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ドルコスト平均法と一括投資の比較シミュレーション|リスク、リターン、損失確率

こんにちは、毛糸です。

手軽な投資手法として有名なドルコスト平均法は、専門家でもその有効性に関して評価が分かれており、分析するのは簡単ではありません。

分析が難しい理由は、対象とするデータ期間によって結果が変わってしまったり、確率論の手法が単純には適用できないためです。
参考記事>>ドルコスト平均法の検証が難しい理由

本記事ではこのような困難さを伴うドルコスト平均法に関して、シミュレーションによってその有効性を検証してみたいと思います。

検証の結果、ドルコスト平均法は一括投資に比べてリスク・リターンともに低くなり、また将来時点の損失確率が一括投資よりも大きくなることがわかりました。

 

検証方法

検証には投資シミュレーションプログラムVer2を使用します。

参考記事>>積立投資をシミュレーションするプログラムを作った(投資シミュレーションプログラムVer2)

投資シミュレーションプログラムVer2は積立投資を行った場合に将来の資産額がどのような分布を描くかをシミュレーションするプログラムです。
シミュレーションはモンテカルロ法という手法を利用しており、確率論に立脚した統計的推論に基づいて将来を予測します。
本記事では、月額1万円のドルコスト平均法による積立投資をした場合の将来の資産分布と、それと同じ総投資額を一括で投資した場合の資産分布を比較し、将来時点のリスクとリターンを比較します。

ドルコスト平均法と一括投資の比較をしたいので、使用する期待リターンとリスクは条件を揃えればなんでもいいのですが、ここでは年金の基本ポートフォリオの期待リターン4.57%と、リスクを示す標準偏差12.8%を使うことにします。レバレッジはかけません。
参考記事>>年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた

投資期間は、1年・10年・30年・50年とします。

ドルコスト平均法と一括投資の比較

投資シミュレーションプログラムVer2を用いたシミュレーション結果は、以下のとおりです。シミュレーション回数は1万回です。

投資期間1年

投資月数は1年*12ヶ月=12ヶ月、総投資額は12万円です。

ドルコスト平均法

当初投資額0円、月1万円の積立投資をします。

1年後の資産額の期待値12.26万円、中央値12.26万円です。

1年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは2.21%です。

1年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは7.09%です。


1年時点で損失を被る確率は39.64%です。

一括投資

当初投資額12万円の一括投資をします。

1年後の資産額の期待値12.57万円、中央値12.50万円です。

1年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは4.80%です。

1年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは13.36%です。


1年時点で損失を被る確率は38.11%です。

投資期間10年

投資月数は10年*12ヶ月=120ヶ月、総投資額は120万円です。

ドルコスト平均法

当初投資額0円、月1万円の積立投資をします。

10年後の資産額の期待値151.46万円、中央値146.30万円です。

10年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは26.22%です。

10年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは31.63%です。


10年時点で損失を被る確率は20.04%です。

一括投資

当初投資額120万円の一括投資をします。

10年後の資産額の期待値189.57万円、中央値173.92万円です。

10年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは57.97%です。

10年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは66.69%です。


10年時点で損失を被る確率は17.58%です。

投資期間30年

投資月数は30年*12ヶ月=360ヶ月、総投資額は360万円です。

ドルコスト平均法

当初投資額0円、月1万円の積立投資をします。

30年後の資産額の期待値765.48万円、中央値673.64万円です。

30年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは112.63%です。

30年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは108.04%です。


30年時点で損失を被る確率は7.39%です。

一括投資

当初投資額360万円の一括投資をします。

30年後の資産額の期待値1406.71万円、中央値1099.39万円です。

30年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは290.75%です。

30年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは310.57%です。


30年時点で損失を被る確率は5.53%です。

投資期間50年

投資月数は50年*12ヶ月=600ヶ月、総投資額は600万円です。

ドルコスト平均法

当初投資額0円、月1万円の積立投資をします。

50年後の資産額の期待値2286.82万円、中央値1820.05万円です。

50年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは281.31%です。

50年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは284.51%です。


50年時点で損失を被る確率は2.75%です。

一括投資

当初投資額600万円の一括投資をします。

50年後の資産額の期待値5794.77万円、中央値3921.94万円です。

50年後の資産額を総投資額で割ったトータルリターンは865.79%です。

50年後の資産額の標準偏差を総投資額で割ったトータルリスクは1072.02%です。


50年時点で損失を被る確率は1.93%です。

考察

ドルコスト平均法と一括投資のトータル・リターンとリスクは以下のようになりました。

この結果から、次のようなことがわかります。

長期になるほどリターン・リスクは上がる

ドルコスト平均法と一括投資のどちらの方法によっても、投資年数が長くなればなるほど、トータルのリターンとリスクは大きくなります。

ときおり「長期投資は安全」という主張を目にしますが、将来時点の資産の変動性をリスクと呼ぶ限りにおいて、長期の投資はリスクを増大させます(その裏でリターンという報酬も大きくなります)。
参考記事>>長期投資は【安全ではない】ことをシミュレーションで証明する

ドルコスト平均法より一括投資の方がハイリスク・ハイリターン

投資期間が同じならば、ドルコスト平均法よりも一括投資の方がリターン・リスクともに高いです。

これは、投資総額が同じであれば、ドルコスト平均法のほうが資金の待機時間が長く、リスクにさらされる期間と金額が小さくなるためです。

投資期間が短ければ、おおよそドルコスト平均法の2倍程度が一括投資のリターン・リスクになりますが、期間が長くなればなるほど複利の効果によって幅が大きくなってきます。

損失確率

損失確率についてまとめたのが以下の表です。

この表からわかることは、①投資が長期になるほど損失確率は小さくなる、②ドルコスト平均法よりも一括投資の方が損失確率が低い、ということです。

投資年数が同じであれば一括投資の方がハイリスク・ハイリターンですが、損失確率という別の「リスク(危険性)」の尺度で考えると、一括投資の方が安全である(損失が生じにくい)ということは驚きに値します。

まとめ

モンテカルロ法を用いた投資シミュレーションプログラムによって、ドルコスト平均法と一括投資の比較を行いました。

結論として

  1. いずれの方法でも長期投資はリスクとリターンを増大させる
  2. ドルコスト平均法より一括投資の方がハイリスク・ハイリターン
  3. ドルコスト平均法より一括投資の方が損失確率が小さい
ことがわかりました。
ドルコスト平均法の有効性に関する研究はあまり知られていないので、引き続き他の視点からも検証してみたいと思います。

「日本株に投資すると長期的には損」は本当か?

