ビジネス

需要と供給から考える監査報酬

こんにちは、毛糸です。

日本は欧米と比べ、監査報酬が低いと言われています。

特に業界では最近、監査報酬をいかに上げるかという話がよく取り上げられます。

監査報酬というのは、監査というサービスに対して支払う価格のことですから、そのサービスの需要と供給で決まります。

もしたくさん報酬を払わなければ監査受けられないということになれば、嫌でも監査報酬は上がるでしょう。

最近は大手監査法人を中心に、ハイリスクな新興企業を安価で受けるようなことをしなくなってきています。

一昔前は、後の大規模クライアントを期待してか、ベンチャーを破格の監査報酬で獲得しては、現場を疲弊させてきました。

しかし、昨今の働き方改革により、そういった案件に資源を咲くのが難しくなりつつあるようです。

個人的には、それはいい傾向だと思います。

監査サービスの需要と供給

会計不正が市場を賑わせる昨今、多少高くても高品質な監査法人を使いたいというステークホルダーの希望はあるでしょうし、

一方の監査法人も無尽蔵にリソースがあるわけではないことをよく思い知ったでしょううから、

監査報酬アップの土壌は整いつつあるのではないかと思います。

監査サービスの供給側から見ると、働き方改革で従来のジュニアの残業頼りのやり方は通用しなくなり、そのしわ寄せがシニア層へ来ているようですが、ここに十分な手当てがされないと、いよいよ監査法人の運営が危うくなります。

そうなれば、報酬効率の良いクライアントしか残せなくなり、供給はタイトになってくるはずです。

もちろん大手監査法人以下、中堅以下が受け皿になって監査サービスの供給を下支えすることは考えられますが、過度に低廉の報酬は維持できないでしょう。

監査の需要側から見ると、監査なしには資本市場への参加が難しいこともあり、必要コストとして監査の需要は底堅いように思います。

ただ、一方で、監査が必要な会社でいることのメリットは徐々に小さくなっているような気がしています。

監査(を要する会社であること)のコストが大きければ、じゃあ上場辞めようかとか、合同会社でいいかとか、そういう話になるので、監査報酬上げるなら監査報酬に見合う経済的メリットがあることを強調しないといけません。

いずれにせよ、監査法人側もクライアントに対する価値というものに向き合わねば、納得感ある監査報酬アップはできないでしょう。

【疑うことはコスト】他人の仕事を疑う前に確認すべき5つのこと

こんにちは、毛糸です。

先日読んだ本『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』に「疑うことはコストである」という考え方が述べられています。
相手の言うことをいちいち疑って確認をとっていたら、時間とコストがかかり、組織運営のスピードが失われます。
変化の激しい現代においてビジネスで勝ち残るためには、「疑うことはコスト」と考えて疑いを排除することで、迅速な意思決定をする必要があります。
とはいえ、自分が作業している中で、他者の仕事や成果物に疑義を抱いてしまう場面は多々あります。
今回はそういうシーンに出くわしたとき、他者を疑う前に確認すべき5つことについて、まとめてみたいと思います。

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関連する文書やルールを確認する

企業には業務上のルールがあり、それを文書化している場合があります。
大企業であれば内部統制の観点から業務ルールが明文化されていることが通常です。
もし他者の仕事に疑わしい部分を見つけたら、まずその業務に関するルールや文書を確認しましょう。
もしかしたら、その疑いは自分の理解が不十分なことに由来しているかもしれません。
人を疑う前に、まずルールを確認し、あるべき業務がどういうものであるかを確かめましょう。

同じロジックで再実施する

他者の仕事の結果が疑わしい場合、同じ前提条件でもう一度作業を振り返ってみると、自分の思い過ごしや誤解が解けることがあります。
他者の仕事に何らかの疑義がある場合、それはヒューマンエラーであることもあれば、自分の知らない手続きをしているのかもしれません。
時間はかかりますが、可能な限りで同様のロジックで再実施することで、本当に他の人がミスをしているのか、それとも自分の勘違いやケアレスミスによるものなのかが判別できます。


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以前に同じ状況や類似例がないか確認する

他人の仕事の結果がいつもと違う場合や、不自然な点がある場合、以前に同じ状況が起こっていないか、類似の例がないかを確認しましょう。
ビジネス環境が目まぐるしく移り変わる現代とはいえ、ルーティンワークであれば全く新しい状況が頻発するようなことはそうそうありません。
もし他者の仕事に疑わしい部分や不明点があったら、同様の状況が以前にも起きていないかを確認し、類似の状況を探しましょう。
もし同じような状況が起きていれば、今回も同様に対処することで問題を解決できるかもしれません。

