簿記検定の難化について、ひとりの会計士が思うことは、会計実務家の意識改革

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2021年2月に実施された簿記2級の合格率が、速報値で10%を割ってます。

時代は変わったんですね……

10%と言えば従来の1級の合格率くらいのイメージでしたが、まさか2級でこれとは驚きです。

今回は簿記2級の難化について、いち会計士として・実務家としてどう向き合うべきか考えます。

簿記2級の難化

最近、簿記2級の試験範囲が変更になり、難易度も上がっています。従来1級の試験範囲だった連結会計が2級で出題されるようになり、解説では連結会計の解法テクニック「タイムテーブル」が取り上げられるなど、SNSでも話題になりました。

2020年11月の2級の合格率は2割を切るレベル、2021年2月の試験では速報値で10%を割る水準になっており、難化しています。

【参考記事】第157回日商簿記2級 合格発表(合格率)まとめページ

会計実務家としての印象

簿記の難化には、時代の変化を感じます。10%を割る合格率となると「一般に公正妥当と認められる2級のレベル」を超えた水準だという印象すら抱きます。

10年くらい前に私が2級を受けたときは、3級に毛が生えた程度の財務会計+工業簿記という雰囲気でしたが、今は割と複雑な連結会計も問われています。

当時の簿記2級でも合格率20%程度という回はありましたが、今回のように10%を下回る水準というのは驚きで、昔の気分のまま「簿記2級くらいとってね」なんて軽々しく言えなくなっています。

簿記2級の位置付けを見直すきっかけにしたい

簿記2級を従来どおりの難易度と思ってはいけないのだと思います。予備校や教材作成者の意識改革が求められるでしょう。

そしてそれ以上に、簿記2級を若手に要求する会計実務家の意識改革が重要だと感じます。業界全体での意識改革、と言ってもいいでしょう。

簿記検定は「一般に公正妥当と認められた簿記試験の基準」に則って作られたものではありません。なにか明確な基準があって、合格者や合格率を一定に保つ、そんな制度的保証があるものではないのです。

社会情勢の変化や出題者の意向によって、難易度が変わるのは、当然のことでしょう。

もちろん私たち会計実務家は、簿記検定の難易度にある程度の連続性を期待します。また、出題者には時代のニーズに合った出題を求め、簿記の実務能力を獲得する手段であってほしいと考えています。

出題者はこういった実務家からの期待をよく斟酌して、信念を持って作問しているはずです。たとえば、連結会計の普及に伴い、それを1級でしか扱わないのは時代に沿わない、という出題者の意図は、十分理解できます。

一方「実務的にはそこまで求めてない!」という声も聞かれます。しかし、もし実際に簿記2級の難易度が各企業のレベルに合っていないのであれば、簿記2級を能力測定に用いないという自由もあるわけです。自前で入社試験を課すなり、同志で新たに実務簿記検定を作るなりすることは可能です。

個人的には、従来の2級相当(財務会計の応用と工業簿記入門)として、準2級でも新設してくれたら嬉しいとは思います。こういった実務的要求を検定運営者に伝えることは有用なのではないでしょうか。

時代に即した試験を目指す出題者の意図を汲みつつ、簿記2級というものの位置付けを、実務家サイドも今一度考えて見る必要があるのではないかと思います。

最後になりましたが、この厳しい試験に合格した方に対しお祝いを申し上げます。

また、惜しくも合格を勝ち取れなかった方の努力に、最大限の敬意を表します。

資格の勉強が辛く苦しいことを私はよく知っています。

その努力が(たとえ合格という形でなくても)実を結ぶことを、ひとりの会計人として、心からお祈り申し上げます。

 

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