簿記・会計の数理的研究の背景

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この記事では,このブログで度々取り上げている複式簿記の数学的側面について,これまでの会計研究における経緯をまとめています。

【参考記事】【君の知らない複式簿記】目次まとめ

簿記・会計の数理的研究の背景

簿記・会計に関する数学的な定式化はこれまで幾度も試みられてきました。

とりわけMattessich[1964] による会計の基本的仮定や行列簿記,井尻[1984]の三式簿記は重要です。

簿記・会計の公理化に挑んだ天才たち

【君の知らない複式簿記1】行列簿記の意義、性質、限界

【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

簿記・会計の数学的研究は近年でも行われており,例えばFellingham and Lin[2020]はシャノンの情報理論との関連性を,礒本[2018]は行列簿記による会計システムへの応用を研究しています。

またRenes[2020]はEllerman[2014]による複式簿記の代数研究を継承し,簿記会計の公理と株式報酬に関する論文を発表しています。

Rambaud et al.[2010]は代数構造に基づく会計システムの性質を研究し,そのなかで試算表や仕訳をベクトルとして表現する方法を導入しました。これはバランスベクトルとよばれ,市原・首藤[2017]において会計情報の特徴量の抽出に用いられています。

このように,簿記・会計の数理的研究は,純粋な数学的興味のみならず,会計理論と実務における諸課題を解決するツールとして研究されています。

参考文献

Ellerman, D., 2014. On double-entry bookkeeping: The mathematical treatment. Accounting Education, 23(5), pp.483-501.

Fellingham, J., Lin, H., 2020. Is Accounting an Information Science? Accounting, Economics, and Law: A Convivium, 10(1), pp.1-17

Mattessich, R., 1964. Accounting and analytical methods. Homewood, IL: Richard D. Irwin

Rambaud, S.C., Perez, J.G., Nehmer, R.A., Robinson, D., 2010. Algebraic models for accounting systems. World Scientific.

Renes, S., 2020. When Debit =Credit, The balance constraint in bookkeeping, its causes and consequences for accounting. June. Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3624726

井尻雄士, 1984, 『三式簿記の研究』中央経済社。

礒本光広,  2018, 『行列簿記の現代的意義とその展開可能性: 歴史的経緯と構造の視点から』創成社。

市原直通・首藤昭, 2017, 「FinTech× 監査の現状: AI で見抜く不正会計」『企業会計』第69巻第6号,pp.775-783。

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