こんにちは、毛糸です。
先日公表された金融庁の報告案「高齢社会における資産形成・管理」のなかで、日本の年金に対する不透明性が示され、国民一人ひとりが自助努力による資産運用を行うべき、ともとれるメッセージが投げかけられました。
これを読んで投資を始めようとした人の中には、こんな考えを抱いている人もいるでしょう。

日本は高齢化が進み、人口も減少している。国の借金も増え続けているし、日本株式に投資しても損をするのは目に見えているから、日本株は買わないようにしよう。

さて、この考え方は正しいのでしょうか?
資産運用の初心者におすすめの入門書『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』には、こういった考え方について、

『低成長だから、株価は下がる』というのは誤り

と解説しています。
本記事ではなぜ「日本株は下がる」と考えるのが誤りなのか、ファイナンス理論の考え方と合わせて解説します。

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株式市場の効率性

株式市場には膨大な数のプレーヤーが参加しており、個々の投資家が様々な思惑で株式を売買しています。
もし国家レベルで先行きが怪しくなった場合、多くの投資家はすぐさまその情報を察知し、その国の企業の株価が下がる前に投資を清算しようとします。
そうすると、需要(買い)より供給(売り)が多くなり、株価が下がります。
情報が早く伝わるほど、そしてプレーヤーが多いほど、株価は情報を折り込みやすくなり、情報を手に入れることで得られる超過リターンはなくなっていきます。
ファイナンス理論ではこれを「市場の効率性」とよび、過去から現在までに公表された情報を使って超過リターンが得られないほど効率的であることを「セミストロングフォームで効率的」といいます。
多くの研究で、株式市場はセミストロングフォームで効率的であると考えられています。
したがって、過去に公表され世間に知れ渡った情報は、すでに現在の株価に織り込み済みであると考えられます。

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高齢化・低成長な日本の先行きは株価に織り込み済み

日本が超高齢化社会であり、社会保障や企業の雇用維持に限界が来つつあることは、周知の事実です。
したがって、株式市場が効率的ならば、これらネガティブな見通しは、すでに株価に織り込まれていると考えられます。
もし織り込まれていないなら、「日本はもうダメだ」と確信する投資が日本株に売りを浴びせることで高いリターンが得られます。
しかし市場参加者は自分の信念に従い、「先は暗そう」だと考えている人は既に売りポジションを持っているもしくは投資を清算しているはずで、その投資行動の結果として現在の株価が形成されているわけですから、現在の株価に日本の暗い未来は織り込み済みなのです。

日本株は下がるのか、上がるのか

もちろん、日本の先行きに関して、さらにネガティブな情報がもたらされれば、日本株はさらに値下がりすることもあります。
しかし、こういう「予想外」の情報は、事前には予測し難いものです。
逆に、日本が今考えられているより少しはマシな社会になりそうだという見通しがたてば、株価はむしろ上がっていくでしょう。
したがって「日本は低成長だから、投資の旨味はない」という考えは、妥当ではないのです。
日本株は上がるのか、下がるのかという質問に確かな答えを出すのは不可能ですが、現在の見通しより良くなれば上がり、悪くなれば下がる、ということは言えるでしょう。

まとめ

市場の効率性という考え方に触れながら、「日本は低成長だから株価は上がらない」という考え方が適切ではないことを説明しました。
日本株が上がるか下がるかは、今の日本の将来見通しが今後好転するのか、悪化するのかにかかっています。
もし「世の中の人が考えるより確かな信念で、私は上がると思う!」と考える人が増えれば、株価は自然に上がっていくでしょう。

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長期投資は【安全ではない】ことをシミュレーションで証明する

こんにちは、毛糸です。

「長期投資は安全」というイメージを抱いていませんか?

全国銀行協会のサイト(リンク)でも、長期投資の安全性に関して以下のように書いてあります。

一時的に価格が下がっても、長い目で見れば価格が上がることもあるため、長く保有すればするほど、リスクを軽減する効果があるといわれています。

しかし、この主張は極めて誤解しやすいもので、実際にはむしろ、投資収益のリスクは長期になればなるほど大きくなります。

本記事では「投資シミュレーションプログラム」を用いて、長期投資がリスクを高めることを証明します。
参考記事:>>「投資シミュレーションプログラム」サマリー

投資の「リスク」の定義

投資におけるリスクとは、投資収益の期待値からのブレを指すのが一般的です。

もう少し踏み込んで言えば、そのブレを測る尺度が、標準偏差や分散という統計量です。

投資において「リスクが高い」とは、将来の(額もしくは率ベースの)投資収益の標準偏差が高い、ということを意味します。

この意味において、投資が長期になればなるほど、リスクは高くなります。

つまり、他の条件を一定とすれば、短期と長期の投資収益は、後者のほうが高い標準偏差を持つということです。

本記事ではこのことを「投資シミュレーションプログラム」を用いて示します。

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投資シミュレーションプログラム

「投資シミュレーションプログラム」は、確率論に基づくモンテカルロ・シミュレーションという手法を用いて、投資収益の将来予測をするプログラムです。
参考記事:>>「投資シミュレーションプログラム」サマリー

モンテカルロ・シミュレーションとは、コンピュータによって乱数を発生させ、将来を確率的にシミュレートし、大数の法則によって将来の期待値を算定する手法です。

「投資シミュレーションプログラム」を使えば、投資の期待リターンとリスクと投資期間を入力することで、将来の資産額を計算することが出来ます。

長期投資でリスクは低減されない

今回行うシミュレーションは、投資対象をFXとした場合(期待リターン0%、リスク10%と仮定)と、インデックス投信に分散投資した場合(期待リターン4.57%、リスク12.8%)の2つのケースについて、1年・10年・30年の各投資期間で、将来時点で確定する投資収益の期待値とリスクを計算してみます。

インデックス投信に分散投資、といってもアセット・アロケーションは無限にありますが、ここでは日本の年金運用の基本ポートフォリオと同じ資産配分で行うものと仮定します。

シミュレーション結果は以下のとおりです。

FX(期待リターン0%、リスク10%)に投資した場合

1年後

  • リターンの期待値は0%
  • リスク(標準偏差)は10%
  • シャープレシオは0
  • 1年あたりの平均リターンは0%

10年後

  • リターンの期待値は0%
  • リスク(標準偏差)は32%
  • シャープレシオは0
  • 1年あたりの平均リターンは0%

30年後

  • リターンの期待値は1%
  • リスク(標準偏差)は61%
  • シャープレシオは0.02
  • 1年あたりの平均リターンは0%
FX(期待リターン0%、リスク10%)に投資した場合、長期になってもリターンは(ほぼ)増えませんが、リスクは長期になればなるほど大きくなっていることがわかります。

