キャッシュ・フロー計算書の意義、誘導法による作成法、一取引二仕訳

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本記事はキャッシュ・フロー計算書に関連する話題をまとめています。本記事で扱うのは

  • キャッシュ・フロー計算書の意義
  • 誘導法によるキャッシュ・フロー計算書の作成方法
  • 一取引二仕訳方式

です。

 

キャッシュ・フロー計算書とはなにか

キャッシュ・フロー計算書は財務諸表の一つです。一期間の現金や現金に類する資産の変動を開示するために作成されます。貸借対照表・損益計算書と合わせて財務三表とも呼ばれます。

現金や現金に類する資産のことを「現金及び現金同等物」といいます。「現金及び現金同等物」と言うと長くて仰々しいので、以下ではキャッシュと呼ぶことにします。キャッシュの変動(フロー)を開示する計算書なので、キャッシュ・フロー計算書といいます。

キャッシュ・フロー計算書では、一期間にキャッシュ・フローがどれだけあったかを、企業の活動に対応付けて開示します。企業の活動には3つあります。その3つとは、営業活動・投資活動・財務活動です。キャッシュ・フローはこれらいずれかに分類されます。

営業活動によるキャッシュ・フローの作成方法には2通りあります。一つは営業活動の内訳を勘定分析によって把握し開示する方法(直接法)、もう一つは税引前当期純利益に適当な項目を加減してキャッシュ・フローに変換する方法(間接法)です。これらは各企業が選択できます。

直接法によるキャッシュ・フロー計算書は以下のような形をしています。

\[\begin{array}{lr} \\
&1.営業活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~営業収入&2000\\
&~~仕入支出&-800\\
&~~人件費支出&-200\\
\hline
&計&1000\\
&2.投資活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~有価証券の購入支出&-200\\
\hline
&計&-200\\
&3.財務活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~借入による収入&300\\
\hline
&計&300\\
\hline
&4.キャッシュ増減&1100\\
&5.期首キャッシュ&500\\
&6.期末キャッシュ&1600
\end{array}\]

間接法によるキャッシュ・フロー計算書は以下のような形をしています。

\[\begin{array}{lr} \\
&1.営業活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~税引前当期純利益&2200\\
&~~非資金損益項目&-200\\
&~~非営業損益項目&-200\\
&~~営業債権債務の増減&-800\\
\hline
&計&1000\\
&2.投資活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~有価証券の購入支出&-200\\
\hline
&計&-200\\
&3.財務活動によるキャッシュ・フロー&\\
&~~借入による収入&300\\
\hline
&計&300\\
\hline
&4.キャッシュ増減&1100\\
&5.期首キャッシュ&500\\
&6.期末キャッシュ&1600
\end{array}\]

直接法と間接法は営業活動によるキャッシュ・フローの形式が異なるだけで、営業活動によるキャッシュ・フローの金額はどちらの方法を採用しても同一です。実務的には間接法をよく見ます。間接法は貸借対照表と損益計算書から作成することができ、キャッシュ・フロー計算書の作成負担が比較的小さいなどの理由により、広く採用されています。

キャッシュ・フロー計算書は、会計に関する情報のうちフローの要素を開示する財務諸表であるという意味で、損益計算書と似ています。しかし大きな違いもあります。

損益計算書は、損益の内訳となる勘定科目が日々の仕訳に登場します。たとえば

\[\begin{array}
\mbox{(借)}&\mbox{当座預金}&1000&/\mbox{(貸)}&\mbox{売上}&1000\\
\mbox{(借)}&\mbox{広告費}&100&/\mbox{(貸)}&\mbox{現金}&200
\end{array}\]

という仕訳に登場する「売上」勘定や「広告費」勘定は、損益の内訳となる勘定科目です。

一方、キャッシュ・フロー計算書の項目(「売上収入」や「広告費支出」など)は日々の仕訳には登場しません。日々の仕訳に登場するのは貸借対照表項目としての「当座預金」勘定や「現金」勘定です。

日々の取引ではキャッシュ・フロー計算書の項目が現れないにもかかわらず、期末には期中のキャッシュの変動内訳を確認し、キャッシュ・フロー計算書を作成しなくてはいけません。これは実務的に大きな負担となっています。

もしキャッシュが変動する都度、キャッシュ・フロー計算書の項目を用いて仕訳を行うことができれば、決算手続きにおけるキャッシュ・フロー計算書の作成負荷が下がるのではないかと期待されます。その期待に答えるのが誘導法と呼ばれるキャッシュ・フロー計算書の作成方法です。

 

誘導法によるキャッシュ・フロー計算書

損益計算書と同じように、独立の科目を用いて日々の仕訳を行い、キャッシュ・フロー計算書を作成する方法を、誘導法といいます。

キャッシュ・フロー会計の原理』に紹介されている誘導法は、1つの取引に対して損益計算用の仕訳とCF計算用の仕訳を2つを行う方法です。以下に3つの仕訳の例を挙げます。

1.価額200の備品を取得し、半額は現金で、残額は来月払とした

\[\begin{array}
\mbox{損益仕訳}&\mbox{(借)}&\mbox{備品}&200&/\mbox{(貸)}&\mbox{資金}&100\\
&&&&/\mbox{(貸)}&\mbox{未払金}&100\\
\mbox{CF仕訳}&\mbox{(借)}&\mbox{備品購入支出}&100&/\mbox{(貸)}&\mbox{現金}&100
\end{array}\]

2.売上500を計上し、代金は掛けとした

\[\begin{array}
\mbox{損益仕訳}&\mbox{(借)}&\mbox{売掛金}&500&/\mbox{(貸)}&\mbox{売上}&500\\
\mbox{CF仕訳(仕訳なし:資金に変動ないため)}
\end{array}\]

3.売掛金300を回収した

\[\begin{array}
\mbox{損益仕訳}&\mbox{(借)}&\mbox{資金}&300&/\mbox{(貸)}&\mbox{売掛金}&300\\
\mbox{CF仕訳}&\mbox{(借)}&\mbox{現金}&300&/\mbox{(貸)}&\mbox{売上収入}&300\\
\end{array}\]

上記の方法では、損益仕訳におけるキャッシュの変動は「資金」という勘定を用いて仕訳し、「現金」や「当座預金」などのキャッシュ勘定を用いません。キャッシュ勘定の増減はCF仕訳で対応するため、重複を避ける意味があります。

 

一取引二仕訳

上記の方法は、一つの取引について、損益仕訳とCF仕訳の二仕訳を行う方式であると言えます。このような方式を一取引二仕訳と呼びます。

一取引二仕訳は通常の事業会社の会計規則では馴染みがありません。しかし社会福祉法人ではこの方式が採用されています。

 

参考文献

本記事ではキャッシュ・フロー計算書の基本事項と、誘導法によるキャッシュ・フロー計算書の作成方法について述べました。本記事では触れられなかった、キャッシュ・フロー計算書の歴史的経緯、会計基準の概要、海外会計基準との比較、マトリックス法による連結キャッシュ・フローの方法について、こちらのテキストが参考になります。キャッシュ・フロー計算書のテキストは、実務家によ解説本が多数出版されていますが、本書はアカデミックな雰囲気を感じさせるテキストです。

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