簿記代数は何の役に立つのか

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『Algebraic Models for Accounting  Sysytems』は会計システムを抽象代数の言葉で表現し、その性質を探っています。

複式簿記の代数によって表す分野を私は「簿記代数」と呼んでいます。

「簿記代数」は一体何の役に立つのでしょうか?

『Algebraic Models for Accounting  Sysytems』の例

Algebraic Models for Accounting  Sysytems』は会計システムを抽象代数の言葉で表現し、その性質を探ることを目的とした専門書です。

この本では、複式簿記を基礎とした会計システムに求められる基本的な性質を代数の言葉で表現し、それをもとに会計システムの「モデル」を提示しています。「モデル」とは、現実世界に存在するモノや現象について、考察の対象にしたい側面や機能や性質を取り出したものです。

テキスト『Algebraic Models for Accounting  Sysytems』では、会計システムのもつ「代数構造」に着目し、会計システムのモデルを考察しているのです。

代数の言葉によって抽象的な会計システムを定義することによって、会計システムというものがどういった性質を持つものなのか、どういった性質を持つ「べき」なのかについて研究することが可能になります。

 

簿記代数の役立ち1:簿記と会計システムの理解

前述の通り、複式簿記の代数構造を研究することによって、複式簿記そのものの性質や、会計システムがどのようにあるべきかと言う点を明らかにすることができます。

複式簿記そのものの性質が何かということを明確に理解できれば、現実世界の具体的な問題に直面した時に、それが複式簿記の構造的な問題なのか、それとも(複式簿記に関連はしているけれども)別の原因によるものなのかを理解することができます。

安直な例ですが、試算表の貸借が合わないという問題に直面したとき、「いくつかの自然な仮定の下では、試算表は必ずバランスする」という複式簿記の原理を知っていれば、「複式簿記から逸脱した処理を行っていたに違いない、それはなんだ?」と問題の所在が明らかにあります。

 

また、会計システムに関する理解が深まれば、会計システムを実際にデザインし作成するの指針が得られます。また、会計システムを利用するユーザがどのように振る舞えば良いかと言う視点も与えてくれるでしょう。

これらはビジネスの実際の現場で使える知識と言えます。

 

簿記代数の役立ち2:複式簿記の拡張

複式簿記の代数構想を研究することによって、複式簿記がどのような構造を持っているかを明らかにできます。それによって複式簿記が代数的にどのような拡張が行われるか(もしくは拡張できないのか)という視座が得られます。

すでに一定の有用性が認められた複式簿記の拡張概念(たとえば行列簿記や三式簿記)がいったいどのような代数構造を持っているのか、それらがどのような意味で複式簿記の拡張になっているかという点について、数学的に厳密な言葉で語ることが出来ます。

既存の複式簿記と拡張された簿記との関係が数学的に厳密に認識されれば、さらなる拡張やまだ知らない実務への役立ちを見つけることができるかもしれません。

 

複式簿記代数の役立ち3:データサイエンス

簿記を代数的に表現するという事は、複式簿記という商業的・ビジネス的な対象を数学概念として扱うことができるということです。

したがって、その数学的対象としての簿記を統計学の俎上に載せることによって、複式簿記のデータを統計学の中で扱えるようになります。複式簿記における仕訳や試算表の「複式簿記としての性質」を損なわずにデータ分析の対象にできるということです。

例えば、複式簿記をベクトルとして表現する立場に立てば、この「簿記ベクトル」を使った回帰分析などのデータ分析手法を使うことができます。

 

参考文献

【君の知らない複式簿記】シリーズはこちらからどうぞ

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