資産運用

エンハンスト・インデックスファンド(Enhanced Index Fund, EIF)とはなにか。インデックスファンドとの2つの共通点と1つの違い。

エンハンスト・インデックスファンド(Enhanced Index Fund, EIF)というファンドをご存じでしょうか。

EIFはインデックスへの連動を基本としながら、インデックスを超えるリターンを狙うファンドのことです。

いわゆるアクティブ運用に分類されるファンドですが、インデックスファンドにも似た特徴を持っています。

本記事ではEIFの定義と、インデックスファンドとの違いについて述べます。

 

エンハンスト・インデックスファンドの定義とインデックスファンドとの違い

EIFは、インデックス構成銘柄よりも少数の銘柄で構成された、株式ポートフォリオのことを指します。

ただし、以下のような条件を満たすものとして定義されます。

  1. EIFポートフォリオの分散\(\sigma_p^2\)がインデックスの分散\(\sigma_I^2\)に近似する
  2. EIFポートフォリオの対インデックスのベータ値\(\beta_p=1\)
  3. EIFのリターンがインデックスのリターンより大きい(\(\mu_p>\mu_I\))

 

条件1.(分散がインデックスに近似)と条件2.(ベータが1)はインデックスファンドと同様です。

しかし、インデックスファンドはそのリターンがインデックスと一致するように運用されるのに対して、EIFはインデックスよりも大きなリターンを狙う点(条件3.)で、インデックスファンドと異なっています。

正のアルファを狙うという意味で、インデックス・プラスアルファ・ファンドとも呼ばれます。

 

エンハンスト・インデックスファンド(Enhanced Index Fund, EIF)はいわば「インデックスファンドの上位互換」と言ってもいいようなファンドです。

実際にそのような運用は可能なのでしょうか。

また、我々個人投資家はこういうファンドにアクセス可能、もしくは自身で組成することは可能なのでしょうか。

このような問いに対して、以下のテキストは、次のような驚くべき主張を展開しています。

結論から述べれば、長期投資の対象とする株式銘柄のユニバースを適切に設定したうえで等金額ポートフォリオを構築し、それを対象に自己充足的なリバランシングを繰り返すことにより、市場インデックスに一定水準連動し、これとほぼ等しいリスクをとりながら、リターンは事前、事後の双方において市場インデックスを凌駕して、プラスの多期間アルファを確保することができる。

テキストでは長期投資において利用可能なEIFの構築方法を示しているため、気になる方は是非チェックしてみてください。

当ブログでも詳細を発信していきますので、お楽しみに。

【再考察】外国通貨投資の期待リターン

FXや外貨預金に投資した際の期待リターンはゼロである、ということを、以下の記事で解説しました。

FXの期待リターン、億り人になれる確率、破産する確率【モンテカルロ・シミュレーション】

この記事では、裁定取引によるフォワードパリティと、カバー付き金利パリティという条件が成り立つとき、FX等の期待リターンはゼロであることを数式で示しています。

すなわち、他国通貨と自国通貨の金利差(インカムゲイン\(i_F−i_D\))と通貨高による増分(キャピタルゲイン\(E[s0,t]\))について

\begin{equation} \begin{split}
\left(i_F−i_D\right)+E[s0,t]=0
\end{split} \end{equation}

が成り立つので、外貨投資のトータルゲイン(インカムゲインとキャピタルゲインの和)はゼロと言えます。

フォワードパリティは成り立つのか?(投資家のリスク中立性の仮定は妥当か)

外貨投資の期待リターンがゼロであるという結論は、フォワードパリティとカバー付き金利パリティが成立するときに成り立つ主張です。

したがって、どちらかいずれかが成り立たない場合には、必ずしも「期待リターンはゼロ」といえなくなります。

実は、以下のフォワードパリティの式は、投資家がリスク中立的であるときには成り立ちますが、投資家がリスク回避的であるときには成り立ちません

\begin{equation} \begin{split}
F_T=E\left[S_T\right]
\end{split} \end{equation}

ここで\(S_T\)は将来時点\(T\)におけるスポット為替レート、\(F_T\)は現時点\(0\)において結ぶ時点\(T\)のフォワード為替レートで、\(E\left[\cdot\right]\)は期待値を表します。

この期待値がくせ者で、上記式は「現実世界の確率のもとでの期待値」を表しており、上記等式が成り立つのは投資家がリスク中立的(リスクに対して追加的なリターンを求めない)のときだけです。

現実の投資家はリスク回避的であり、フォワード為替レートは将来のスポットレートの「リスク調整済み確率の下での期待値\(E^*\left[\cdot\right]\)」として決まります。フォワード為替レートは将来のスポットレートにリスクプレミアム\(\Pi\)を乗せた額として決まる、と言ってもいいでしょう。

\begin{equation} \begin{split}
F_T=E^*\left[S_T\right]=E\left[S_T\right]+\Pi
\end{split} \end{equation}

