この記事では、仕訳の履歴の数学的表現と、その代数構造についてまとめます。
バランスベクトル
仕訳はベクトルで表すことができます。これをバランスベクトルといい、数ベクトルであってその要素和が0であるようなものと定義されます。
【参考記事】【君の知らない複式簿記4】簿記代数の教科書『Algebraic Models For Accounting Systems』とバランスベクトル
バランス行列
バランスベクトルとして表される仕訳を時系列順に並べると、行列が作れます。これをバランス行列といいます。
【参考記事】【君の知らない複式簿記5】簿記とベクトル、行列、そしてテンソルへ
バランス行列による取引推定
バランス行列は、回帰分析による期中仕訳の推定に使えるという研究があります。
【参考記事】【君の知らない複式簿記6】矢印簿記で仕訳をビジュアライズ
勘定残高とパチョーリ群
バランス行列の「列」はバランスベクトルであり、列方向に要素を集計すると0になります。バランス行列の「行」は勘定科目であり、行方向に集計すると期末の勘定科目残高が得られます。
勘定科目の残高と仕訳の追加による残高変動は、群の構造をもつことが知られています。これをパチョーリ群と言います。
【参考記事】【君の知らない複式簿記7】T勘定とパチョーリ群
まとめ
仕訳の履歴という会計的に重要な情報に、多くの数学的表現や重要な構造が隠されているのは、驚きではないでしょうか。
このような発見は、複式簿記の代数研究の、ほんの序の口です。もしこの分野に興味をお持ちなら、こちらのテキストもお楽しみいただけるのではないかと思います。簿記代数の唯一といっていいテキストです。
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