日を置いて再度考える

もし「これは上流工程の担当者のミスでは……」と疑わしい状況に出くわしても、すぐにその人を問いただすのは良い方法とは言えません。
相手は自分の仕事を否定されたと思ってしまいますし、確認のために手を止める必要が出てきます。
もしすでに述べたような確認を行ってもなお疑念が払拭できない場合は、いったん時間をおいて、再度考えてみることをおすすめします。
もちろん緊急の仕事の場合は聞いてしまったほうがよいかもしれません。
しかし、ある程度スケジュールにバッファがあるなら、日をおいてから再考することで、新しい着眼点が得られ、問題が解決できるかもしれません。

前任者・チェック担当者に相談する

もし自分自身では解決できないようであれば、前任者やチェック担当者(レビュアー)に状況を相談してみるのも良いでしょう。
もし自分が着任して間もないような場合や、業務の進め方や内容について理解が不十分な場合には、自分より理解のある人に相談すると、問題が解決できることがあります。
もちろんこの場合は、相談相手の時間を使ってしまうことになるので、歓迎はされないかもしれません。
しかし、十分な検討をしてなお解決できない場合には、より理解ある人に助けを求めることが、結局は効率的であったりもします。


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まとめ

変化の激しい現代において「疑うことはコスト」です。
しかし、他者の仕事に疑義を抱いてしまうような状況は完全には回避できません。
そんなときは、以下の5つを実践してみてみてください。
  1. 関連する文書やルールを確認する
  2. 同じロジックで再実施する
  3. 以前に同じ状況や類似例がないか確認する
  4. 日を置いて再度考える
  5. 前任者・チェック担当者に相談する
私はこれらの項目をチェックリストにして、何か困ったとにには必ず確認するようにしています。
参考記事:チェックリストで仕事が劇的に楽になった件

これらのことを確認をすることで他の人を疑わずに済めば、余計ないざこざを回避できますし、効率的な業務運営につながります。

むやみに人を疑う前に、まずは自分自身での解決を目指しましょう。

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「複利の効果」にまつわる2つの致命的な誤解

こんにちは、毛糸です。

資産運用について勉強する際、必ずと行っていいほど目にする言葉、それが「複利の効果」です。

「複利の効果」とは、利息に利息がつくことで、資産が雪だるま式に増えていく仕組みのことで、アインシュタインはこれを「人類最大の発明」と呼んだとも言われています。

しかしこの「複利の効果」については、多くの文献で誤解を招く表現がされており、投資初心者に間違った解釈を与えています。

今回はそんな「複利の効果」にまつわる2つの致命的な誤解について説明します。

なお、本記事は下記書籍を参考にしていますので、合わせて参照してください。

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高い利回りは確定したものではない(リスクの存在)

「複利の効果」に関する文献でこんな例を見たことはないでしょうか。

  • 定期預金の年率0.01%で100万円を20年間運用しても100万2千円にしかならない
  • もし年率5%で運用できれば、20年後には265万円にもなる
こういう文献では、「複利の効果」を実感させるために、高い利回りを例に出すことが多々あります。
しかし、投資において、年利数パーセントという高い利回りを、長期に渡り安定的に実現させるのは不可能です。
投資において利回り(リターン)はリスクに見合う報酬として、期待値の意味で高くなるものです。
期待値の意味で、とは、実現するリターンは高かったり低かったリスクけれども、平均すると、という意味です。
したがって、期待値の意味でリターンが高くとも、実現するリターンが高いとは限りません。
日本株の期待リターンは5%前後と言われていますが、バブル崩壊やリーマンショックの際には-40%超のマイナスとなりましたし、
比較的期待リターンが高いと言われている新興国株式は、現在の私の投資状況においては、悲しいことにマイナスリターンとなっています。
このように、高い期待リターンが見込める資産は、マイナスになる可能性もはらんでいます。
「複利の効果」をうたうときに、高いリターンを例にしている場合は、そのリターンが安定的に得られると考えてしまいがちですが、それは大きな誤解です。