このように、投資家がリスク回避的であることを前提とすると、もはや「FX等の期待リターンはゼロ」とは言えず、為替のリスクプレミアムだけ期待リターンを生むという結論が得られます。

【参考】リスクプレミアム考慮したときのFX等のリターン

フォワードパリティ

\begin{equation} \begin{split}
F_T&=E\left[S_T\right]+\Pi\\
\Leftrightarrow \frac{ F_T}{ S_0}&=E\left[\frac{ S_T}{ S_0}\right]+\frac{ \Pi}{ S_0}\\
\Leftrightarrow \frac{ F_T}{ S_0}&=E\left[1+s_{0,T}\right]+\pi
\end{split} \end{equation}

カバー付き金利パリティ

\begin{equation} \begin{split}
\frac{ F_T}{ S_0}-1\approx i_D-i_F
\end{split} \end{equation}

FX等の期待リターン(上記2式より)

\begin{equation} \begin{split}
E\left[s_{0,T}\right]+\pi=i_D-i_F\\
\Leftrightarrow E\left[s_{0,T}\right]+i_F-i_D=-\pi\\
\end{split} \end{equation}

 

通貨の期待リターンはいくらなのか

通貨の期待リターンを生むリスクプレミアム\(\pi\)はどれくらいなのでしょうか。

上記の式だけでは、リスクプレミアム\(\pi\)が正なのか負なのかもはっきりしません(仮にフォワードパリティが\(\Pi>0\)で成立するなら、FX投資の期待リターンはマイナスです。)

通貨のリスクプレミアムが存在するのかしないのか、存在するならば正なのか負なのかという問題は、いまだ解明されていないようです。

ファイナンスの教科書的な考え方では「分散投資によって避けられるリスクには、リスクプレミアムが生じない」とされます。

通貨投資も同様に、分散可能なリスクであればリスクプレミアムは発生しないはずです。

しかしながら通貨の場合にはどうしてもヘッジしきれないリスクが残るとされており、具体的には以下のような要因がリスクプレミアムを発生させるといいます。

  • 世界各国の対外債権債務の大きさ
  • 為替リターンの分散
  • 為替レートと世界マーケット・ポートフォリオとの共分散

たとえば日本の場合は、多額の対外純資産を有しており、それらのうち多くをヘッジなしで有しているため、市場取引において分散投資をしてもなお散らせないリスクが残ります。

結果として日本の投資家が対外資産投資で追う為替リスクにはプラスのプレミアムが生じます(参考文献参照)。

このように、通貨の期待リターンは必ずしもゼロであるとは言えず、世界各国の資産市場の状況を反映したリスクプレミアムを享受できる可能性があるということです。

 

参考文献

この記事は以下の書籍を参考にしました。第6章グローバル投資では、為替リスクの基本的理論や、国際投資における重要な定理(カバーつき・カバーなし金利平価や国際CAPM)が解説されており、ファイナンスの基本的な事項とともに幅広い分野を学べる良書です。

 

福田・斉藤(1997)”フォワード・ディスカウント・パズル:展望”では、本記事で扱ったような問題を、投資家のリスク回避性をはじめいくつかの視点から整理しています。

株価が2倍になる確率と1/2になる確率は同じか?

株価が2倍になる確率と1/2になる確率は同じになるのでしょうか?

株価(リターン)がランダムウォークであると仮定して、株価が2倍になる確率と1/2になる確率を計算してみます。

結論としては、両者は一致しません。

 

株価リターンのモデル化、ランダムウォーク

時点\( t\)における株価を\( S_t\)と表すことにします。現在時点は\( t=0\)と約束しましょう。現在株価は\( S_0\)と表すことができます。

時点\( t\)からほんの少し将来に向けての株価の変化を\( \mathrm{d}S_t\)と表します。\( \mathrm{d}S_t\)を\( S_t\)で割った\( \frac{ \mathrm{d}S_t}{ S_t}\)は、時点\( t\)からほんの少し将来に向けての株価リターンと解釈できます。将来に向けてのリターンですから、時点\( t\)において\( \frac{ \mathrm{d}S_t}{ S_t}\)がどんな値になるかはわからず、ランダムです(\( \frac{ \mathrm{d}S_t}{ S_t}\)は時間パラメタ\( t\)に関連した確率変数です)。

株価リターンはランダムウォークである、とよく言われますが、これを数学的に表すと、

\begin{equation} \begin{split}
\frac{ \mathrm{d}S_t}{ S_t}=\sigma \mathrm{d}z_t
\end{split} \end{equation}