インデックスに分散投資(期待リターン4.57%、リスク12.8%)した場合

1年後

  • リターンの期待値は5%
  • リスク(標準偏差)は12%
  • シャープレシオは0.4
  • 1年あたりの平均リターンは5%

10年後

  • リターンの期待値は56%
  • リスク(標準偏差)は63%
  • シャープレシオは0.8
  • 1年あたりの平均リターンは5%

30年後

  • リターンの期待値は286%
  • リスク(標準偏差)は298%
  • シャープレシオは1
  • 1年あたりの平均リターンは5%
インデックスに分散投資(期待リターン4.57%、リスク12.8%)した場合、長期になればなるほどリターンは大きくなっていますが、それに伴いリスクも大きくなっていることがわかります。ちなみに、投資のリスクとリターンの比率を示すシャープレシオは、投資が長期化するほど高まります。
上記分析に用いたRのコードは以下のとおりです。
#FX
#投資年数(自由入力)
Year<-1
#シミュレーション回数(自由入力、多いほど正確だが時間がかかる)
sample<-10000
#シミュレーション数値を格納する行列
A<-matrix(0,sample,Year+1)
#初期投資額を入力(自由入力)
initial<-100
#シミュレーション数値に初期投資額を入力
A[,1]<-initial
#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-0/100
#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-10/100
#シミュレーション開始
set.seed(123)
#sampleの計算は明示せずベクトル化
for ( t in 1:Year){
    #今年の資産額=前年の資産額*(1+収益率)
    A[,t+1]<-A[,t]*(1+rnorm(sample,mu,sigma))
}
#シミュレーション結果の期待値を表示
paste(Year,"年後の資産額の平均は",mean(A[,Year+1]),"万円")
paste(Year,"年後の累積リターンの平均は",(mean(A[,Year+1])/initial-1)*100,"%")
paste(Year,"年後の累積リターンの標準偏差は",sd(A[,Year+1])/initial*100,"%")
paste(Year,"年間の1年あたり 平均収益率は",((mean(A[,Year+1])/initial)^(1/Year)-1)*100,"%")
#インデックス
#投資年数(自由入力)
Year<-1
#シミュレーション回数(自由入力、多いほど正確だが時間がかかる)
sample<-10000
#シミュレーション数値を格納する行列
A<-matrix(0,sample,Year+1)
#初期投資額を入力(自由入力)
initial<-100
#シミュレーション数値に初期投資額を入力
A[,1]<-initial
#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-4.57/100
#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-12.8/100
#シミュレーション開始
set.seed(123)
#sampleの計算は明示せずベクトル化
for ( t in 1:Year){
    #今年の資産額=前年の資産額*(1+収益率)
    A[,t+1]<-A[,t]*(1+rnorm(sample,mu,sigma))
}
#シミュレーション結果の期待値を表示
paste(Year,"年後の資産額の平均は",mean(A[,Year+1]),"万円")
paste(Year,"年後の累積リターンの平均は",(mean(A[,Year+1])/initial-1)*100,"%")
paste(Year,"年後の累積リターンの標準偏差は",sd(A[,Year+1])/initial*100,"%")
paste(Year,"年間の1年あたり 平均収益率は",((mean(A[,Year+1])/initial)^(1/Year)-1)*100,"%")

考察

FXでもインデックス投資でも、投資が長期になればなるほど、リターンもリスクも大きくなることがわかりました。
本記事の主張を再度述べると、「長期投資をしてもリスクは低くならず、むしろ高まる」ということです。
ちなみに、上記インデックス投資のシミュレーションを図示すると以下のようになります。青い線の1つ1つがシミュレートした資産額の変動であり、長期になればなるほど期待値(赤線)からのブレ(リスク)が大きくなっていることがわかります。

まとめ

投資シミュレーションプログラムによる予測の結果、投資期間が長期になるほど、将来時点でのリターンのブレは大きくなることがわかりました。
つまり「長期投資はリスクを低減する」という主張は、リスクを収益率のブレと解釈する限り、正しくありません。
この点に関しては多くの文献で誤解を招く表現がされているので、十分ご注意下さい。

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d.id=a,e=c.getElementsByTagName(“body”)[0],e.appendChild(d))})
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投資シミュレーションプログラムを高速化してみた

こんにちは、毛糸です。

先日、投資の将来予測を行うためのRプログラム「投資シミュレーションプログラム」を公開しました。
>>投資シミュレーションプログラムを作ってみた【Rでプログラミング】

このプログラムを用いて、年金の将来予測を行ったり、FXで億り人になれる確率を計算したりしました。

>>将来の年金積立金の状況と損失確率をシミュレーションしてみた【モンテカルロ・シミュレーション】

>>FXの期待リターン、億り人になれる確率、破産する確率【モンテカルロ・シミュレーション】

「投資シミュレーションプログラム」を使ってみる中で、より「速く」計算するための改善策を思いついたのでメモしておきます。

本記事では投資シミュレーションプログラム1.1(2019年5月29日現在の最新版)の内容を説明します。

Rプログラムを速くするための方法:ベクトル化

統計プログラミング言語Rは、ベクトル演算を高速で行える言語として知られています。

ここではベクトルを「数値やモノ(オブジェクト)を並べたもの」と理解しておけば十分です。

ベクトル演算が高速で行える、とは、具体的には、for文などを用いて一つ一つの対象(オブジェクト)を順繰りに処理していくよりも、ベクトルというまとまりに対して一括で処理を行うほうが速い、ということです。

投資シミュレーションプログラムでは、乱数をサンプル数×年数の数だけ発生させ、

  1. あるサンプルについて、各年の資産額をfor文で計算して
  2. その処理をサンプル数の数だけfor文で繰り返す
という、2重のfor文構造になっています。
しかし、Rはfor文よりもベクトルとして計算したほうが速いため、for文をベクトル演算で置き換えれば、高速化が可能なのです。

投資シミュレーションプログラムのベクトル化

投資シミュレーションプログラムは、年ごとに資産額を計算し、それをサンプルの数だけ繰り返すという方法をとっています。
このうち、年ごとの計算については、前年の資産額に収益率を乗じて当年の資産額を算出しているため、年ごとに資産額を計算する必要があり、for文を使うことを回避できません。
しかし、サンプル数分の繰り返しについては、サンプル一つ一つを順繰りに計算するのではなく、これをベクトル化してやることで、for文を回避することが可能です。

下記に示す投資シミュレーションプログラム1.1は資産額をベクトル化して計算することで、サンプルの繰り返し計算を回避しています。

#投資年数(自由入力)
Year<-40
#シミュレーション回数(自由入力、多いほど正確だが時間がかかる)
sample<-100000
#シミュレーション数値を格納する行列
A<-matrix(0,sample,Year+1)
#初期投資額を入力(自由入力)
initial<-2000
#シミュレーション数値に初期投資額を入力
A[,1]<-initial
#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-7/100
#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-12.88/100
#シミュレーション開始
#sampleの計算は明示せずベクトル化
for ( t in 1:Year){
    #今年の資産額=前年の資産額*(1+収益率)
    A[,t+1]<-A[,t]*(1+rnorm(sample,mu,sigma))
}
#シミュレーション結果の期待値を表示
paste(Year,"年後の資産額の期待値は",mean(A[,Year+1]))

投資シミュレーションプログラム1.0と1.1の処理時間の比較

ベクトル化によりどれくらい高速化されたのか検証してみましょう。

R onlineでは実行時間が自動計測されますので、これを利用します(手持ちのPCで実行する場合はtitocライブラリを使ったりsystem.timeを使ってください)。

サンプル数100,000(10万)回のシミュレーションで、for文を使って計算するVer.1.0と、ベクトル演算を行うVer.1.1を比較すると、以下のようになりました。

投資シミュレーションプログラムVer.1.0(for文による繰り返し計算)

Absolute running time(絶対実行時間)は、17.18秒でした。

投資シミュレーションプログラムVer.1.1(ベクトル演算)

Absolute running time(絶対実行時間)は、1.46秒でした。

Ver.1.0からVer1.1に改善した場合の処理速度は1/10以上に縮まりました、驚異的な改善です。

まとめ

Rというプログラミング言語はベクトル演算を得意としており、for文をベクトル演算に書き換えられれば大幅な効率化に繋がります。

「動けばOK」という段階から一歩進んで、より速いプログラムを目指したいと思います。

本記事は、以下の書籍を参考にしました。Rを用いたデータ分析や投資意思決定に役立つ知識が豊富に紹介されており、とてもおすすめです。

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将来の年金積立金の状況と損失確率をシミュレーションしてみた【モンテカルロ・シミュレーション】

