REA会計モデルとはなにか

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この記事では会計データの概念モデルであるREA会計モデルについて説明します。

REA会計モデルは複雑な会計事象をシンプルに表現するための基本的な視点を提供してくれます。

REA会計モデルとはなにか

REA会計モデルとは,会計をどのようにデータとして表すか(データベースとして表現するか)という問いかけに対して,考え方の枠組みを与えるものです。

会計といっても多種多様な捉え方がありますが, REA会計モデルはそれらに共通するものを整理し,会計の基本的な要素を「データ」という観点から抽出したものです。

REA会計モデルでは,会計データとして表される「実体」を,資源Resource,事象Event,主体Agentの3つであると考えます。この3つの頭文字をとってREA会計モデルと呼んでいます。

そして,これらの3つの「実体」と,それらの間に存在する会計特有の「関連」(ストック・フローや二元性やコントロール)を定義することで,現実世界の会計をモデル化します。つまり,REA会計モデルは,現実世界の会計を概念としてモデル化するための考え方です。

REA会計モデルはMcCarthy (1982)が提示した会計システムの一般的なフレームワークであり,会計データモデル論の1つの到達点であるといわれます(坂上  2016)。

REA会計モデルは,井尻やマテシッチによる会計の形式化の研究に影響を受けていますが,その基礎にはデータ設計に役立つ概念モデル,とくに実体関連モデルというモデルに影響を受けています。

実体関連モデルとはなにか

McCarthy (1982)が提示したREA会計モデルは,実体関連モデルというデータモデリングの考え方を基礎としています。実体関連モデルはChen (1976)が提示した概念モデルです。

実体関連モデルとは,データに写し取りたいの対象のうち重要と思われること・ものを実体Entityとして捉え,そしてそれら実体の間にどんな関連Relationshipが存在しているのかを考察することで,現実世界をモデル化する手法です。

現実世界をデータとして認識し,データベースで表現する場合,対象となる主体の属性を明らかにし,また主体と主体の間の関係性を定義する必要があります。

Chen (1976)は主体と主体の関連を主体の属性とは切り離して考えることで,現実世界をモデリングすべきであると主張し,その考えをもとに実体関連モデルによるデータベースの設計を提唱しました。

この実体関連モデルを応用し,会計事象の一般モデルを提唱したのが,McCarthy (1982)のREA会計モデルというわけです。

 

REA会計モデルは何に使えるのか

REA会計モデルに話を戻しましょう。REA会計モデルは一体何に使えるのでしょうか。

REA会計モデルは「現実世界の会計をどうデータに表すべきか」という疑問に答える考え方の枠組みであり,会計情報システム論におけるデータモデルアプローチの議論においてほぼ必須のツールであるといわれます(坂上 2016)。

REA会計モデルのもととなった実体関連モデルは,データベース管理システムにおけるデータテーブルの設計との親和性が高いといわれています。ですから,REA会計モデルも自ずとデータテーブルの設計に役立ち,会計情報システムの設計に役立っています。

また,REA会計モデルは「現実世界の会計をどう写し取るか」という視点を提供してくれる考え方です。REA会計モデルの3つの視点,つまり,どのような事象が発生し(Event),誰がその事象に関わっており(Agent),どのような資源がその事象に関わっているのか(Resource)を考えることで,現実における複雑な会計事象を簡潔に捉えることが可能になるのです。

参考文献

Chen, P.P.S., 1976. The entity-relationship model—toward a unified view of data. ACM transactions on database systems (TODS)1(1), pp.9-36.

McCarthy, W.E., 1979. An entity-relationship view of accounting models. Accounting Review, pp.667-686.

坂上学, 2016,『事象アプローチによる会計ディスクロージャーの拡張』中央経済社。

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