となります。ここで\( \sigma\)は株価リターンの変動性を表すパラメタ(ボラティリティといい、正の定数)、\( \mathrm{d}z_t\)は「ランダムなノイズ」を表しており(標準ブラウン運動の微小増分です)、\(z_t \)は正規分布\( N(0,t)\)に従います。

株価をこのように表したとき、瞬間的な株価リターンがプラスになるかマイナスになるかは事前に予測できず、「瞬間的には」上がるか下がるかは\( \frac{ 1}{2 }\)です。

この設定のもとでは、将来時点\( t\)における株価\( S_t\)は以下のような式で表せます。

\begin{equation} \begin{split}
S_t=S_0 \mathrm{e}^{-\frac{ 1}{ 2}\sigma^2t+\sigma z_t}
\end{split} \end{equation}

この式を導くには「伊藤の公式」という確率解析の公式を利用します。計算方法は以下の記事を参照してください

伊藤の公式を直感的に理解する(追記:ブラック・ショールズモデル)

 

株価が倍になる確率、半分になる確率

さて、ここまでの準備を踏まえて「株価が2倍になる(正確には、上回る)確率」と「株価が1/2倍になる(正確には、下回る)確率」は等しいのか、計算してみましょう。

「株価が2倍になる確率」を「将来時点\( t\)における株価\( S_t\)が、現時点の株価\( S_0\)の2倍を超える(つまり\( S_t>2S_0\)となる確率」と解釈すると、以下のように計算できます。

\begin{equation} \begin{split}
P\left( S_t>2S_0\right)&=P\left( \frac{ S_t}{ S_0}>2\right)\\
&=P\left( \mathrm{e}^{-\frac{ 1}{ 2}\sigma^2t+\sigma z_t}>2\right)\\
&=P\left( -\frac{ 1}{ 2}\sigma^2t+\sigma z_t>\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left( \sigma z_t>\frac{ 1}{ 2}\sigma^2t+\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  z_t>\frac{ 1}{ 2}\sigma t+\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
\end{split} \end{equation}

\( z_t\)は正規分布\( N(0,t)\)に従う確率変数です。この確率変数には

\begin{equation} \begin{split}
P\left( z_t>a\right)=P\left( z_t<-a\right)
\end{split} \end{equation}

という性質が成り立つことが知られています。期待値が\( 0\)の正規分布はプラスとマイナスの領域が左右対称であることから来る性質です。この性質を上の式に当てはめると

\begin{equation} \begin{split}
P\left( S_t>2S_0\right)&=P\left(  z_t>\frac{ 1}{ 2}\sigma t+\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  z_t<-\frac{ 1}{ 2}\sigma t-\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  -\frac{ 1}{ 2}\sigma t+z_t<-\sigma t-\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  -\frac{ 1}{ 2}\sigma^2 t+\sigma z_t<-\sigma^2 t-\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  \mathrm{e}^{-\frac{ 1}{ 2}\sigma^2 t+\sigma z_t}<\mathrm{e}^{-\sigma t}\mathrm{e}^{\mathrm{ln}\frac{ 1}{ 2}}\right)\\
&=P\left(  \frac{ S_t}{ S_0}<\frac{ 1}{ 2}\mathrm{e}^{-\sigma t}\right)\\
&=P\left(  S_t<\frac{ 1}{ 2}S_0\mathrm{e}^{-\sigma t}\right)\\
\end{split} \end{equation}

が成り立ちます。

「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」は\( P\left(S_t<\frac{ 1}{ 2}S_0 \right)\)ですから「株価が2倍(を上回る)になる確率」とは一致しません。\(\mathrm{e}^{-\sigma t} \)が掛かっているのが余計です。

つまり、株価リターンがランダムウォークであっても、「株価が2倍(を上回る)になる確率」と「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」は一致しません。

 

どちらの確率のほうが大きいのか

「株価が2倍(を上回る)になる確率」と「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」は一致しないことはわかりましたが、どちらの確率のほうが大きいのでしょうか。

「株価が2倍(を上回る)になる確率」の途中経過を工夫すると、

\begin{equation} \begin{split}
P\left( S_t>2S_0\right)&=P\left(  z_t>\frac{ 1}{ 2}\sigma t+\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  z_t<-\frac{ 1}{ 2}\sigma t-\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  -\frac{ 1}{ 2}\sigma t+z_t<-\sigma t-\frac{ 1}{ \sigma}\mathrm{ln}2\right)\\
&<P\left(  -\frac{ 1}{ 2}\sigma^2 t+\sigma z_t<-\mathrm{ln}2\right)\\
&=P\left(  S_t<\frac{ 1}{ 2}S_0\right)\\
\end{split} \end{equation}

という不等式が導けます。つまり「株価が2倍(を上回る)になる確率」よりも「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」のほうが大きいです。

 