こんにちは、毛糸です。

先日発表された金融審議会市場ワーキング・グループの報告書案「高齢社会における資産形成・管理」(以下「報告書案」、外部リンク)は、老後に年金を頼り生活するという前提を否定するかのような内容と受け取られ、話題になっています。

この報告書案を読まれた方の中には「年金なんてこれからどんどん給付額が減っていくから当てにならない!」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

実際に将来の給付額がどうなるかというのは、人口動態や賃金・物価上昇率など、多くの要因に左右されるため、現時点で確定的なことを述べることは出来ません。

しかし、年金積立金の運用という観点から、金融データと確率論に基づき年金ポートフォリオの将来をシミュレーションすることは可能です。

本記事では年金積立金の基本ポートフォリオに関する将来予測を、モンテカルロ・シミュレーションに基づいて行ってみたいと思います。
参考記事:投資シミュレーションプログラムを作ってみた【Rでプログラミング】

本記事をお読みいただくことで、将来の年金積立金がいくらになるのか、そのリスクはどのくらいか、年金運用が損失を出す確率はどのくらいかといった情報を知ることが出来ます。

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年金積立金の基本ポートフォリオ

私たちが毎月支払っている年金保険料は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という機関によって運用が行われています。

GPIFは年金支払のための原資を効率的に運用するため、株式や債券などのリスク資産に投資を行っています。

GPIFは年金ポートフォリオとして

  • 国内債券
  • 国内株式
  • 外国債券
  • 外国株式
の4つの資産クラスに投資を行うことを取り決めており、その割合も決まっています。以下はGPIFのサイト「基本ポートフォリオの考え方」(サイト)からの引用です。

この「基本ポートフォリオ」は、賃金上昇率+アルファを確保しつつ、リスクを最小限にして運用されることを目的としており、期待リターンは年4.75%、標準偏差で測ったリスクは年12.8%となっています。
参考記事:年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた

今回はこのデータをもとに、将来の年金がどのくらいの規模になるのか、損失が出る確率はどのくらいなのかを計算してみたいと思います。

年金ポートフォリオのモンテカルロ・シミュレーション

年金積立金ポートフォリオが将来いくらくらいになるのか予測してみましょう。

年金運用の期待リターンは年4.57%、標準偏差で測ったリスクは年12.8%として、毎年の投資収益率が正規分布に従うと仮定した場合に、将来の年金ポートフォリオの金額を乱数を用いて予測します。

シミュレーションには「投資シミュレーションプログラム」を使います。
参考記事:投資シミュレーションプログラムを作ってみた【Rでプログラミング】

投資年数Yearは、1年、25年、50年、100年を入力し、それぞれの年数経過後の資産額をシミュレーションします。

投資の期待リターンはGPIFの基本ポートフォリオの期待リターン4.57%(4.57/100)を、投資のリスクは基本ポートフォリオのリスク(標準偏差)12.8%(12.8/100)を入力します。

#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-4.57/100
#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-12.8/100

以下では1年後、25年後、50年後、100年後の将来における年金積立金の期待値と、標準偏差で測ったリスク、当初資金を下回る確率(損失確率)、損失が発生した場合の平均損失額(これを期待ショートフォールとよびます)を計算します。

なお、シミュレーションにあたって分析を単純化するために、運用以外の資金の出入りはないものとし、リバランスは考慮しないものとします。また、当初資金は記事執筆時点直近で報告された運用額である150兆6,630億円(150.6630兆円)とします。

1年後の年金のシミュレーション結果

  • 1年後の年金積立金の期待値は157兆円
  • 標準偏差で測ったリスクは19兆円
  • 損失確率は35%
  • 損失発生時の平均損失額(期待ショートフォール)は13兆円
1年後に損失が発生する確率が35%もあるのは驚きですが、損失が発生してもその期待値は13兆円なので、あまり大きな額ではありません。

25年後の年金のシミュレーション結果

  • 25年後の年金積立金の期待値は467兆円
  • 標準偏差で測ったリスクは313兆円
  • 損失確率は6%
  • 損失発生時の平均損失額(期待ショートフォール)は32兆円

25年後には年金積立金の期待値は現在の倍以上になります。

50年後の年金のシミュレーション結果

  • 50年後の年金積立金の期待値は1,422兆円
  • 標準偏差で測ったリスクは1,476兆円
  • 損失確率は2%
  • 損失発生時の平均損失額(期待ショートフォール)は39兆円
50年後に損失が発生する確率は2%であり、50年に一度と言われるような金融危機が起こらない限りは発生し得ないレベルです。

100年後の年金のシミュレーション結果

  • 100年後の年金積立金の期待値は13,389兆円
  • 標準偏差で測ったリスクは25,865兆円
  • 損失確率は0.2%
  • 損失発生時の平均損失額(期待ショートフォール)は52兆円
100年後に損失を抱える確率はほぼゼロです。

まとめと考察

投資シミュレーションプログラムを用いて、長期の年金運用の成績を予測してみました。
投資年数が長くなるほど将来の資産額の期待値は大きくなることがわかりましたが、一方でリスクも大きくなるようです。
年金運用で損失が出る確率は運用が長期になるほど低くなりますが、来年損失が出る確率は35%もあり、25年程度の運用でも6%の確率の確率で運用損が生じることもわかりました。
年金制度の将来を占うにあたり、今回の分析はやや設定を単純化しすぎていますが、たとえば今後年金運用が損失を出すようなことがあっても「統計的にはまぁ損失もありうるよね」と納得する材料にはなるのではないでしょうか。
年金制度はその存続も含め、今後も議論になるものと思われますが、多角的な視点から考えてみたいと思います。
なお、本記事の分析を行うに際して、下記の書籍を参考にしました。

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【投信定点観測】11週目|ファーウェイ・ショック

こんにちは、毛糸です。

【投信定点観測】2019年5月第4週(スタートから11週目)の損益の報告です。

今週末における投資総額は156万円、含み損益は-13,892円、損益率は-0.89%(年率-2.89%)です。

損益状況

商品ごとの時価は以下のようになりました。【投信定点観測】開始から11週間経過時の含み損益は-13,892で、先週から11,714円のマイナスです。

損益率に直すとこんな感じです。今週末の損益率は-0.89%(年率換算で-2.89%)です。

年率換算の損益率の計算式が誤っていたので、今回修正しました。

インデックス投資信託の振り返り:株式総崩れとREIT続伸

株安が止まりません。

中国通信機器メーカーファーウェイが米国市場から閉め出されるというニュースが報じられ、同社と取引のある企業の株価が下落。その不安感が相場全体に広がり暗雲が立ち込めています。

先進国株式は今週-2.16%の下落、中国を含む新興国株式も-2.80%の下落と大きなダメージです。

他方、J-REITは更に上昇し、週間+1.34%の伸びです。都市圏のオフィス需要が高水準で推移し、世界的な金利低下の流れが追い風となり、資金流入が続いているようです。

株式市場全体が悲観的なムードですが、【投信定点観測】で実践するインデックス投資は、市場の短期的な上げ下げに惑わされずに投資を続けていくことで、市場全体の成長を享受する方法です。

