この記事では簿記・会計における「矢印」を3つ紹介します。
複式簿記を前提とする会計の世界において,ここであげる3つの概念はいずれも「矢印」で表現できます。
簿記・会計の概念を「矢印」で表現することで,専門用語を理解する助けになります。
貸借対照表
会計のテキストでは,貸借対照表の貸方と借方はそれぞれ,資金の調達源泉と運用先を示していると説明されます。
貸借対照表の貸方では借入(負債)や出資(純資産)という「どこからお金か来たか」が表現され,借方では商品や構造設備(資産)という「どこへお金が行ったか」が表現されます。
これを資金の出どころと行き先と考えれば,貸借対照表には貸方の調達から借方の運用への矢印が潜んでいると考えられます。
仕訳
仕訳は,貸方の勘定科目から借方の勘定科目への矢印として表現できます。複式簿記における仕訳を矢印で表す流儀は,矢印簿記とよばれています。
仕訳を矢印として表現することで,勘定科目の関連性や数値の連携などを可視化することができ,会計情報を理解するのに役立ちます。
詳細は以下の記事をご覧ください。
会計そのもの
企業の状態と変化は,会計という規則によって,試算表と仕訳に対応付けられます。対応付けは数学用語としての関数(写像)と同じような意味合いです。
会計は写像であるというのは有名なフレーズです。
写像は集合から集合への矢印として表現されることがあります。
このような表現は圏論という数学において重要になります。
圏論では(集合とは限らない何らかの)対象たちとその間の矢印からなるシステム(圏,けん,category)や,圏と圏の間の矢印(関手,かんしゅ,functor)を考察します。
会計は企業の状態を表す圏から会計情報の圏への関手と考えることができます。この意味で,会計そのものは矢印であるといえます。