二つの確率が等しくなる条件

ただし、将来時点\(t \)がごく小さければ、両者は近似します。

\( t\)が十分小さい時、

\begin{equation} \begin{split}
P\left( S_t>2S_0\right)&=P\left(  S_t<\frac{ 1}{ 2}S_0\mathrm{e}^{-\sigma t}\right)\\
&\approx P\left(  S_t<\frac{ 1}{ 2}S_0\right)
\end{split} \end{equation}

が成り立ちます。

つまり、ごく短期間の話をするならば「株価が2倍(を上回る)になる確率」と「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」は近似し、\( t\to0\)の極限で両者は一致します。

 

注意

この記事では「瞬間的な株価リターンが標準ブラウン運動の微小増分の意味でランダムウォークである」という前提のもとで、「株価が2倍(を上回る)になる確率」と「株価が1/2倍(を下回る)になる確率」は一致しない(後者のほうが大きい)ことを示しました。

当然ながら、前提が変われば結論は変わります。

例えば「将来のある時点までの株価リターンがランダムウォークである」という仮定をおけば、結論は変わります(それが学術的に広く受け入れられているかは別として)。

投資理論において「唯一絶対の正解はない」ことに注意してください。

 

参考文献

会計情報で株価は予測できるのか

こんにちは、毛糸です。

会計は、企業がどのような経済活動を行っているのかを、企業外部の株主や債権者に報告するルールであり、言語でもあります。

会計が果たす役割にはいろいろあり、「自分が託したお金がどのように運用されているか」を知らせるためだったり、その企業の「価値」がどれくらいなのかを投資家が推測するためだったりします。

後者のような会計の役割を「意思決定有用性説」と呼びます。

投資の意思決定に有用であるために会計はあるのだ、ということですね。

この目的が果たされているなら、会計情報を使うことで、投資の成果の予測が出来るのではないかと考えられ、実際に多くの投資家は会計情報(利益やキャッシュフローや財務健全性など)から、投資の成果が得られそうな会社を選定しています。

一方で、ファイナンス(金融工学)の立場は、会計の果たす役割についてやや否定的です。

ファイナンスにおける「効率的市場仮説」によれば、投資家はすでに公開されている情報を用いるだけでは、超過収益は得ることが出来ないとされます。

市場に公開された情報は瞬く間に投資家の知るところとなり、その内容がポジティブならば、瞬時に株価に織り込まれ、蓋然性の高い収益機会はなくなってしまうと考えられているからです。

会計情報により株価リターンは予測できるのか、もしくは超過収益が得られるのか、という研究は、実務家・研究者を問わず多くの市場参加者が行っています。

個人的には効率的市場仮説とそこから演繹される理論体系が好きなので、これを信じていますが、実証研究では会計情報に関する多くの収益機会(会計アノマリー)の存在が指摘されています。

先入観を持たず、これらの研究を追っていきたいと思います。

GPIFがアイスクリーム会社の株に集中投資しないわけ

こんにちは、毛糸です。

先日こんなつぶやきをしました。

これはネタツイートであり、本気で「儲かる会社の株を買え!」と言っているわけではありません(#ksprとはクソリプのことです)。

RT元のGPIFのツイートでは、変動パターンの異なる2つの会社(アイスクリーム会社とおでん会社)の株を組み合わせて保有すると、投資のブレ幅が小さくなることをイメージ図で表しています。

これは投資の「分散効果」として知られており、異なるランダムな動きをまとめることで、変動性が小さくなることは数学的に証明されています。
しかしGPIFのイメージ図(下図)を見ても分かる通り、分散投資を行うことで、好成績を上げたアイスクリーム会社にのみ投資をしていた場合よりも、低いリターンになってしまします。
したがって「最初からアイスクリーム会社を買っておけば高いリターンが得られただろう!」という考えを初心者は抱きがちです。
ですが、「アイスクリーム会社が好成績だった」というのはあとになって振り返ってみて初めてわかることであって、最初からアイスクリーム会社の株価リターンが好調であるとは限らないのです。
たまたまその年が冷夏であれば、予想よりもおでん会社の株価リターンが高まるでしょうし、猛暑が予想されていても台風の影響で涼しい日が続くようなことがあるかもしれません。
個別の会社の業績や株価リターンの良し悪しを見通すことは専門家にも難しく、学術研究においても「予測」の困難性が指摘されています。
こういった予測困難性(≒リターンのランダム性)を前提にすると、分散投資により多くの銘柄に投資するのが最善であるという結論が得られます(「最善」の意味については金融経済学(Wikipedia)を参考に)。
GPIFは運用する資金を多くの資産クラス・銘柄に振り分け、分散投資を実践しています。