市場全体が下げているときは、裏を返せば安く資産を購入できるチャンスでもあります。

好景気になってから投資するのでは遅いので、是非このタイミングでインデックス投信の積立投資を初めてみてください。

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ロボアドバイザーの振り返り:THEO(テオ)とWealthNavi(ウェルスナビ)のリスク

ロボアドバイザーのTHEO(テオ)は今週-0.43%(含み損益-1.70%)、WealthNavi(ウェルスナビ)は今週-1.37%(含み損益-2.01%)でした。

【投信定点観測】を開始して11週目ということで、両者のリスク(リターンの標準偏差)を算出してみたところ、

  • WealthNaviのリスクは1.70%/週
  • THEOのリスクは1.59%/週
でした。
含み損益率ベースではWealthNaviの方が高いので、いまのところTHEOの方がローリスク・ローリターンであるといえます。
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THEO

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WEALTHNAVI(ウェルスナビ)

アクティブファンドの振り返り:ひふみとセゾン、明暗分かれる

日本株式に投資するアクティブファンドとして、【投信定点観測】ではひふみ投信とセゾン資産形成の達人ファンドに投資しています。

現状、両者の明暗ははっきりしており、セゾン投信のパフォーマンスの高さが圧倒的です。

両者のリスク(リターンの標準偏差)を算出してみたところ、

  • セゾン資産形成の達人のリスクは2.10%/週
  • ひふみのリスクは1.90%/週
となっており、ひふみの方がローリスク・ローリターンです。

アクティブファンドはインデックスを上回る超過収益を得ることを目的としており、今の所、その目標は達成できていますので、今後の運用結果がたのしみです。

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まとめ

【投信定点観測】を始めて11週、市場は冷え込み続けており、投資パフォーマンスは悪化しています。

投資初期では良好な成績を収めていた株式が、一転大きく毀損しており、特定の資産クラスに資金を集中させることの恐ろしさを実感します。

投資信託は手軽に分散投資が行える優れた金融商品ですが、市場全体の変動にはどうしてもつられてしまいます。

そんな状況であっても、異なる変動性を持つ別の資産クラスに広く投資することで、資産全体の変動性を抑えることが可能です。

複数の資産クラスに分散することをアセット・アロケーション(資産配分)といいますが、投資成果の大部分はこのアセット・アロケーションによって決まるとも言われています。

アセット・アロケーションの重要性は以下の書籍でも強調されています。

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d.id=a,e=c.getElementsByTagName(“body”)[0],e.appendChild(d))})
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引き続き積立投資の状況をリポートして参りますので、もしよろしければSNSでのシェアよろしくお願い致します!

投資シミュレーションプログラムを作ってみた【Rでプログラミング】

こんにちは、毛糸です。

投資にはリスクがあります。

自分の資産が将来どれくらいの金額になるのか、リタイアまでにどれくらいの資産を築けるのか、といった疑問に、現時点で確定した答えを出すのは不可能です。

しかし、投資データと統計学を用いて、将来をシミュレーションすることは可能です。

私は大学院で金融工学を専攻し、公認会計士として日々数字と向き合う仕事をしながら、プログラミングを勉強して投資意思決定に使えるツールを開発して遊んでいます。

今回はそんな日々の勉強の成果として「投資シミュレーションプログラム」を作ってみました。

将来に渡って投資を行っていった場合に、数年・数十年後にいくらの資産が築けるかをシミュレーションするプログラムです。

この記事では「投資シミュレーションプログラム」のコードをすべて公開し、その使いかたを解説します。

統計プログラミング言語Rと、オンラインでの利用

統計プログラミング言語Rは、データサイエンスで用いられるプログラミング言語です。

統計解析や計算を簡単に行うことができ、計算機としても使えます。

本記事ではプログラミング言語Rを用いて、投資シミュレーションプレミアムを作成します。

Rを使うには、本来RのソフトウェアをPCにインストールする必要がありますが、今回はちょっとした計算に使うのみなので、ブラウザ上で完結するR onlineを利用します。
参考記事:ブラウザ上でRプログラミング(R online、Rオンラインを使う方法)

R onlineのサイト(リンク)でコードを打ち込めば、すぐにRによる計算が実行できます。

試しにサイト上で
1+1
と入力し、[Run it]してみると、すぐに下の方に計算結果が表示されます。

以下、このR onlineを使って、「投資シミュレーションプログラム」作成します。

すでに打ち込んである内容は、すべて削除して構いません。

投資シミュレーションプログラムの流れとモンテカルロ・シミュレーション

「投資シミュレーションプログラム」は、以下のような流れでシミュレーションを行い、将来の投資額の予測値や確率分布を算出します。
  1. 投資のリターンやリスクなどの前提条件を入力する
  2. 時間ステップ(年単位、日単位など)ごとに「乱数」を発生させ、ランダムな収益率をシミュレーションする
  3. 複利計算により将来の資産額を算出する
  4. 以上を数千、数万回繰り返し、確率論的に将来資産額の推定値を算出し確率分布を予測する
このように、乱数を用いて将来を予測しシミュレーションする方法を「モンテカルロ・シミュレーション(モンテカルロ法)」といいます。

モンテカルロ・シミュレーションは金融実務において非常に重要な手法として認知されており、金融機関においてデリバティブの価格計算やリスク管理などに用いられています。

「投資シミュレーションプログラム」はモンテカルロ・シミュレーションを使って、将来の資産額がどれくらいになるかを予測するプログラムです。

「投資シミュレーションプログラム」のコードは以下にすべて記しており、コードをR onlineにコピー&ペーストするだけでシミュレーションを行うことが出来ます。

モンテカルロ法は統計学・確率論を基礎として、プログラミング言語を用いながら、ファイナンスの知識をフル活用する高度な手法です。下記書籍はそんなモンテカルロ法を基礎から学べる良書ですので、気になる方は是非手にとってみてください(本書が理解できれば投資シミュレーションプログラムはゼロから自作できます)。


インプット情報の入力

まず、シミュレーションに必要な情報を入力します。

投資年数を入力します。以下では年単位で入力することとし、40年間の投資をシミュレーションしてみますが、自由に変更して構いません。

#投資年数(自由入力)
Year<-40

シミュレーション回数を入力します。今回シミュレーションに使用するのは金融工学で用いられる「モンテカルロ法」という手法で、統計学の「大数の法則」に従っています。シミュレーション回数が多いほど「正確な」計算ができますが、計算に時間がかかるようになります。100回や1000回程度だと、シミュレーションの都度、結果がばらつきます。

#シミュレーション回数(自由入力、多いほど正確だが時間がかかる)
sample<-10000

「投資シミュレーションプログラム」では毎年のリターンが確率的に決まるような状況で、資産額がどのように変化するかをシミュレーションするものです。そのために、シミュレーションの数値を格納する「箱」を用意し、ここに数値を格納します。「箱」は数学用語でいうところの行列にあたります。

#シミュレーション数値を格納する行列
A<-matrix(0,sample,Year+1)

