数学上の未解決問題「ABC予想」を証明した論文が2021年3月4日、国際専門誌「PRIMS」特別号でお披露目されました(共同通信記事)。
論文の著者は京都大数理解析研究所の望月新一教授です。この論文では「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT; Inter-universal Teichmüller Theory)」という全く新しい数学理論が創造されています。
宇宙際タイヒミュラー理論の雰囲気を知る
IUTは「足し算と掛け算の関係を解きほぐす」「足し算と掛け算の複雑で堅固な関係を解体し組み立て直す」などと表現されます。
簡単なフレーズに聞こえますが、それは途方もなく難しいことでした。
待ちに待った論文掲載
研究者は新たな理論を構築したとき、これを論文として発表します。論文は他の研究者の評価を得てから、学術誌に掲載されます。
その理論が独創的であれば当然、他の研究者の理解を得るのにも時間がかかります。
IUT論文は2012年の公開から、実に8年超の議論を経ての掲載となりました。その間には多くの困難があったといいます。
IUTの衝撃
IUTはこれまでの数学の常識を大きく覆すものであり、IUTがもたらす数学の発展は計り知れません。
冒頭の「ABC予想」の解決もその果実の一つです。「ABC予想」が証明できれば、数多くの定理が得られます。
例えば、ABC予想はかの有名なフェルマーの最終定理とも関係があります。
IUTを用いたこちらの論文(PDFリンクp.51)で、十分大きな素数に対してフェルマーの最終定理が成り立つことを証明しています。
360年間にわたり数学者の挑戦を阻んだフェルマーの最終定理が、IUTのひとつの成果として証明できることは、驚きに値します。
望月論文を少しでも理解したい人が読む本
望月教授の論文は「未来から来た論文」と言われ、理解できる人は世界でもごく限られています。
しかし、望月先生と親交のある日本人の数学者から、解説の論文や一般人向けの書籍も出版されています。
『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』は数学の知識がなくとも宇宙際タイヒミュラー理論の雰囲気とロマンを感じられる読み物です。
この記念すべき出来事を理解する助けになるでしょう。
≪…足し算と掛け算の間にある固い関係…≫を、直交座標の縦軸を回転運動 横軸を直交運動とすると、≪…固い関係…≫がバラケルかも・・・
自然数の創生を、絵本「もろはのつるぎ」にみる。