【参考記事】
年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた

もちろん「アイスクリーム会社を事前に発見することはできる!」と考える人も多くいて、銘柄選別により市場の「平均」よりも高いリターンを目指す「アクティブファンド」というのもあります。
いずれにせよ、事後的な情報をベースに「この株を買っておくべきだった!」などと指摘するのは完全なクソリプですので、注意しましょう。
分散投資の意義や個別株の選別の難しさについては、下記の書籍に説明があります。

分散投資の一つの実践手法であるインデックス投資については、下記の書籍がバイブル的な本であり、たいへん示唆に富む良書です。

「安全資産」という言葉の誤用について

こんにちは、毛糸です。

先日こんなツイートをしました。

本記事では「安全資産」という言葉の正しい意味を説明し、誤用例のどこが誤っているのかを解説します。

安全資産の定義

安全資産(risk free asset)は経済学やファイナンスの専門用語です。

安全資産とは、投資時点において収益(額・率)が確定している資産です。

株式などのリスクある資産は、投資時点において(資産の購入時点において)、将来いくら返ってくるかが明らかではありません。

100万円で買った株が120万円になることもあれば、80万円になってしまうこともあり、収益が確定していません。

収益が確定していない、つまり不確実であることを、「リスクがある」「リスキーだ」といいます。

安全資産とは、収益の不確実性がない資産のことであり、無リスク資産ともいいます。

金や円は安全資産?いいえ、誤用です

安全資産とはあらかじめリターンがわかっている資産ですから、以下のようなものは安全資産ではありません。

  1. 相場全体が下落しているときにこそ値上がりする資産
  2. 下落相場で買われやすい退避先資産
  3. 投資収益率のボラティリティが低い資産

相場全体が下落しているときにこそ値上がりする資産

株式相場全体がマイナスムードの時にも株価が下がりづらかったり、むしろ値上がりするような資産を、安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

相場全体の動きと、個別の資産の動きの連動性は、ベータと呼ばれます。

相場全体が下がっても、価格が上がるような資産は、負のベータを持つ資産といえますが、この場合も投資時点でリターンが確定しているわけではないので、安全資産ではありません。

下落相場で買われやすい退避先資産

金(ゴールド)や円を安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

一般用語としてなんとなく「安全」であるというニュアンスは伝わりますが、当然ながらこれらは投資時点でリターンが決まっていないので、安全資産ではありません。

投資収益率のボラティリティが低い資産

収益の変動性、つまり期待収益から上下にどれだけ変動しうるかの尺度を、ボラティリティといいます。

ボラティリティが高いということは、それだけ収益の振れ幅が大きい資産ということであり、ハイリスクです。

収益のボラティリティが小さい資産はローリスクであり、これを安全資産と称する場合がありますが、誤用です。

例えば、インフラ系企業(電気やガス)の株は従来、景気変動の影響を受けづらい銘柄をディフェンシブ銘柄として認知されていました。

しかし、某電力会社がああいうことになったこともわかるように、ボラティリティが低くとも、価格変動のリスクから完全に切り離されているわけではないので、安全資産ではありません。

安全資産は実際に存在するのか

デフォルト(貸倒れ)のない債券が唯一、安全資産です。

貸出時にリターンが決まっており、必ず返済されるので、これは定義通り、安全資産になります。

ただし、物価変動を考慮すると結論は変わります。

物価変動を考慮した場合の安全資産は、国家などのデフォルト懸念のない主体が発行する物価連動債です。

名目上の利回りが投資時点で既知の名目債は、物価変動により実質価値が上下するので、安全資産ではありません。

現在、一般市民が投資可能な物価連動国債は発行されていないですし、国家であってもデフォルト懸念がないとは言えないので、真の意味での安全資産はありません。

算術リターンと幾何リターンの違いについて

こんにちは、毛糸です。

本記事では、投資リターンの2つの概念、算術リターンと幾何リターンの違いについてまとめます。

記事中では、時点( t)における資産(株など)の価格を( S_t)と表し、算術リターンと幾何リターンの計算式の違いを説明します。

算術リターンとは

算術リターン(Arithmetric return)は、いわゆるリターン(収益率)として通常イメージするものです。

時点( t)で明らかになる算術リターン( r_t^A)は、次のように計算されます。
begin{equation} begin{split}
r_t^A=frac{ S_{t}-S_{t-1}}{S_{t-1} }=frac{ S_{t}}{S_{t-1} }-1
end{split} end{equation}

すなわり、算術リターンとは、投資額( S_{t-1} )に対する、投資額の増分( S_{t}-S_{t-1})の割合のことです。

この式を変形して得られる
begin{equation} begin{split}
R_tequiv 1+r_t^A=frac{ S_{t}}{S_{t-1} }
end{split} end{equation}は、投資が何倍になったかを示しており、( R_t)を粗収益率(グロスリターン)と呼びます。( r_t^A)は純収益率(ネットリターン)といいます。

