モノイドの定義と圏論的考え方【簿記数学の基礎知識】

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この記事では基本的な代数構造の1つであるモノイドの定義を述べます。

また、圏論において「一つの対象からなる圏は本質的にモノイドと同じである」という主張について解説します。

モノイドは複式簿記会計の対象となる経済的状態のモデルとして使えます。

モノイドの定義

集合\( M\)に演算\( *\)が定義されていて、以下を満たすとき、\( \left( M,*\right)\)をモノイドといいます。

  1. 結合法則:任意の\( a,b,c\in M\)に対して\( (a*b)*c=a*(b*c)\)
  2. 単位元:任意の\( a\in M\)に対して\( a*e=e*a=a\)となる\( e\in M\)が存在

モノイド\( \left( M,*\right)\)を単に\( M\)と表すこともあります。

モノイドは、単位元をもつ半群ともいえます。

モノイドの元は可逆とは限りません。逆元の存在を要請すると群になります。

【参考記事】代数的構造の関係を図示してみた(マグマ、半群、モノイド、群、アーベル群、環、可換環、整域、体)

圏論的なモノイドの見方

一つの対象からなる圏は本質的にモノイドと同じであるといえます。

\( \mathscr{ A }\)を対象\( A\)のみからなる圏とします。この圏における射\( \mathscr{ A }\left( A,A\right)\)には、圏の定義により、結合的な合成が可能です。

\( A\)が集合、\( \mathscr{ A }\left( A,A\right)\)が関数であるとき、関数の合成の演算

\begin{equation} \begin{split}
\circ:\mathscr{ A }\left( A,A\right)\times \mathscr{ A }\left( A,A\right)\to\mathscr{ A }\left( A,A\right)
\end{split} \end{equation}
を考えることができます。

また、圏の定義により、恒等射\( 1_A\in\mathscr{ A }\left( A,A\right)\)が存在します。

したがって、関数の集合\( \mathscr{ A }\left( A,A\right)\)は合成\( \circ\)を演算とし、結合法則が成り立ち、単位元をもつので、モノイドとみなせます。

先に述べた(集合としての)モノイド\( M\)が、上記の\( \in\mathscr{ A }\left( A,A\right)\)に対応しているというわけです。

複式簿記への応用

モノイドはとてもシンプルな代数構造であり、それゆえに多くの概念をモノイドとして考えることができます。

モノイドはオートマトンと関係があり、会計システムもオートマトンとして表現することができます。

また、会計報告の対象となる経済的状態をひとつの集合と考え、それを唯一の対象とする圏を考えると考えると、その圏における射を「状態の遷移」と解釈できます。状態遷移は可逆ではないので、モノイドと考えるのが適当です。

参考文献

本記事は以下の教科書を参考にしました。圏論の基礎的な内容を豊富な例とともに解説しています。

会計システムとオートマトン、そしてモノイドの関係については、以下のテキストで詳しく論じられています。

このブログで不定期連載中の【君の知らない複式簿記】では、簿記の代数構造に関する研究結果を紹介しています。

【君の知らない複式簿記】シリーズはこちらからどうぞ

 

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