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複利によって損が増幅する可能性がある

「複利の効果」は利息に利息がつく仕組みですが、前述の通り投資にはリスクがあります。
したがって、運悪くリターンがマイナスになることもあります。
「複利の効果」は、このマイナスのリターンを増幅する作用があります。
こんな例を考えてみましょう。
100万円を投資し、ある時点で10%のリターンが得られたとしましょう。
このとき得られたリターン10万円を再投資すれば「複利の効果」が得られると考えられます。
しかし、もし次の時点で運悪くマイナスのリターンが実現した場合はどうなるでしょうか。
たとえば実現リターンが-10%であった場合には、「複利の効果」を期待して再投資した場合、110×(1-10%)=99万円になります。
一方、前期のリターン10万円を再投資せず、ポケットに入れておいた場合には、投資額は100万円×(1-10%)=90万円になりますが、ポケットの10万円と合わせて資産総額は100万円のままです。
この場合「複利の効果」を期待して再投資したのに、むしろ資産が減ってしまっています。
この例からわかることは、「複利の効果」は必ずしも資産を増やすとはかぎらず、リターンの実現値によっては、むしろ損になることもあるということです。
投資はリスクから逃れることは出来ませんから、マイナスリターンが実現する可能性も十分にあります。
「複利の効果」をうたう文献では、こういうネガティブな例には全くと言っていいほど触れていませんので、「複利の効果」は無条件に良いものと誤解しがちです。
しかし、リターンの実現地がマイナスである場合には、「複利の効果」は裏目に出るのだということを認識しておかなくてはいけません。


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まとめ

資産運用で重要な「複利の効果」に関する2つの誤解について説明しました。
「複利の効果」は利息が利息を生む大切な仕組みですが、高いリターンが安定的に獲得できるわけではなく、また運が悪ければ損を増幅する作用があります。
こうした負の側面も正しく理解しながら、資産運用と向き合っていきましょう。
以下の書籍は今回触れたような「複利の効果」の負の側面にも言及している、大変優れた投資入門書です。
資産運用の正しい理解を得たい人は、是非読んでみると良いでしょう。

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「レバレッジをかける」の本当の意味と、リスク・リターンとの関係

こんにちは、毛糸です。

先日こういった呟きをしました。

「レバレッジをかける」という言葉は、経営学やファイナンスの用語として広まりましたが、普及しすぎたためにその意味を理解しないままビジネスマンなどが誤用している例が多々あります。

FXや不動産投資はレバレッジをかけた投資の好例ですが、その意味を正しく理解できていない人もいるようです。

今回は「レバレッジをかける」とはどういうことなのかについて説明し、誤った使いかたについて指摘したあと、レバレッジとリスク・リターンの関係について述べたいと思います。


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「レバレッジかける」とはどういう意味か?

レバレッジをかける、レバレッジを効かせる、という言葉は、日常のいろいろなシーンで用いられる用語です。

本来は商学・経営学・ファイナンスで用いられる専門用語です。

レバレッジの本来の意味は、他人資本を利用することで自己資本利益率を高めることです。

これだけではイメージが掴みづらいので、例を出しましょう。
リターン(収益率)が10%の投資案件があるとします。
自己資本(元手)100万円をこの投資案件に投下したとき、リターンは100×10%=10万円です。
率に直すと、リターン10万円÷自己資本100万円=10%です。
自己資本が200万円だった場合も、金額ベースのリターンは200万×10%=20万円、率に直すと10%です。
以上の例は自己資本のみを使いましたが、他人資本を利用できる場合はどうでしょう。
利率5%で他人から資金を借り入れることが出来るとします。これが他人資本を利用するということの意味です。
自己資本100万円と、他人資本100万円の合わせて200万円をこの投資案件に投下するとき、金額ベースのリターンは200万円×10%=20万円です。
投資元本とリターンの総額は220万円です。
他人資本には利息を払って返済しなくてはいけませんから、利率5%分の5万円と借入額100万円の合わせて105万円を返済します。

したがって、他人資本を返済したあとに残る金額は220-105=115万円です。

自己資本100万円が、投資後には115万円になったわけですから、金額ベースのリターンは15万円、率に直すと15%です。

先程の「全額自己資本」のケースでは10%でしたから、他人資本を利用したことで収益率が5%高まっています

これが「レバレッジをかける」ということの具体例です。

「レバレッジをかける」とは、他人資本を利用する(≒借金をする)ことで、自己資本に対するリターンの比率を高めることです。

レバレッジをかけた投資にはいくつもありますが、たとえば不動産投資がレバレッジを利用した例です。

千万、億単位のお金は自分では用意できませんが、銀行から借り入れをすれば自己資金が少なくても不動産を購入でき、運用に成功すれば金利分の負担で高いリターンにあずかれる、というのが不動産投資のメリットです。