幾何リターンとは

時点( t-1)の株価( S_{t-1})は、次の日には( S_t)に変化します。したがって、ある粗収益率( R)を用いて
begin{equation} begin{split}
S_t=S_{t-1}R_t
end{split} end{equation}と表わせます。

資産価格は負にはなりませんので、( R_t)は常に0以上の値を取ります。

ところで、自然対数の底(ネピア数)( e(=2.718cdots))は何乗しても0以上の値になることがわかっていますから、( R_t=e^x)と書いても間違いではありません。

つまり
begin{equation} begin{split}
S_t=S_{t-1}e^x
end{split} end{equation}が成り立ちます。

この( x)を決めてやれば、株価は( S_{t-1})から( S_t)に変化することがわかりますから、( x)はある意味で収益率を表しているといっても良いわけです。

この( x)をあらためて( r_t^G)と表して、
begin{equation} begin{split}
S_t=S_{t-1}e^{r_t^G}
end{split} end{equation}という関係式が成り立つとき、( r_t^G)を幾何リターン(Geometric return)といいます。

この式を変形すると
begin{equation} begin{split}
e^{r_t^G}&=frac{ S_t}{ S_{t-1}}\
Leftrightarrow r_t^G&=logleft( frac{ S_t}{ S_{t-1}}
right)end{split} end{equation}となり、対数が現れます。

幾何リターンは別名、対数リターンと呼ばれますが、それは幾何リターンが価格比( frac{ S_t}{ S_{t-1}})の対数として計算されることに由来しています。

算術リターンと幾何リターンの関係

算術リターンと幾何リターンは、いずれもリターン(収益率)を表す指標ですが、一見するとその計算方法はまるで異なっています。
しかし、実は両者には密接な関係があるのです。
数学的な話を後回しにして結論を述べると、リターンがあまり大きくないときには、
begin{equation} begin{split}
r_t^Afallingdotseq r_t^G
end{split} end{equation}つまり算術リターンと幾何リターンはほぼ同じ値になります。

証明

幾何リターンと算術リターンの定義から、
begin{equation} begin{split}
r_t^G&=logleft( frac{ S_t}{ S_{t-1}}right)\
&=logleft( 1+frac{ S_t-S_{t-1}}{ S_{t-1}}right)\
&=logleft( 1+r_t^Aright)\  end{split} end{equation}が成り立ちます。

対数関数( log(1+x))は( x)が小さいとき、( x)に近似することが知られているので、
begin{equation} begin{split}
logleft( 1+r_t^Aright)fallingdotseq r_t^A
end{split} end{equation}となり、( r_t^Afallingdotseq r_t^G )がわかります。

対数関数( log(1+x))が( x)に近似することは、対数関数をマクローリン展開することでわかります。

算術リターンと幾何リターンの性質の違い

算術リターンと幾何リターンは、リターンが小さければほぼ同じ値を取りますが、リターンが大きければその差は無視できないものになります。
たとえば暗号資産のリターンは、一日で倍増したり半減したりしますから、算術リターンと幾何リターンの違いは大きくなります。
また、投資額が0になるような最悪のケースでは、算術リターンは

begin{equation} begin{split}
r_t^A=frac{ 0-S_{t-1}}{S_{t-1} } =-100%
end{split} end{equation}と計算されるのに対して、幾何リターンは
begin{equation} begin{split}
r_t^G=logfrac{ 0}{ S_{t-1}}=-infty
end{split} end{equation}と計算され、かなり差が出ます。

以下の図は青線で算術リターンを、緑線で幾何リターンを、それぞれ表していますが、常に算術リターンのほうが大きな値を取ることがわかります。
投資成績がふるわないときは、算術リターンを使うことでマイナス幅を小さめに表現することができます。
公表されるリターンが算術リターンなのか幾何リターンなのかは、十分注意する必要があります。

「高利回りのヘッジファンド」について金融庁に問い合わせてみた

こんにちは、毛糸です。

先日、金融庁から「老後までに2,000万必要」とも読める報告書が公開され、多くの国民が投資に意識を向けています。

【参考記事】
【年金は頼れない?】「老後までに2,000万」報告書を読んだあとに私たちが取るべき行動

老後に豊かな生活を送るには「リスクをとる」必要があるということを多くの人が認識し始めていますが、同時に金融詐欺の話もちらほら聞こえてきます。

先日私の友人から「平均利回り10%超のヘッジファンドがあるんだが、どうだろう?」という相談を受けました。

ヘッジファンドとは「金融派生商品など複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとする代替投資の一つ」(Wikipedia)であり、デリバティブなどの複雑な金融商品を利用して高いリターンの獲得を目的とする基金(ファンド)や運用主体のことを言います。

