誰がための自動化か

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ビジネス現場におけるIT推進は今や当然の流れ担っているように思います。RPAによるアプリケーションを跨いだ業務自動化が流行ったのも記憶に新しいです。

最近ではプログラミングスキルを発揮して業務を自動化・効率化したという話もよく聞きます。

本記事ではそんな「自動化」について、それによって喜ぶ人・反対する人について考えてみます。

業務自動化のためのスキル

業務自動化といっても様々な文脈がありますので、一言で語るのは大変危険なのですが、ここでは私が携わる会計領域の業務自動化をイメージしながら話を進めたいと思います。

会計や決算という仕事をしていると、会計ソフトへの入力や、Excelを用いたワークシートの作成など、コンピュータを用いた作業が数多くあります。コンピュータを使った業務であれば、その性質に応じて自動化の仕組みを作ることも可能です。

例えば、関係各所から決まった形式の報告様式をもらい、それを集計して会計処理用の数値を算定するというような業務は、比較的簡単に自動化できるでしょう。その際には、Microsoft Excelの関数やマクロ機能、Google spreadsheetをScriptで操作するといったスキルが必要になります。

プログラミングという言葉が最近かなり認知されてきたように思いますし、わかりやすい教材も手に入ります。Excel VBAやGoogle Apps Scriptを勉強して業務効率化を推進したいと考えるビジネスパーソンは、私の周りでもどんどん増えてきています。

 

業務自動化・効率化で喜ぶ人

スキルを身につけると、実際にそれを使ってみたくなるのは自然なことでしょう。私もExcel VBAによる業務効率化ツールをいくつも作って役立てたことがあります。

【参考記事】
30時間の作業を1/3に圧縮できた3つの理由|マクロVBA、業務見直し、マニュアル化

作業内容は明確だけれど手間がかかること、というのは、自動化の効果が発揮されやすい部分です。

自動化プログラムによって自分の業務を効率化できれば、辛い残業が回避できるかもしれませんし、空いた時間で価値ある提案ができるかもしれません。時間がなくて先延ばしにしていた案件に着手できるかもしれません。

作業時間の多さに困っていて、それを改善することに得がある人は、自動化・効率化のスキルを身につけると満足度が上がります。

組織の誰かが大量の作業に悩んでいて、リーダーがそれを改善したいと思っているような場合にも、自動化スキルを発揮することで喜ばれることでしょう。

 

業務自動化に反対する人

業務自動化は、過酷な状況を改善する素晴らしい改善策です。しかし、それが常に正しいこととは限りません。

例えば、与えられた業務が明確で、時間給で働いている人がいるとしましょう。その人は働く時間が長ければ、それだけ収入が増えます。与えられた業務は明確なので、仕事に迷いはありません。

この人の仕事を自動化するとどうなるでしょう。

業務が自動で完結し人手が不要となれば、この人は別の仕事に就くことになります。同じ組織の別の仕事という場合もあれば、別の組織で、ということもあるでしょう。いずれにせよこの人の仕事には変化が生じます。

この変化が、望ましい変化とは限らないのです。

「AIが仕事を奪う」というフレーズを見聞きすることがありますが、業務の自動化によって自身の業務のあり方が変わった場合、それが望むものでなければ、「仕事を奪われた」と感じるかもしれません。

もちろん組織として効率化すべきであるという課題がある場合には、個人に変化の負担を強いることも必要でしょう。

しかし、例えばプログラミングスキルのある人が自発的に誰かの業務を自動化しようとすると、変化を望まない人にとっては「いい迷惑」ともなりかねないわけです。

これは組織の方針や個人の価値観とも関係する問題なので「自動化はすべき、それに反対するのは間違っている」と断じられるものではありません。

また、組織の方針に基づかない業務効率化が、スキルフルな人の評価につながるわけでもありません。

 

落とし所

結局のところ、業務自動化・効率化のスキルは、自身の評価を高めるのに使うべきで、それ以外の部分では発揮しないほうが良いのかもしれません。

自分の業務を自動化し新しい価値を創出できるだとか、組織の要請に応じてチームの生産性を高められるという場合に発揮すれば、それは正当に評価され、喜ばれるでしょう。

しかし闇雲に、自分のスキルを発揮したいという気持ちで突っ走るのは、思わぬ抵抗を生む恐れがあります。かくいう私もそうした経験があり、大いに反省した経緯があります。

スキルを発揮することを目的とせず、組織への貢献と自身の評価につながるような発揮の仕方をする、というのが落としどころではないでしょうか。

もったいないのは「私のスキルを発揮する機会がない、勉強なんかしても仕方ない」と思って学びをやめてしまうことです。

目まぐるしいビジネス環境の変化の波に乗り、誰かに仕事を奪われないために、学び続ける姿勢は持ち続けたいです。

【参考記事】

AIに仕事を奪われた私たちに何が出来るのか

 

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