また、FX(外国為替証拠金取引)にもレバレッジという概念がありますが、これも全く同じです。

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「レバレッジをかける」の誤用

レバレッジをかけることはビジネスを大きくするために重要な意味を持つので、その言葉はいろいろなシーンで使われます。

しかし、広く使われすぎているがゆえに、誤解を招きやすい表現でもあります。

レバレッジの本質は「他人資本の利用」なので、例えば自助努力で品質や速度を上げる、といった例でレバレッジという言葉を使うのは誤りです。

「エナジードリンクを飲んでレバレッジをかける!!」といった表現も、他人資本を使っているわけではないので、レバレッジをかけているわけではありません(厳密には、将来の元気を前借りしているという意味で、異時点間でレバレッジをかけていると言えなくもないです)。

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レバレッジとリスクの関係

レバレッジとは平たく言えば「借金して投資したら自己資金に頼るよりデカく張れる」ということですが、「レバレッジをかける」ことで無条件にリターンが高められると勘違いされがちです。

レバレッジをかけると、リターンを高められる代わりに、リスクも増幅させます

また例を出しましょう。

200万円投資すれば1/2の確率で400万円、1/2の確率で40万円になる投資案件があるとします。

将来手に入る金額の期待値は1/2×400+1/2×40=220万円です。

この投資案件に自己資本200万円を投じたとき、1/2の確率で400-200=200万円のリターン(率にして100%)、1/2の確率で40-200=-160万円(率にして-80%)という結果になります。

もし他人資本を使うとどうなるでしょうか。

自己資本100万円に加え、他人資本を100万円(利率5%)で利用するとします。

このとき、1/2の確率で400万円が獲得でき、他人資本の返済105万円と自己資本100万円を引いたあとの残り195万円がリターンとなります(率にして195%)。

一方、1/2の確率で40万円しか返ってきませんので、他人資本の返済105万円と自己資本100万円を引けばリターンは-165万円(率にして-165%)となります。

まとめると

  • 自己資本200万円の場合、
    • 1/2の確率で収益率100%
    • 1/2の確率で収益率-80%
    • 期待リターンは1/2×100+1/2×(-80)=10%
    • リターンのブレ(リスク)は-80~100%
  • 自己資本100万円+他人資本100万円(利率5%)の場合、
    • 1/2の確率で収益率195%
    • 1/2の確率で収益率-165%
    • 期待リターンは1/2×195+1/2×(-165)=15%
    • リターンのブレ(リスク)は-165~195%

この例からわかることは、レバレッジをかけると、リターンが大きくなると同時に、リスクも高くなるということです。

つまり、レバレッジをかけるとは、ハイリスク・ハイリターンな投資プランにシフトすることに他なりません。

敢えてネガティブな話をするなら、上手く行かなかった場合の損失が大きくなる、ということです。

投資の結果を前もって予測することはできず、レバレッジをかけた投資が必ず実を結ぶとは限りません。

レバレッジをかけるということは、ハイリスク・ハイリターンを目指すということなのです。


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まとめ

ビジネスマンなどがよく使う「レバレッジをかける」という言葉の意味について説明しました。

レバレッジをかけるという言葉は誤用されがちです。

レバレッジはリターンを高める効果がありますが、リスクも上がるということを認識しておく必要があります。

投資において無条件にリターンを高められる「魔法」は存在しません。

きちんと勉強し、正しい理解を身に着け、リスクを適切に管理しましょう。

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【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

こんにちは、毛糸です。

先日こういう呟きをしました。

最近、複式簿記というものについてとても興味を持っており、いろいろ調べております。

今回は、複式簿記の拡張とその例、三式簿記についてお話します。

複式簿記の拡張とはなにか?

