会計学と数学における「コンバージェンス」

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会計学にも数学にも「コンバージェンス」という言葉があります。

この記事では2つの「コンバージェンス」が一体どういう概念なのか説明したあと,会計学におけるコンバージェンスが数学におけるコンバージェンスとみなせるのではないかというアイデアについて述べます。

会計学におけるコンバージェンス

会計学においてコンバージェンスといえば、会計基準のコンバージェンスを指します。

会計基準のコンバージェンスとは、日本と海外において別々に存在する会計基準について、そのルールの差異を小さくするような制度変更のことをいいます。

『財務会計講義』では、会計基準のコンバージェンスを以下のように定義しています。

どちらの基準による財務諸表を利用しても同一の意思決定結果に到達するレベルにまで,国内基準を国際基準と実質的に合致させること

数学におけるコンバージェンス

数学においてコンバージェンスといえば、数列や関数列の収束を意味します。

数列や関数列が(ある数や関数に)収束するとは、その列がある数や関数に限りなく近付くことをいいます。

限りなく近付く、という言葉は曖昧さを含んでいます。数列や関数列の収束を厳密に述べるには、ε-N論法やε-δ論法を使います。

会計基準のコンバージェンスを写像の収束と考える

会計(基準)は「企業の状態を情報化する写像」と捉えることができます。

「会計は写像」というフレーズの意味と出典テキスト

【君の知らない複式簿記8】会計は写像であり、関手である。

会計基準を写像と捉えるとき、会計基準のコンバージェンスは、2つの会計基準という写像が近付くことと解釈できます。

写像も関数のようなものと考えられるので、写像としての会計基準についても、数学上のコンバージェンス(収束)を考えることができるでしょう。

もちろん、会計基準を数学的に厳密な意味での写像と定義する見方は,会計研究で広くとられているアプローチではありませんし、写像としての会計基準の収束を保証するであろう制約も検討できていないので、これは単なる空想です。

しかし、会計を数学的に定義することができれば、数学における収束の意味での会計基準のコンバージェンスを曖昧さなく定義できる可能性があるのは事実です。

それがどんな実益を生むのかはさておき、会計学と数学における「コンバージェンス」という共通の用語が、単なる言葉としての共通性のみならず、概念的にも関係があるのだとわかれば、会計学を数学の言葉で理解し議論するきっかけになります。そうなれば,会計学はこれまでにない視点を手に入れ,さらなる学術的な発展もありえるかもしれません。

そういう他分野との繋がりが、学問を発展されるきっかけになるのではないかと考えています。

参考文献

会計基準のコンバージェンスの本質については,こちらのテキストが参考になります。会計基準のコンバージェンスの終着点を,どちらの会計基準に則っても同一の意思決定結果に到達することと明確に述べている点が,目からウロコでした。

数学におけるコンバージェンス(収束)は,ε-δ論法によって厳密に述べられます。こちらの教科書は収束の概念の厳密な定義をはじめとする,解析学の基本的な事項を丁寧かつ厳密に説明する,大変有名なテキストです。

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