こんにちは、毛糸です。
最近、会計とファイナンス(金融経済学)との調和について考えています。
会計では当然ながら、資産や利益といった会計情報を扱います。
一方、ファイナンスでは株式市場についての分析を行うことから、特に実証分析において、会計情報が極めて重要になってきます。
しかしながら、投資理論や金融意思決定の理論的研究においては、会計情報を明示的に扱うものは多くありません。
ファイナンスでは基本的には、キャッシュフローや資産が分析の中心になります。
そんな会計とファイナンスですが、両者をつなぐ重要な関係式があります。
それがクリーン・サープラス関係、そしてアクルーアルです。
本記事では会計とファイナンスをつなぐこれらの概念についてまとめます。
クリーン・サープラス関係
会計とファイナンスをつなぐ重要な関係式の1つが、クリーン・サープラス関係です。
クリーン・サープラス関係とは、期末の資本は、期首の資本に利益を加え、配当を控除した額として求まる、という関係式のことです。
時点tにおける資本を\( B_t\)、利益を\( e_t\)、配当を\( d_t\)とすると、クリーン・サープラス関係は以下のような関係式として表されます。
B_t=B_{t-1}+e_t-d_t
\end{split} \end{equation}
クリーン・サープラス関係は、資本や利益という会計数値と、配当というキャッシュフローをつなぐ関係式であり、会計とファイナンスの重要な接点です。
詳細は下記の記事を参考にしてください。
会計数値の時系列構造を決める関係式|クリーン・サープラス関係、金融資産関係、営業資産関係
アクルーアル
会計とファイナンスをつなぐもう一つの重要な概念が、アクルーアルです。
現代の会計では、収益と費用、そしてその差額である利益は、キャッシュフローとは一致しません。
たとえば、今月の家賃を来月10日に支払う、というような契約場合には、月末においては支出が行われていないにもかかわらず、費用を認識します。
こうした費用認識のルールは、発生主義(accrual basis)とよばれます。
収益も同様、認識した額とキャッシュフローの範囲がズレることがあります。
したがって、収益から費用を控除して計算される利益は、キャッシュフローを伴う部分と、キャッシュフローを伴わない部分に分解できます。
この、キャッシュフローを伴わない利益を、アクルーアルと呼びます。
利益はキャッシュフローとアクルーアルの和であり、利益からアクルーアルを控除したものがキャッシュフローです。
利益=キャッシュフロー+アクルーアル
ファイナンスで扱われるのはキャッシュフローですから、これにアクルーアルの調整を行うことで、会計上の概念である利益と結び付けられることになります。