「複式簿記の拡張」というのは壮大な試みです。

複式簿記は12世紀頃に生まれたとされ、14世紀の数学者ルカ・パチョーリが著書の中で取り上げたとされています(Wikipedia)。

それから数百年の時が流れ、複式簿記は未だに会計を支える基幹技術として、ビジネスマンの必須スキルとされています。

長きに渡り人類の営みを支えてきたそんな複式簿記ですが、単純な疑問として、複式=貸借の二式簿記は、それ以上の次元に拡張することは出来ないのか?と考えてしまいます。

 

「複式簿記の拡張」として考える際にまず思い浮かべるのは、借方貸方に次ぐ第三の「方」です。

借方貸方の2方向のバランスを、3方向のバランスにするという拡張が思いつきます。

これを勝手に「方向的三式簿記」と呼ぶことにすると、貸方借方ほにゃらら方の3方向にバランスする(3方向の重心が零点になる)と考えられそうですが、この第三の「方」が何を意味するのかは、ちょっとよくわからないですね。

複式簿記においては、貸借対照表の借方貸方が資金の運用と調達という意味付けができますが、この「方向的三式簿記」については、概念としては成立しつつも、意味付けが難しい気がします。

このように、複式簿記の拡張は、それほど簡単なものではないのです。

 

しかし、「複式簿記の拡張できるのか?」もしくは表現を変えて「複式簿記は完成された概念か?」という疑問について、熱心に取り組み一定の成果を挙げた学者がいます。

 

それが、日本人の公認会計士として、アメリカ会計学会の会長を務めた井尻雄士先生です(Wikipedia)。

 

井尻先生の研究については、大藪「<研究ノート>複式簿記から三式簿記へ : 井尻雄二著「三式簿記の研究」を中心にして」(外部リンク)によく整理されています。

 

以下では上記資料を眺めつつ、井尻先生が「複式簿記の拡張」として提唱した三式簿記について述べたいと思います。

 

時間的三式簿記

複式(二式)簿記を三式簿記に拡張するには、まず複式簿記の二次元性がどこからくるものかを理解する必要があります。
複式簿記の二次元性は結局、

財産=資本

という等式に基づいていると井尻は考えました。
ならば、別の等式を新たに加えれば、三式簿記への拡張が出来るのではないか?という考えが生まれます。
井尻先生はここで財産=資本という等式を

現在(財産)=過去の累積(資本)

と解釈しました。BS=現在、PL=過去ととらえた、と言ってもいいでしょう。

こう考えるならば、自ずともう一つの等式が何であるべきかが見えてきます。

現在、過去に続くもう一つの要素、そう、未来を表す財務諸表を加えればいいのです。未来を表す財務諸表=予算計算書を導入することで複式簿記を拡張したものが「時制的三式簿記」と呼ばれるものです。

未来を表す情報、すなわち予算計算書を考えることが、複式簿記の第一の拡張です。

 

しかし、その後時制的三式簿記は「複式簿記を2度適用したもの」にすぎないことが、井尻自身によって看破されました。

 

未来を考えるといっても、それはあくまで1つの時間軸上の話であるから、「複式簿記の拡張」と呼ぶにはやや心許ないということです。

 

微分的三式簿記

時制的三式簿記に限界を見出した井尻先生は、別の確度から「複式簿記の拡張」を試みます。
井尻先生は、1次元と2次元の対応関係が、2次元と3次元の対応関係と並ぶような「次元の拡張」を試みました。
そのような考えで得た次なる視点は、

財産=資本

という等式を

ストック=フロー

という等式として見る、ということです。
ここで、フローはストックの変分を意味すると考えます。
より一般に、フローをストックの「微分」概念と捉えることにより、複式簿記の拡張の緒になるのではないかと井尻先生は考えました。
いわば
\begin{equation} \begin{split}
\mathrm{dBS}=\mathrm{PLd}t
\end{split} \end{equation}
という関係式です。
こう考えることにより、資本の微分(財産の2次微分)概念を新たな次元として、複式簿記を拡張できるのではないかと思い至ります。
離散的に考えれば、損益の2期比較が新たな次元ということになります。
これを利力・利速と呼びます。
実務的には、PLの前年同期比が開示されまするが、これはまさに利力に関する開示情報と言えます。
こうして

財産=資本(の積分)=利力(の積分の積分)

として、複式簿記は拡張されます。
これが微分的三式簿記です。
微分的三式簿記における
  • 財産
  • 資本
  • 利力
は、ニュートン力学における
  • 位置
  • 速度
  • 加速度
に対比されます。