初期投資額を入力します。投資元本(元手)は自由に決めて構いません。単位も問いません(今回は2000万円のつもりで2000を入力します)。

#初期投資額を入力(自由入力)
initial<-2000

先ほど作成したシミュレーション数値格納用の「箱」に初期投資額を代入します。

#シミュレーション数値に初期投資額を入力
A[,1]<-initial

投資の期待リターンを入力します。ここでは一年あたりの期待収益率を入力します。今回は投資の年あたり期待リターンを7%として計算します。

#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-7/100

投資のリスクを入力します。今回は米国株式に連動して値動きする投資信託VTIのリスク(標準偏差)としての概算値12.88%(12.88/100)を入力します(参考ページリンク)。

#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-12.88/100

「投資シミュレーションプログラム」では、各年の投資収益率が既に入力したリターンとリスクに基づいた正規分布に従うと仮定し、正規分布に従う確率変数(乱数)を多数発生させて将来を予測します。Rではrnorm()で正規分布に従う乱数を生成することが出来ます。この正規乱数を、投資年数×シミュレーション回数の分だけ作ります。

#乱数を生成(ランダムな投資収益率)
x<-rnorm(sample*Year,mu,sigma)

次に、生成した乱数を計算に適した行列形式に整えます。

#乱数(ランダムな収益率)を行列形式に変換
z<-matrix(x,sample,Year)

ではシミュレーションを初めましょう。シミュレーションはsample回行います。各シミュレーションにおいて、1年ごとに資産額を算出します。今年の資産額=前年の資産額×(1+収益率)で計算できます。この計算をRのfor文(繰り返し文)を用いて行います。

#シミュレーション開始
for (s in 1:sample){
        for ( t in 1:Year){
            #今年の資産額=前年の資産額*(1+収益率)
            A[s,t+1]<-A[s,t]*(1+z[s,t])
        }
}

シミュレーションの結果、つまり投資期間経過後の資産額はA[,Year+1]という「箱」に収められています。

シミュレーションでは、良い投資結果を収めたシナリオもあれば、ほとんど儲からなかったケースもあります。全体的な「傾向」を知るためには、シミュレーション結果の平均や中央値を計算します。

#シミュレーション結果の期待値を表示
paste(Year,"年後の資産額の期待値は",mean(A[,Year+1]))
#シミュレーション結果の中央値を表示
paste(Year,"年後の資産額の中央値は",median(A[,Year+1]))

投資期間経過後の資産額はA[,Year+1]に格納されていますので、ここから将来の資産額の分布を用いた様々な確率の計算が可能です。

たとえば将来の資産額が初期投資額を下回るような確率(つまり投資で損失が発生する確率)も計算できます。

#損する確率を表示
paste("損失を被る確率は",length(A[,Year+1][A[,Year+1]<initial])/sample)
ヒストグラムを描くことで、将来の資産額の確率分布をビジュアル的に知ることも出来ます。
#将来の資産額の確率分布(ヒストグラム)を表示
hist(A[,Year+1])

この結果は乱数を用いたものなので、このプログラムを走らせるたびに結果が変わります。乱数の変動性を取り除きたい(つまりより高い精度で計算したい)場合は、sampleの数を増やしてください。

今回の例では、年あたりの収益率が期待リターン7%、リスク(標準偏差)12.88%の正規分布に従うような投資機会に、当初一括で2,000万円を投資した場合に、40年後の資産額の期待値が約3億円となることがわかりました。

まとめ

モンテカルロ・シミュレーションで将来の資産額を推計する「投資シミュレーションプログラム」を作成しました。
以下がそのコードの全体像です。
#投資年数(自由入力)
Year<-40
#シミュレーション回数(自由入力、多いほど正確だが時間がかかる)
sample<-10000
#シミュレーション数値を格納する行列
A<-matrix(0,sample,Year+1)
#初期投資額を入力(自由入力)
initial<-2000
#シミュレーション数値に初期投資額を入力
A[,1]<-initial
#期待リターン(期待収益率μ、自由入力)
mu<-7/100
#リスク(標準偏差σ、自由入力)
sigma<-12.88/100
#乱数を生成(ランダムな投資収益率)
x<-rnorm(sample*Year,mu,sigma)
#乱数(ランダムな収益率)を行列形式に変換
z<-matrix(x,sample,Year)
#シミュレーション開始
for (s in 1:sample){
        for ( t in 1:Year){
            #今年の資産額=前年の資産額*(1+収益率)
            A[s,t+1]<-A[s,t]*(1+z[s,t])
        }
}
#シミュレーション結果の期待値を表示
paste(Year,"年後の資産額の期待値は",mean(A[,Year+1]))
#シミュレーション結果の中央値を表示
paste(Year,"年後の資産額の中央値は",median(A[,Year+1]))
#損する確率を表示
paste("損失を被る確率は",length(A[,Year+1][A[,Year+1]<initial])/sample)
#将来の資産額の確率分布(ヒストグラム)を表示
hist(A[,Year+1])
このプログラムを使うことで、将来の資産額の推計につかったり、将来資産を10倍にするために必要なリターンを探したり、投資で損失が出る確率を知ってリスク管理に活かすことも出来ます。
今後このプログラムを更に発展させていきたいと思います。

もし「こんな使い方もできる!」「こんな内容も知れたらいいな」といったアイデアがあれば、是非教えてください

参考文献

「投資シミュレーションプログラム」はモンテカルロ・シミュレーションという手法に基づく予測を行っております。モンテカルロ・シミュレーションを投資に活用するためには、統計学・プログラム・ファイナンスの知識が必要になりますが、下記書籍はそれらを必要な範囲で解説しており、優れた良書です。

プログラミング言語Rを使ってファイナンスや投資の問題を分析するテキストとして、下記が参考になります。

年金が「目標を達成できない確率」を統計プログラミング言語Rで計算してみた

こんにちは、毛糸です。

前回、年金ポートフォリオのリスクとリターンを、統計プログラミング言語Rを使って計算してみました。
参考記事:年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた

今回は前回のコードを少し応用して、私たちの年金ポートフォリオが「目標を達成できない確率」を計算してみたいと思います。

年金運用の目標

私たちの年金資産の運用を所管する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、私たちの年金が安定的かつ効率的に運用されるようなポートフォリオを組み、年金資産を運用しています。

「基本ポートフォリオの考え方」(外部リンク)に記載されている通り、2014年には年金運用の中期目標が見直され、以下のような考え方のもと運用が行われることとなりました。

年金積立金の運用は(中略)財政の現況及び見通しを踏まえ、保険給付に必要な流動性を確保しつつ、長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたものをいう。)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、積立金の管理及び運用における長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、これに基づき管理を行うこと。

ここに書いてあるとおり、年金運用は資産の運用利回り(リターン)から名目賃金上昇率を控除した実質的な運用利回りを1.7%確保することを目標としています。

本記事では統計プログラミング言語Rを用いて、年金運用がこの目標を達成できない確率を計算してみようと思います。

Rの使いかたに関しては前回の記事「年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた」を参照するか、もしくはより深い理解をしたい方には、下記書籍をおすすめします。

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d.id=a,e=c.getElementsByTagName(“body”)[0],e.appendChild(d))})
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年金ポートフォリオと名目賃金上昇率

「基本ポートフォリオの考え方」(外部リンク)で提供されている「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更(2014年10月31日)」[PDF:249KB](以下の画像は断りがなければこちらからの引用です)には、年金ポートフォリオが投資する各資産の期待リターンと名目賃金上昇率が載っています。

