実の問題を正しく捉えられない場面もありますが、企業価値評価の実務においては広く用いられる方法です。

日本語のコーポレート・ファイナンスの定番テキストにも、これらの方法が説明されているので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。

【参考記事】
【ファイナンス・金融工学】おすすめテキストと有名大学の指定教科書・参考書まとめ

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