井尻先生は、損益(PL)をBS項目の変化ととらえるところから、拡張を試みました。

BSの差分(極限の世界での微分)としてPLを定義することで、複式簿記は拡張したのです。

井尻先生が発見した微分的三式簿記は彼自身によって「利速会計」と呼ばれ、企業の業績評価に利用できる新しい会計として本にもなっています。

ブロックチェーン的三式簿記

近年、「複式簿記の拡張」とは別の側面から「三式簿記」と呼ばれる概念が生まれました。
それが「ブロックチェーン的三式簿記」です。

これは、取引の当事者2者に加え、当該取引をブロックチェーンに記録することで、会計情報の正確性を担保しようとする試みのことです。

ブロックチェーン的三式簿記は会計情報の正確性や透明性を高める新しい手法として注目されていますが、複式簿記という技術そのものを再定義するものではなく、複式簿記を用いた会計情報の記録手段と考えられるので、私はこれを「複式簿記の拡張」とは位置づけていません。

 

井尻の三式簿記は「複式簿記の拡張」と呼べるか?

時制的・微分的三式簿記を発見した井尻先生は、複式簿記の拡張に際して考慮すべき2つのポイントを挙げています。
1つが旧システムの保存性=拡張された簿記が複式簿記を包含すること、もう1つが新システムの必然性=旧システムから論理的に導かれるものであることです。
井尻先生が自ら結論づけているように、時制的三式簿記は「三式簿記ではない」のですが、微分的三式簿記は保存性・必然性を満たす「複式簿記の拡張」になっているように思えます。

しかし、利力という新たな会計概念の理解や測定といった実務的困難さゆえ、現状有用なものとはみなされていません。

複式簿記が会計計算技術であるという前提に立てば、微分的三式簿記はその概念の普及と利力の測定インフラの整備が必要です。

終わりに

現代の日本の会計研究界において「複式簿記の拡張」というテーマに取り組んでいる研究者はどれくらいいるのでしょう。
社会に広く浸透している複式簿記は、果たして完成された概念なのか、それとも更に高い次元に至る可能性を秘めているものなのか、個人的にじっくり研究していきたいと考えています。

最近読み進めている『Algebraic Models For Accounting Systems』という書籍は、複式簿記の代数的構造に着目した、異色の会計専門書です。

複式簿記そのものが持つ構造・性質を深く理解すれば、複式簿記の拡張も可能になるかもしれません。

私は、井尻先生に挑戦したいと思います。

終身雇用のインセンティブとは何だったか?そして、なぜそれが破綻したのか?

こんにちは、毛糸です。

先日、トヨタの豊田社長が「雇用を続けている企業へのインセンティブがあまりない」と述べたことが話題になっています。

経団連の中西会長も「終身雇用なんてもう守れないと思っている」と答えています。

終身雇用(しゅうしんこよう)とは、

同一企業で業績悪化による企業倒産が発生しないかぎり定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用においての慣行(Wikipedia)

のことですが、そのインセンティブとは一体何だったのでしょうか。

そしてなぜそれが今、破綻してしまったのでしょうか。

今回は終身雇用のインセンティブとその崩壊について整理したいと思います。

終身雇用のインセンティブ

日本の終身雇用の原型は、第一次・第二次大戦の中間期に始まり、日本がまだ高度経済成長を果たす前、企業が熟練した作業者の確保に悩まされていた時期に、昇給や退職金の仕組みを整えたのがきっかけと言われています。

その後、大正デモクラシーによる雇用の慎重化や、高度成長時代の労働者不足の深刻化により、企業が人材流出を食い止めるべく、終身雇用が確立しました。

我が国の企業が長きに渡り「守ってきた」とされる終身雇用には、以下の4つのインセンティブがあります(正確には、ありました、というべきかもしれません)。

終身雇用のインセンティブ1:人材投資の不確実性の低減

終身雇用を前提とすれば、企業は採用した人材を長期的な人的資源として利用でき、人材投資の不確実性が減るというメリットがあります。

雇用した人材がすぐに辞めてしまうような状況では、企業は短期的な利益に貢献しない社内教育などを実施しづらくなりますが、終身雇用が浸透していれば、長期的戦略に基づいて人材投資を行うことが可能になります。

終身雇用が破綻し、労働の流動性(離職転職率)が高くなった場合、企業は採用のための広告費といった直接的なコストや、離職転職が多いことによる労使関係への悪影響などの間接的コストを負担することになります。