調べてみるとヘッジファンドに関する情報源はいくつかあり、ヘッジファンドを比較するサイトもいくつかあります(あえてリンクは載せません)。

友人から相談を受けた(ヘッジファンド)(本記事ではカッコを付けて呼称します)についても、比較サイトにはよく取り上げられているようなので、少し調べてみました。

しかし、どうも怪しいのです……

ヘッジファンド比較サイトのランキング上位に、いくつもの疑念

ぱっと気になった点だけでも

  • 金融商品取引業者の登録がない
  • ホームページに代表者名がない
  • 本店所在地が普通のマンション
  • 投資成績などの情報は個人情報を開示して問い合わせないと入手できない
  • 個人発信と思われる口コミがほぼない
  • ファンドを標榜する合同会社に直接出資する謎スキーム

などなど、引っかかる点がたくさんあります。

友人曰く「検索上位のサイトでおすすめされているから、たくさんの閲覧者がいる信頼できる情報だよ」とのことですが、検索上位であることは法的に信頼できる情報であることを意味しません。

直接話を聞きに行きたいという話も聞いていましたが、相手が「よからぬ輩」である可能性も否めません。

そこで、金融の専門相談窓口に電話してみることにしました。

投資詐欺かも?と思ったときの相談窓口

金融サービス利用者相談室は「あやしいな」「投資しても大丈夫なのかな」といった相談にも乗ってくれる金融庁の窓口です。

金融サービス利用者相談室より

こちらに電話をかけ、(ヘッジファンド)の名称や、その情報に行き着いた経緯をお話したところ、以下のような回答が得られました。

  • 金融商品取引業者や適格機関投資家等特例業者に登録・届け出はない
  • 無登録で業務を行っている、証券投資を業として行っていない詐欺的なもの、そのいずれか
  • 個人情報を渡すことになるので、連絡したり会ったりすべきではない

平たく言うと「付き合っちゃいけない人たちの可能性が高い」ということですね。

適格機関投資家等特例業者は登録が要らない?

ヘッジファンドについては、Wikipediaに「監督官庁に届け出る義務や規制がなく」と記載されていますがこれは誤りであり、日本においては金融商品取引法で明確に規制されています。

金融商品取引法においては、いわゆるファンド業務を行う者は、金融商品取引業者の登録を行うか、適格機関投資家等特例業務の届出を行わなければいけません。

【参考】
ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)-金融庁

あるまとめサイトにはこの(ヘッジファンド)について、適格機関投資家等特例業者等で少人数にしか勧誘を行わない私募であるから、規制は受けないのだ、と書いてありましたが、もし適格機関投資家等特例業者等であるとすると金融庁のこちらのページに公開されているはずです。

しかしこの(ヘッジファンド)の名前は見つかりませんでした……

この事実を知った私の知人も、さすがに実際に会いに行くのは諦めたようです。

自分のお金と命を守るリテラシーをもとう

金融に関する規制は、我々一般市民を不慮の損害から守るための大切なルールであり、一般的な金融機関であれば法令遵守の重要性を強く認識しています。

しかし一部の悪質な(詐欺的な)集団は、「高利回り」「損失なし」といった謳い文句で消費者を煽動し、実態のない、もしくは法令に違反した形で資金を得ようとしてきます。

そうした資金は不適切な立場の人間に渡ることもあれば、実際に面会する相手がそういう立場の人間かもしれません。

「おかしいのではないか」と疑う気持ちが少し欠けるだけで、お金を、そして命をも危険に晒す可能性があることを忘れてはなりません。

「うまい話はない」とよく言われますが、これは金融経済学における無裁定の原理として知られており、この世をよく表しています。

投資について勉強するべきと感じたのはとても素晴らしいことですが、是非焦らず、きちんと勉強をして、リテラシーを高めてください。

【参考記事】
「投資しなきゃ……」焦るなキケン!

「投資しなきゃ……」焦るなキケン!

こんにちは、毛糸です。

先日、金融庁から「老後までに2,000万必要」とも読める報告書が公開され、多くの国民が投資に意識を向けています。

【参考記事】
【年金は頼れない?】「老後までに2,000万」報告書を読んだあとに私たちが取るべき行動

 
投資は正しく理解し実行すれば、資産を効率的に増やす可能性のある、魅力的な機会であり、金融理論においても「合理的な経済主体は投資を行うべき」という結論が数学的に導かれています。
 
しかしながらこの「正しく理解」というのが、実はとてもハードルの高いもののようです。

 

何に投資すべきなのか、どう勉強したら良いのか

まず、何をどう勉強し理解したら良いのかわかりません。

投資と一口に言っても、資金を投下する対象は星の数ほどあります。
 
日本の上場株式だけでも3,000社をゆうに超えますし、証券のおまとめ商品である投資信託も毎月のように新規の銘柄が生まれています。
この中から自分が儲かると思った株を好きに選んでいいよ、と言われたところで、そんな銘柄わかるわけもなく、途方に暮れてしまいます。 

