「安全資産」という言葉の誤用について

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こんにちは、毛糸です。

先日こんなツイートをしました。

本記事では「安全資産」という言葉の正しい意味を説明し、誤用例のどこが誤っているのかを解説します。

安全資産の定義

安全資産(risk free asset)は経済学やファイナンスの専門用語です。

安全資産とは、投資時点において収益(額・率)が確定している資産です。

株式などのリスクある資産は、投資時点において(資産の購入時点において)、将来いくら返ってくるかが明らかではありません。

100万円で買った株が120万円になることもあれば、80万円になってしまうこともあり、収益が確定していません。

収益が確定していない、つまり不確実であることを、「リスクがある」「リスキーだ」といいます。

安全資産とは、収益の不確実性がない資産のことであり、無リスク資産ともいいます。

金や円は安全資産?いいえ、誤用です

安全資産とはあらかじめリターンがわかっている資産ですから、以下のようなものは安全資産ではありません。

  1. 相場全体が下落しているときにこそ値上がりする資産
  2. 下落相場で買われやすい退避先資産
  3. 投資収益率のボラティリティが低い資産

相場全体が下落しているときにこそ値上がりする資産

株式相場全体がマイナスムードの時にも株価が下がりづらかったり、むしろ値上がりするような資産を、安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

相場全体の動きと、個別の資産の動きの連動性は、ベータと呼ばれます。

相場全体が下がっても、価格が上がるような資産は、負のベータを持つ資産といえますが、この場合も投資時点でリターンが確定しているわけではないので、安全資産ではありません。

下落相場で買われやすい退避先資産

金(ゴールド)や円を安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

一般用語としてなんとなく「安全」であるというニュアンスは伝わりますが、当然ながらこれらは投資時点でリターンが決まっていないので、安全資産ではありません。

投資収益率のボラティリティが低い資産

収益の変動性、つまり期待収益から上下にどれだけ変動しうるかの尺度を、ボラティリティといいます。

ボラティリティが高いということは、それだけ収益の振れ幅が大きい資産ということであり、ハイリスクです。

収益のボラティリティが小さい資産はローリスクであり、これを安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

例えば、インフラ系企業(電気やガス)の株は従来、景気変動の影響を受けづらい銘柄をディフェンシブ銘柄として認知されていました。

しかし、某電力会社がああいうことになったこともわかるように、ボラティリティが低くとも、価格変動のリスクから完全に切り離されているわけではないので、安全資産ではありません。

安全資産は実際に存在するのか

デフォルト(貸倒れ)のない債券が唯一、安全資産です。

貸出時にリターンが決まっており、必ず返済されるので、これは定義通り、安全資産になります。

ただし、物価変動を考慮すると結論は変わります。

物価変動を考慮した場合の安全資産は、国家などのデフォルト懸念のない主体が発行する物価連動債です。

名目上の利回りが投資時点で既知の名目債は、物価変動により実質価値が上下するので、安全資産ではありません。

現在、一般市民が投資可能な物価連動国債は発行されていないですし、国家であってもデフォルト懸念がないとは言えないので、真の意味での安全資産はありません。

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