しかし終身雇用が確立していれば、企業は余計なコストを負担せずに済み、人員投資の不確実性は小さくなります。

終身雇用のインセンティブ2:余剰労働力の確保

企業はさまざまなビジネスリスクにさらされており、需給の変化によって業績が下がることもあります。

人員は基本的には自由な解雇が行えないため、需要低下時には雇用過剰(人余り)の状態になります。

しかし、その需要低下が一時的であり、いずれ需要は回復し業績は改善するという前提に立てば、教育コストを勘案すると、一時的な雇用過剰でも雇い続けることに経済合理性があります。

したがって、終身雇用によって教育コストを回収することができるのです。

終身雇用のインセンティブ3:企業特殊熟練の蓄積による生産性向上

終身雇用は勤続の長期化をもたらします。
勤続が長期化することで、その企業の文化や方法を反映した、企業独自のスキル(企業特殊熟練)が蓄積されるようになります。
企業特殊熟練はその企業のビジネスを遂行する上で必要なスキルであり、この企業独自スキルが高まることで、生産性が向上します。
終身雇用はこうした企業特殊熟練の蓄積に貢献し、生産性を上げるのに役立ってきました。

終身雇用のインセンティブ4:監督費用の削減

労働を高い能率で働かせるためには、監督が必要ですが、終身雇用は低能率な労働者を発見するのに役立つと言われます。

短期で離職転職が起こる企業では、短期的な非効率を発見するための労働者監督コストが高く付きますが、終身雇用(と退職金や年功序列制度)では、長期の労働実態から能率的でない労働者を発見し、異なった待遇に処することが可能です。

したがって、終身雇用によって長期的な目線で労働者を「品定め」することが出来るというメリットがあります。

終身雇用のインセンティブはなぜ崩れたか

トヨタ社長豊田氏の言葉を借りれば、現代日本は「雇用を続けている企業へのインセンティブがあまりない」状況になりました。
一体、何が状況を変えてしまったのでしょうか。

もっとも大きな原因は、現代という社会が目まぐるしい変化を伴うようになってきた、ということでしょう。

インターネットの普及以後、情報はまたたく間に世界に伝播し、ビジネスを国際化させ、あらゆる前提が揺らぐようになり、全く新しいテクノロジーが次々ともたらされるようになってきました。

企業の将来予測や戦略采配のミスにより、またたくまに企業生命を脅かすような状況に見舞われるようになった現代においては、もはや「需要の回復を待つ」というような悠長なことは言っていられません

したがって、企業の教育コストはもはや回収の蓋然性が高いものではなくなり(「インセンティブ2:余剰労働力の確保」の崩壊)、熟練した労働者のスキルもあっという間に陳腐化します(「インセンティブ3:企業特殊熟練の蓄積による生産性向上」の崩壊)。

一旦崩れ始めた終身雇用制は、終身雇用を前提とした均衡を崩し、採用コストの増加や人材投資の不確実性を高めます(「インセンティブ1:人材投資の不確実性の低減」の崩壊)。

流動的になった人員のマネジメントのため、追加的なコストもかかるようになるでしょう(「「インセンティブ4:監督費用の削減」の崩壊)。

このようにして、現代の日本においては、終身雇用の前提となっていた経済状況は完全に過去のものになったのです。

つまり、我が国を代表する企業のトップが「終身雇用は守れない」と口にするようになったことの背後には、変化の激し現代に終身雇用がそぐわなくなったという理由があるのです。

まとめ

企業が終身雇用を守るインセンティブには、以下のようなことが考えられます。

  • 人材投資の不確実性低減
  • 余剰労働力の確保
  • 生産性向上
  • コスト削減

しかし、これらが成り立つ前提は崩れました。

テクノロジーの進歩により、企業を取り巻く環境は様変わりしています。

終身雇用のインセンティブがなくなった現在、労働者としての私たちも、そのあり方を見つめ直す必要があります。

参考文献

勉強会「意識高い……」「レベル高そう……」いやいや、誤解してませんか?

