大福帳型データベースは単一性の原則を満たすか

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ひとつの汎用会計データベースを用意し、それを上手に集計することで、異なる目的の複数の報告書を作成するというアイデアがあります。

大福帳型データベースや複線型帳簿とよばれるアイデアです。

本記事では、これらの考え方と企業会計原則の「単一性の原則」の関係について述べます。

大福帳型データベース

発生する取引データを集約せず、明細仕訳のまま蓄積していくタイプのデータベースを「大福帳型データベース」といいます。これは近年ERP パッケージソフトウェアベンダーが提唱したとされています[川野2018]。

参考:川野克典, 財管一致の現状と課題-管理会計からの考察-, 国際会計研究学会 年報 2018 年度第 1・2 合併号(PDFリンクはこちら

「大福帳型データベース」のもとでは、財務会計や管理会計という目的別に複数の帳簿を持つことがないため、財管一致の思想が表れています。

参考:財管一致の再定義:「財管一致の現状と課題-管理会計からの考察-」(川野2018)を読む

複線型帳簿

株式会社フュージョンズ取締役の杉本啓氏の記事『事業報告簿の複線化』では、明細仕訳から単一の会計帳簿を作成し、これを複数の報告書に複線化するアプローチが提唱されています。

財管、日本基準とIFRS、連結と単体のような異なる目的の報告書を作るのも、単一の帳簿からの変換作業にしてしまえば、報告や帳簿管理のコストも下がると考えられ、「現場に役立つ」会計情報を作りやすくもなります。

単一性の原則

会計の世界には、すべての企業が従わなくてはならない基準が存在します。それが企業会計原則です。

企業会計原則は7つの原則からなり、その1つに「単一性の原則」があります。

単一性の原則とは、財務諸表の作成の基礎となる会計記録は単一でなければならない、という原則です。ただし、目的別に財務諸表の表示形式が異なることは認められています。

前述の大福帳型データベースと複線型帳簿は、いずれも単一性の原則を満たします。どちらも目的別に異なる報告書を作成するものの、報告書の基礎となる会計情報は単一のものだからです。

参考文献

企業会計原則における単一性の原則は、以下のテキストを参照しました。会計学の基礎を、実務的視点や歴史にも触れながらしっかり学べる、優れた教科書です。

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