財務会計と管理会計の相違点・共通点

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財務会計と管理会計は会計の「二大巨頭」とも言える分野です。

どちらも会計の基本的な性質は共有していますが、一方でその意義・目的に起因する差異も存在します。

本記事では財務会計と管理会計の共通点と相違点についてまとめます。

共通点

経済主体の活動や事象の測定・記録・報告を伴う

財務会計も管理会計も、経済主体が行う経済的活動やその結果としておこる事象を、測定・記録し適切な主体に報告するという役割を果たしています。

この性質は会計という概念そのものの性質です。

財務会計においては、主に株式会社を経済主体とし、会社が行う取引を仕訳に表現することで、測定・記録を行います。そしてそれを適切に集計することで財務諸表を作成し、社外の投資者に開示します。

管理会計においては、組織内外の関与者を経済主体とし、会社の戦略策定や製造活動などを仕訳に表現することで、測定・記録を行います。そしてそれを適切に集計することで財務諸表を作成し、社外の投資者に開示します。

意思決定に用いられる

財務会計も管理会計も、会計情報の利用者の意思決定に役立ちます。

財務会計であれば、投資者が自分の資金を投資するに値するかどうかを判断するために、財務諸表を利用します。

管理会計であれば、経営者らが会社の方針や計画を立てたり、経営活動の成否を測って次のアクションに活かすための情報を扱います。

 

相違点

会計情報の時制:財務会計は主に過去、管理会計は過去も未来も

財務会計の主な関心は、投資者から受託した資金の運用状況に関する説明責任や、経営活動によって獲得した損益の計算にあります。したがって財務会計はある時点またはある時点までの一定期間という過去情報を扱うのが通常です。

一方、管理会計の主な関心は経営者の意思決定支援であり、経営計画の立案のためには過去のみならず将来の情報をも扱う必要があります。したがって管理会計は過去から未来に渡る情報を扱います。

ただし、上記の違いはあくまで「傾向」に過ぎません。実際、現行の財務会計の規則において、将来キャッシュフローを測定の基礎とするような会計処理が求められます(貸倒引当金や減損会計など)。

情報の単位:財務会計は貨幣、管理会計は非貨幣(物量)

財務会計における会計情報は主として貨幣的情報です。すなわち財務会計情報は「円」「dollar」といった貨幣単位で測定・記録・報告されます。

一方、管理会計においては、貨幣以外の情報であっても、経営意思決定のために役立てられます。例えば、戦略管理会計のツールとして有名なバランスト・スコアカードでは、月次顧客獲得数(件/月)や資料のデータベース化率(%)などを情報の単位として利用します。

社会的規制:財務会計はあり、管理会計はなし

財務会計情報は、企業の外部者が投資意思決定に用いることを予定されています。したがって、企業間に一定の比較可能性を担保することが不可欠です。そのためには会計処理や財務諸表の表示方法に社会的な規制を受けます。

一方、管理会計情報は、組織の内部者である経営者の意思決定に用いることを予定されています。そこには意思決定支援のための大まかな「原則論」はあるものの、社会的規制として一定の方法を強制されることはありません。

参考文献

本記事は以下のテキストを参考にしました。1989年から30年以上に渡って版を重ねる名著であり、本記事で述べたような内容や、そもそも会計とは何かという根源的な疑問に答えてくれます。収益認識基準や時価算定基準を含む広範なトピックを扱っており、会計を基礎から学ぶのに最適な一冊です。

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