国際的な会計・コンサルティングファームであるDeloiiteも、ブロックチェーンが会計業界に与える影響について注目しているようです。
本記事ではDeloitteの報告資料「Blockchain Technology A game-changer in accounting?」(PDFリンク)を読み解いていきます。
ブロックチェーンの性質
ブロックチェーンは、その改ざん困難性により、会計帳簿の記録媒体として適性があると言われています。
冒頭のDeoillteのペーパーにも、次のように書いてあります。
すべての仕訳は分散化・暗号化されているため、取引を隠すために改ざんしたり破棄したりすることは事実上不可能である
Since all entries are distributed and cryptographically sealed, falsifying or destroying them to conceal activity is practically impossible.
特に、あるひとつの取引(商品を仕入れたり、固定資産を買ったり)について、自社と取引の相手方に加え、分散台帳たるブロックチェーンにその取引記録を記帳することで、会計情報の改ざん困難性と発見可能性を高められると言われています。
このような新しい会計の機構は「Triple-Entry bookkeeping」と呼ばれ、「三式簿記」と訳されます。
三式簿記について
三式簿記については、過去の記事でも取り上げました。
「三式簿記」というと、日本ではブロックチェーンとは全く別の文脈で研究されてきたものが有名です。
「複式簿記の拡張」という大いなる野望のもと、会計界のレジェンドともいうべき会計学者 井尻雄士先生が研究した「時制的三式簿記」「微分的三式簿記」です。
これらはどちらも複式(二式)簿記に第三の側面を付加した複式簿記の拡張です。
これらと区別するために、この記事で扱う「三式簿記」は、ブロックチェーン的三式簿記と呼ぶことにします。
ブロックチェーン的三式簿記はゲームチェンジャーとなりうるか
三式簿記は、ブロックチェーンの発明によってもたらされた新たな境地という印象が持たれますが、個人的にはあまり大それたものではない気がしています。
ブロックチェーンによる会計帳簿が改ざん困難、というのは、従来の「複式」簿記において一つの勘定だけ金額を改ざんしたら、帳簿の貸方借方が不一致になり発見される(もしくは会計システム上改ざんできない)というメカニズムと、大差ありません。
昨今の粉飾事例として見聞きするものの中には、架空の取引を関与企業が結託してでっち上げる、というようなケースも有り、このような場合にはいかにブロックチェーンに取引を記録しても、取引そのものが架空、つまり記録時点で粉飾が行われているわけですから、改ざん困難であっても意味がありません。
会計監査人は、当然会計帳簿の改ざんには目を光らせますが、それ以上に「企業が作成した会計帳簿が、現実の取引を適切に表しているか」をチェックします。
記録された情報が「適切か否か」という判断は、ブロックチェーンには出来ません。ブロックチェーンによって保証されるのは、ブロックチェーンに刻まれた情報に間違いがないということです。したがって、不適切な取引をブロックチェーンに刻むリスクは排除できないのです。
その意味でブロックチェーン的三式簿記は、帳簿の改ざんに対して一定の牽制効果は持ちつつも、会計のあり方を根本から変えるような(ましてや会計監査を不要にするような)ものではないと思われます。
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