経理職員はAIに仕事を奪われるのか?

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こんにちは、毛糸です。私は上場企業の決算を支援する仕事をしています。

決算や経理というと、最近は「AIで仕事を奪われるのではないか」という声がよく聞かれます。

本記事ではその不安について深掘りしていきたいと思います。

経理業務はAIに置き換えられるのか

2013年のカール・ベネディクト・フレイとマイケル A. オズボーンの論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」(pdfリンク)では多くの職業がコンピュータに取って代わられる可能性があることが示されています。

論文内に示される代替確率ランキングでは、Bookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks(簿記、会計および監査職員)が上位に記載されており、世間的にも経理職員の仕事はAIに代替されると考えられています。

私も経理支援を行う会計職員です。このまま機械に置き換えられてしまうのでしょうか?

業務を機械に置き換えるには、一定の条件を満たす必要があると私は考えています。

業務を機械に置き換える必要条件

当然ポジショントークが入りますが、しかし、私はAIによって自分の業務が取って代わられるとは考えておりません。なぜなら、経理には機械に任せられる部分と、そうでない部分があるからです。

業務を機械に任せるには、当然ですが、その業務のルールや目的を機械に識別させられる必要があります。

端的に言えば、プログラミングを行う必要があるのです。

AIを始めとする自動化技術はコンピュータ・プログラムですから、ある仕事がプログラミング可能であることが、その仕事を機械に任せる必要条件です。

【参考記事】
「AIで会計士の仕事(監査)はなくなるのか」に対するひとつの数理的整理

現在、複雑で総合的な判断や他の業務への波及効果の推測などは、プログラミングするのは極めて難しいと考えられます。

上述のオズボーン論文でも、複雑な判断や抽象的思考、人間の感情を扱う業務は、代替確率が低くなっているのがわかります。

AIに置き換わらない経理業務

連結決算や、日本基準と海外基準の差異調整など、複雑な経理業務は、AIなどの機械に置き換わるのは難しいと私は考えます。連結決算はその考え方が難解で、起こりうる仕訳を網羅的に事前予測することは不可能です。

そもそも連結会計とは企業組織全体をどのように投資家に見せるかという問題をはらんでいますので、簡単な条件分岐で自動化できるほど単純なものではありません。

また、日本の大企業の中には海外の株式市場に上場していたり、国際会計基準に基づく財務諸表を公開している会社もあり、海外基準での財務諸表の作成も必要になっています。

日本基準と海外基準を行き来するのは、両者の考え方の違いや基準文書の違いを読み解き、解釈し、仕訳に落とし込む総合的なプロセスなので、プログラミングするのは事実上不可能と言っていいでしょう。

ここで挙げたもののほかにも、経理においてプログラミングが容易でない分野は多数あります。

日常的に発生するルーティン業務や、契約書等から直接仕訳が作成可能なもの、判断の余地が少ないものに関しては、当然機械に置き換えられるでしょう。

したがって、現段階でこれら業務が自身の仕事の大部分であるという人は、今後機械に代替されることを覚悟しなくてはいけません。

しかし、だからと言って経理業務全体が機械に置き換わるかというとそうではなく、判断を要するもの(会計上の見積もりや総合的な判断が必要なもの)や、解釈を要するものに関しては、当面機械に置き換えれられることはない(技術的に難しい)と考えられます。

まとめ

業務が機械に置き換わるには、その業務がプログラミング可能であることが必要条件です。

したがって、経理業務において、プログラミング可能なルーティン業務や、判断の伴わない単純な仕訳作成は、AIなどの機械によって仕事を奪われるでしょう。

しかし、経理のなかの、比較的難易度の高い分野(判断や見積もりや解釈を要する分野)に関しては、技術的に機械に置き換わるのは難しいと考えられます。

今後、経理業務に就いていこうと考えている人は、自身の業務がAIに対処できないくらい複雑な分野で、能力を高めていくのがよいと思われます。

参考記事

ブロックチェーンやAIは会計士の脅威にはならないだろうけど、それでも残る2つの不安

AIに振り回される会社の共通点|道具としてのAIへの向き合い方

「AIで会計士の仕事(監査)はなくなるのか」に対するひとつの数理的整理

誰がための自動化か

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