Rに以下のように入力し、リターンと賃金上昇率のベクトル(期待リターンベクトル)を作成します。

#各資産クラスの期待リターン(実質、経済中位) 

mu<-c(2.6/100, 6.0/100, 3.7/100, 6.4/100, 1.1/100,2.8/100)

同様に、各資産と賃金上昇率のリスク(標準偏差)と相関についても、以下のように入力します。

#各資産クラスの分散(標準偏差の2乗) 

sigma<-c(4.7/100, 25.1/100, 12.6/100, 27.3/100, 0.5/100,1.9/100) 

#相関行列

Rho<-rbind(

     c(1,-0.16,0.25,0.09,0.12,0.18),

     c(-0.16,1,0.04,0.64,-0.1,0.12),

     c(0.25,0.04,1,0.57,0.15,0.07),

     c(0.09,0.64,0.57,1,-0.14,0.10),

     c(0.12,-0.1,-0.15,-0.14,1,0.35),

     c(0.18,0.12,0.07,0.10,0.35,1))

年金ポートフォリオの実質リターン

年金ポートフォリオは、以下のような資産配分で投資が行われます。
  • 国内債券(期待リターン(r_1 =2.6%))に35%(これを( w_1)とおく)
  • 国内株式(期待リターン(r_2 =6.0%))に25%(これを( w_2)とおく)
  • 外国債券(期待リターン(r_3 =3.7%))に15%(これを( w_3)とおく)
  • 外国株式(期待リターン(r_4 =6.4%))に25%(これを( w_4)とおく)
  • 短期資産(期待リターン(r_5 =1.1%))に0%(これを( w_5)とおく)
このとき年金ポートフォリオの期待リターン(mu_{PF} )は

[ begin{split}
mu_{PF}=sum_{i=1}^5 w_i r_i
end{split} ]と書けます。

実質リターンはここから名目賃金上昇率(これを( r_w)とします)を差し引けばよいので、年金ポートフォリオの実質期待リターン( mu_{Real})は

[ begin{split}
mu_{Real}=mu_{PF}-r_w
end{split} ]となります。

Rではこれを以下のように記述します。

#ポートフォリオから名目賃金上昇率を控除する実質ポートフォリオのウエイト

weight_Real<-c(0.35,0.25,0.15,0.25,0,-1)

#ポートフォリオから名目賃金上昇率を控除した実質リターン

(mu_Real<-weight_Real%*%mu)

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年金ポートフォリオの実質リスク(標準偏差)

同様に、リスク(標準偏差)についても計算します。

前回の記事「年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた」と同じく、分散ベクトルと共分散行列から、分散共分散行列を作成します。

Rでは以下のように記述します。

#実質標準偏差
Var_Real<-weight_Real%*%Sigma%*%weight_Real
#ポートフォリオのリスク(標準偏差)
sigma_Real<-Var_Real^0.5
これでポートフォリオの実質リスク(標準偏差)が計算できました。

年金ポートフォリオの目標が達成できない確率と下方確率

各資産の収益率と賃金上昇率が、以上で述べたような期待リターンベクトルと分散共分散行列をもつ多次元正規分布に従うと仮定すると、年金ポートフォリオの実質収益率も正規分布に従うことがわかります。

正規分布の性質や計算方法について詳しく知りたい方は、下記参考文献を参照してください。

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b[a]=b[a]||function(){arguments.currentScript=c.currentScript
||c.scripts[c.scripts.length-2];(b[a].q=b[a].q||[]).push(arguments)};
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msmaflink({“n”:”統計学入門”,”b”:””,”t”:””,”d”:”https://images-fe.ssl-images-amazon.com”,”c_p”:””,”p”:[“/images/I/512H1E9ARDL.jpg”],”u”:{“u”:”https://www.amazon.co.jp/%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%AD%A6%E5%85%A5%E9%96%80-%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%AD%A6%E2%85%A0-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E6%95%99%E9%A4%8A%E5%AD%A6%E9%83%A8%E7%B5%B1%E8%A8%88%E5%AD%A6%E6%95%99%E5%AE%A4/dp/4130420658″,”t”:”amazon”,”r_v”:””},”aid”:{“amazon”:”1251300″,”rakuten”:”1249750″,”yahoo”:”1251299″},”eid”:”A0r5B”});

年金ポートフォリオの実質リターン(名目リターンから賃金上昇率を控除したもの)を( r_{Real})とすると、( r_{Real})は平均( mu_{Real})、分散(sigma_{Real}^2 )の正規分布に従います。

したがって、年金ポートフォリオが目標となる実質利回り1.7%を達成できない確率( P(r_{Real}<1.7%))は、計算以下のように計算できます。

#目標達成できない確率
pnorm(1.7/100,mean=mu_Real,sd=sigma_Real)
結果は49.8%でした。
目標を達成できない確率が約半分というのはオカシイと思われるかもしれませんが、この目標は期待リターンが1.7%を上回るようなギリギリのラインとして設定されたものなので、こういう結果になって当然です。
なお、資料には名目リターンが賃金上昇率を下回る確率(下方確率)も記載されています。
こちらは実質利回り( r_{Real})が0以下となる確率( P(r_{Real}<0))を意味するので、以下のような計算で求められます。
#下方確率
pnorm(0,mean=mu_Real,sd=sigma_Real)

計算結果は0.444(44.4%)で、上記資料と一致しています。

この確率は名目リターンが賃金上昇率を下回る確率であり、運用によって給付の伸びを賄えない状況ということです。

まとめ

年金ポートフォリオが運用目標利回りである1.7%を超えられない確率は49.8%でした。

また、名目リターンが賃金上昇率に達しない確率(下方確率)は44.4%でした。

年金に関しては、最近金融庁が示した報告書でその制度の存続性に疑問が投げかけられており、議論の的となっています。
参考記事:【年金は頼れない?】「高齢社会における資産形成・管理」を読んだあとに私たちが取るべき行動

年金制度の今後について議論する際には、本記事のような科学的・数理的検知からの判断も考慮できるとよいのではないでしょうか。

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【疑うことはコスト】他人の仕事を疑う前に確認すべき5つのこと

こんにちは、毛糸です。

先日読んだ本『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』に「疑うことはコストである」という考え方が述べられています。
相手の言うことをいちいち疑って確認をとっていたら、時間とコストがかかり、組織運営のスピードが失われます。
変化の激しい現代においてビジネスで勝ち残るためには、「疑うことはコスト」と考えて疑いを排除することで、迅速な意思決定をする必要があります。
とはいえ、自分が作業している中で、他者の仕事や成果物に疑義を抱いてしまう場面は多々あります。
今回はそういうシーンに出くわしたとき、他者を疑う前に確認すべき5つことについて、まとめてみたいと思います。

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関連する文書やルールを確認する

企業には業務上のルールがあり、それを文書化している場合があります。
大企業であれば内部統制の観点から業務ルールが明文化されていることが通常です。
もし他者の仕事に疑わしい部分を見つけたら、まずその業務に関するルールや文書を確認しましょう。
もしかしたら、その疑いは自分の理解が不十分なことに由来しているかもしれません。
人を疑う前に、まずルールを確認し、あるべき業務がどういうものであるかを確かめましょう。