こんにちは、毛糸です。

このところ毎月のように勉強会を企画したりしているのですが、先日「意識が高い」「近寄りにくい雰囲気」という声を耳にしました。

私はそういう声にはあまり気持ちを乱されないタイプですが、しかしそういうイメージを持たれるのは本意でなく、誤解であると感じているため、今回はそういった声に対するメッセージをお届けします。

私はなぜ勉強会を開いたか

私は昨年のプログラミングブームの中で、自分と同じようにテクノロジーを学ぶ人達と交流したいという思いで、勉強会を企画しました。

当時の私はプログラミング言語Pythonに興味を持っていました。

日頃、会計士として仕事をしていますので、Pythonを会計の仕事に役立てられないかと考え、会計×テクノロジーの勉強会 PyCPAを立ち上げました。

PyCPAという勉強会は昨年の発足以来、10回以上の開催実績があり、参加者も述べ250人を超える規模となりましたが、最初はプログラミングに興味のある会計士ツイッタラーを集めた小規模な集団でした。

会計とテクノロジー(プログラミング)という、ある種「オタク」な趣味を共有するために、SNSで仲間を募り集まってみた、とうただそれだけの勉強会です。

PyCPAという勉強会は、これまで色々な形式で開催されてきました。

  • ただ集まって各自黙々と作業を行うもくもく会
  • 講師を招き実務の最先端を学ぶセミナー
  • 実際にプログラミングをしながら学ぶハンズオン
  • 専門書をみんなで読み進めていく輪読会
などなど、多彩なバリエーションで開催しています。
勉強会は完全無償で運営されており、会場の提供や講師の登壇まで、すべで勉強会のビジョンに共感して下さる方々の善意で成り立っております。

勉強会に対する誤解

そんな勉強会PyCPAですが、最近「意識が高い」「レベルが高くて近づきがたい」という声をちらほら耳にするようになりました。
前述の通りPyCPAは、Twitterに生息する一部の「オタクな」会計士による趣味の集まりとして発足しました。
今でこそ多くの支援者に恵まれ、コミュニティとしての輪郭を備えつつありますが、「楽しさを探求する」というあり方は、当初から全く変わっていません。
意識の高さを志向しているようなことはまったくなく(おそらくコミュニティメンバーもそれを望んでおらず)、ただ楽しいから・知りたいからと言う理由で、探求し発信しています。なので、
なに意味わからんこと追い求めてるんだあいつら……
という方向で近寄りがたいのならよくわかりますが、
なんかレベル高いことやってるよ意識たかっ……
と思ってるなら、それは大きな誤解です。
もちろん、会計やテクノロジーに興味を持ち探求することを楽しむ人種が世の中の多数派だとは思っておりませんので、そういう意味では「尖った」集団であることには間違いないのですが、もし「意識高い」奴らと映っているのであれば、それはこのコミュニティの本質を十分理解いただいていないということでしょう。

やりたいからやる、楽しいから学ぶ

私の周りには、私の興味ある話題について話を深められる人があまりいません(私の交友関係の狭さゆえです)。
私が気になる、AIの新技術とか、正規分布の和とか、簿記の代数的構造とか、そういう話題を一緒に楽しめる人が近くにいないのです。
しかしSNSは違いました。
SNSではどんなにニッチな趣向でも、広く発信すれば必ずと言っていいほど共感してくれる人が現れます。
SNSの広がりによって、リアルな人脈を超えた人間関係が構築できるようになりました。
こうしたネットでのつながりをリアルに感じたい、同じ志を持ち共通の話題を楽しめる人たちともっと交流したい、そういう気持ちが勉強会を企画する原動力になりました。
やりたいからやる、楽しいから学ぶ。
そうした娯楽を一緒に楽しめる仲間が、勉強会に集まっています。
そこにあるのは決して意識の高いインテリジェンスな集団ではなく、ちょっと変わったことに興味を持つ人たちが集まる探求の場なのです。

まとめ

「意識高い」「近寄りにくい」という声が、私たちの勉強会を形容する言葉としてはちょっとずれていると思い、考えていることを述べました。
私たちの勉強会は、ただ楽しいから集まり、知識を共有しているだけです。
もし「レベルが高くて……」と遠ざけてしまっている方がいたら、それは大きな誤解です。

PyCPAで登壇する人たちだって、最初はみんな手探りで学んでいたのです。

もし、今まで勉強会なんて行ったことも開いたこともないけれど、興味があるという方がいらっしゃったら、勉強会に足を運んでいただくか、こんな勉強会を開きたいとリクエストしてみてください。
参考記事:PyCPAで勉強会を開催する、もしくはリクエストする方法

どうせ楽しむなら、話のわかる人と一緒にやったほうが楽しいのです。

一緒に楽しく学びませんか。

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