この記事では順序対の定義について解説します。
順序対は、直感的には数や変数の「ペア」のことです。 ただし、ペアを作る1つ目の要素と2つ目の要素の順番に意味があります。
順序対は複式簿記における借方貸方を表現するのに使えます。
順序対(ordered pair)とはなにか
順序対とは文字通り、順序付けられた対(つい=ペア)のことです。
例えば、地図上の一点は、\( \langle \mbox{緯度},\mbox{経度}\rangle\)というペアで表せます。これは順序対です。地図の縦横を表す座標の数値が、緯度・経度の順でペアになっているからです。
地図上の一点を表す緯度・経度の順序対\(\langle48.85, 2.29 \rangle\)はパリのエッフェル塔を表していますが、この数字のペアを入れ替えてしまったら、全く別の場所を意味していまいます。
\( \langle 2.29, 48.85\rangle\)はソマリアの海の上です。
順序が大事な意味を持つペア、というのは現実世界でもたくさんの例が見つかるでしょう
漫画やアニメのキャラクターの二次創作用語にも、順序対の概念が存在するようです。
順序対の厳密な定義
順序対の定義には、実はいろいろあります。
順序対を数学的に厳密に定義するには「公理的集合論」と呼ばれる分野の知識が必要になります。
ここでは公理的集合論による厳密な定義ではなく、もう少しマイルドな、以下の定義を与えます。
定義
この\( \langle \cdot,\cdot \rangle\)が順序対であるとは、対象\( a_1,a_2,b_1,b_2\)に対して
\begin{equation} \begin{split}
\langle a_1,b_1\rangle=\langle a_2,b_2\rangle\Leftrightarrow\left( a_1=a_2\mbox{かつ}b_1=b_2\right)
\end{split} \end{equation}が成り立つことをいう。
つまり「2つ対象のペアが等しいことと、ペアをなす2つの対象のそれぞれが等しいことが、同値である」というときに、このペアを順序対と呼ぶことにしよう、ということです。
複式簿記への応用
順序対は複式簿記における借方貸方を表現するのに使えます。
「資産」勘定の借方残高と貸方残高を表すときなどで、
借方合計:100 貸方合計:80 →繰越残高80
というような状況を、順序対\( \langle 100,80\rangle\)のように表します。
実は、このような順序対からなる集合に加法の演算を入れると、群の性質を持つことが示せます。この群をパチョーリ群(Pacioli group)といいます。
参考文献
順序対の定義は、こちらのテキストを参照しました。このテキストは集合や数に関する「基礎的」(簡単、ではありません)な内容を扱っています。公理的集合論の基礎についても触れられています。
こちらの本では、自然数のペアを整数とみなせる、という話題を扱っています。自然数のペアの性質やその演算(足し算)を上手く定めることで、自然数のペアが整数とみなせることを丁寧になぞっていきます。順序対のイメージを掴むのによい教材です。
複式簿記における順序対の具体例「パチョーリ群」については、こちらのテキストで触れられています。
【君の知らない複式簿記】シリーズはこちらからどうぞ。
コメント