同じロジックで再実施する

他者の仕事の結果が疑わしい場合、同じ前提条件でもう一度作業を振り返ってみると、自分の思い過ごしや誤解が解けることがあります。
他者の仕事に何らかの疑義がある場合、それはヒューマンエラーであることもあれば、自分の知らない手続きをしているのかもしれません。
時間はかかりますが、可能な限りで同様のロジックで再実施することで、本当に他の人がミスをしているのか、それとも自分の勘違いやケアレスミスによるものなのかが判別できます。


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以前に同じ状況や類似例がないか確認する

他人の仕事の結果がいつもと違う場合や、不自然な点がある場合、以前に同じ状況が起こっていないか、類似の例がないかを確認しましょう。
ビジネス環境が目まぐるしく移り変わる現代とはいえ、ルーティンワークであれば全く新しい状況が頻発するようなことはそうそうありません。
もし他者の仕事に疑わしい部分や不明点があったら、同様の状況が以前にも起きていないかを確認し、類似の状況を探しましょう。
もし同じような状況が起きていれば、今回も同様に対処することで問題を解決できるかもしれません。

日を置いて再度考える

もし「これは上流工程の担当者のミスでは……」と疑わしい状況に出くわしても、すぐにその人を問いただすのは良い方法とは言えません。
相手は自分の仕事を否定されたと思ってしまいますし、確認のために手を止める必要が出てきます。
もしすでに述べたような確認を行ってもなお疑念が払拭できない場合は、いったん時間をおいて、再度考えてみることをおすすめします。
もちろん緊急の仕事の場合は聞いてしまったほうがよいかもしれません。
しかし、ある程度スケジュールにバッファがあるなら、日をおいてから再考することで、新しい着眼点が得られ、問題が解決できるかもしれません。

前任者・チェック担当者に相談する

もし自分自身では解決できないようであれば、前任者やチェック担当者(レビュアー)に状況を相談してみるのも良いでしょう。
もし自分が着任して間もないような場合や、業務の進め方や内容について理解が不十分な場合には、自分より理解のある人に相談すると、問題が解決できることがあります。
もちろんこの場合は、相談相手の時間を使ってしまうことになるので、歓迎はされないかもしれません。
しかし、十分な検討をしてなお解決できない場合には、より理解ある人に助けを求めることが、結局は効率的であったりもします。


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まとめ

変化の激しい現代において「疑うことはコスト」です。
しかし、他者の仕事に疑義を抱いてしまうような状況は完全には回避できません。
そんなときは、以下の5つを実践してみてみてください。
  1. 関連する文書やルールを確認する
  2. 同じロジックで再実施する
  3. 以前に同じ状況や類似例がないか確認する
  4. 日を置いて再度考える
  5. 前任者・チェック担当者に相談する
私はこれらの項目をチェックリストにして、何か困ったとにには必ず確認するようにしています。
参考記事:チェックリストで仕事が劇的に楽になった件

これらのことを確認をすることで他の人を疑わずに済めば、余計ないざこざを回避できますし、効率的な業務運営につながります。

むやみに人を疑う前に、まずは自分自身での解決を目指しましょう。

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「複利の効果」にまつわる2つの致命的な誤解

こんにちは、毛糸です。

資産運用について勉強する際、必ずと行っていいほど目にする言葉、それが「複利の効果」です。

「複利の効果」とは、利息に利息がつくことで、資産が雪だるま式に増えていく仕組みのことで、アインシュタインはこれを「人類最大の発明」と呼んだとも言われています。

しかしこの「複利の効果」については、多くの文献で誤解を招く表現がされており、投資初心者に間違った解釈を与えています。

今回はそんな「複利の効果」にまつわる2つの致命的な誤解について説明します。

なお、本記事は下記書籍を参考にしていますので、合わせて参照してください。

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高い利回りは確定したものではない(リスクの存在)

「複利の効果」に関する文献でこんな例を見たことはないでしょうか。

  • 定期預金の年率0.01%で100万円を20年間運用しても100万2千円にしかならない
  • もし年率5%で運用できれば、20年後には265万円にもなる
こういう文献では、「複利の効果」を実感させるために、高い利回りを例に出すことが多々あります。
しかし、投資において、年利数パーセントという高い利回りを、長期に渡り安定的に実現させるのは不可能です。
投資において利回り(リターン)はリスクに見合う報酬として、期待値の意味で高くなるものです。
期待値の意味で、とは、実現するリターンは高かったり低かったリスクけれども、平均すると、という意味です。
したがって、期待値の意味でリターンが高くとも、実現するリターンが高いとは限りません。
日本株の期待リターンは5%前後と言われていますが、バブル崩壊やリーマンショックの際には-40%超のマイナスとなりましたし、
比較的期待リターンが高いと言われている新興国株式は、現在の私の投資状況においては、悲しいことにマイナスリターンとなっています。
このように、高い期待リターンが見込める資産は、マイナスになる可能性もはらんでいます。
「複利の効果」をうたうときに、高いリターンを例にしている場合は、そのリターンが安定的に得られると考えてしまいがちですが、それは大きな誤解です。


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複利によって損が増幅する可能性がある

「複利の効果」は利息に利息がつく仕組みですが、前述の通り投資にはリスクがあります。
したがって、運悪くリターンがマイナスになることもあります。
「複利の効果」は、このマイナスのリターンを増幅する作用があります。
こんな例を考えてみましょう。
100万円を投資し、ある時点で10%のリターンが得られたとしましょう。
このとき得られたリターン10万円を再投資すれば「複利の効果」が得られると考えられます。
しかし、もし次の時点で運悪くマイナスのリターンが実現した場合はどうなるでしょうか。
たとえば実現リターンが-10%であった場合には、「複利の効果」を期待して再投資した場合、110×(1-10%)=99万円になります。
一方、前期のリターン10万円を再投資せず、ポケットに入れておいた場合には、投資額は100万円×(1-10%)=90万円になりますが、ポケットの10万円と合わせて資産総額は100万円のままです。
この場合「複利の効果」を期待して再投資したのに、むしろ資産が減ってしまっています。
この例からわかることは、「複利の効果」は必ずしも資産を増やすとはかぎらず、リターンの実現値によっては、むしろ損になることもあるということです。
投資はリスクから逃れることは出来ませんから、マイナスリターンが実現する可能性も十分にあります。
「複利の効果」をうたう文献では、こういうネガティブな例には全くと言っていいほど触れていませんので、「複利の効果」は無条件に良いものと誤解しがちです。
しかし、リターンの実現地がマイナスである場合には、「複利の効果」は裏目に出るのだということを認識しておかなくてはいけません。


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まとめ

資産運用で重要な「複利の効果」に関する2つの誤解について説明しました。
「複利の効果」は利息が利息を生む大切な仕組みですが、高いリターンが安定的に獲得できるわけではなく、また運が悪ければ損を増幅する作用があります。
こうした負の側面も正しく理解しながら、資産運用と向き合っていきましょう。
以下の書籍は今回触れたような「複利の効果」の負の側面にも言及している、大変優れた投資入門書です。
資産運用の正しい理解を得たい人は、是非読んでみると良いでしょう。

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