私がおすすめするのは、まずFP(ファイナンシャル・プランナー)の勉強をしてみることです。

FPは家計の財産や資産運用など、お金に関する総合的なコンサルティングを行う専門職です。

そんなFPを名乗るための資格として、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士がありますが、その勉強のなかで、日常に潜む多くのお金の問題と向き合うことができます。

投資においてはリテラシー(判断能力)が重要であると言われますが、資格勉強はその分野の知識を体系的にインプットするのに適した教材を使うため、マネーリテラシーを高めるためにFP資格を目指すのはとても良い方法です。

【参考記事】
体系的インプットのための資格受験はおすすめです

分散投資を常に心がける

投資は、不確定な将来にお金を託す「リスク」のある行為です。
 
ここでいうリスクとは、将来うまくいくか、下手を打つか、現時点ではわからないという意味で、「損失の可能性」よりも広い意味です。
 
リスクは、分散投資によって低減できる、というのが、投資の原理です。
 
ときおり、虎の子の退職金を気になる会社の株に全部振り向けて、その会社が業績不調に陥った、なんていう都市伝説を聞きますが、これは分散投資を行わなかったことによる失敗です。
 
分散投資によって「たまたま」持ってる株で大儲けする確率は小さくなりますが、しかし損失を被る可能性も小さくなり、投資効率の観点からは分散はするほど好ましいという結論が出ます。
 
ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツは、投資に数学的手法を導入した先駆者として知られていますが、彼も論文の中で、もっとも「合理的な」投資戦略は、広く分散されたポートフォリオを持つことであると証明しています。
>>現代ポートフォリオ理論

投資信託を信じ、金融機関を信じるな

分散投資を手軽に行える金融商品が投資信託です。
 
下記書籍は投資信託による分散投資で、負担を抑えながら、効率的に資産運用を行う方法を詳しく説明しており、おすすめの書籍です。
 

 
資産運用を勉強したければ、こうした入門書を読んでイメージを膨らませてから行うのが良いでしょう。 

決して焦ってはいけませんし、金融機関に駆け込んでもいけません。

金融機関は営利企業であり、儲けを出すことを目的に活動しています。

したがって、彼らの勧める商品は、購入者が儲かること以前に、金融機関が儲かることが前提になっています。

最近は購入者の利益と金融機関の利益が同じ方向を向くように規制がしかれつつありますが、しかし基本的には、金融機関の商品はあまりおすすめできません。

下記書籍は、タイトルの割に中身がかなりまともで驚いたのですが、その中に「金融機関から買うべき金融商品はない」とすら書かれています(笑)

まとめ

インターネットには投資に関する情報が溢れかえっており、本屋さんに行けばズラーッと投資本が並んでいます。

この中から自分にあった投資商品を見つけるのは、容易なことではありません。

しかし、焦って投資を行おうとすると、小賢しい奴らの格好の的になります。

投資をしなければ、お金が減ることはありません。

でも焦って投資をしてお金を減らすことは高い確度で起こりえます。

まず調べる、勉強する、それからでも遅くありません。

超一般化中心極限定理と株式リターン

こんにちは、毛糸です。

先日こんなつぶやきをしました。

本記事では株価リターンを題材に、確率論における中心極限定理とその一般化についてまとめます。

中心極限定理とその一般化

「独立同分布の確率変数の和は正規分布に従う」というのが中心極限定理のざっくりとした内容です。

中心極限定理は確率論における重要な定理であり、それが成立するための前提条件がもちろんあります。

ある定理を、より広い範囲に適用できるようにしたり、前提条件を緩めたりした場合にも成り立つことを示す、というのは、数学においてはよく行われます。

こうした「一般化」は中心極限定理についても存在し、一般化中心極限定理という「拡張版の中心極限定理」では、確率変数の和は正規分布ではなく、べき乗則をもつ安定分布に従うことが示されます。

正規分布に従わない株価リターン

株式リターンの実際の分布は、正規分布よりも「レアな値が出やすい」ものであり、統計的には正規分布に従いません。

【参考記事】
日本株式、米国株式、欧州株式、全世界株式の日次リターンが正規分布ではなかった件

ファイナンスの多くの理論では、リターンの正規性を仮定して結論を導いていますから、実際のリターンが正規分布ではないことについて危機感を覚える人もいるでしょう。

しかし実は正規分布でないケースにも、多くの理論は成り立ちます。

【参考記事】
株価リターンが正規分布でなくてもファイナンス理論は成り立ちます!

べき乗則と一般化中心極限定理

正規分布でなければ何なのだ、ということで注目されているのが、「べき乗則」を持つ分布です。

リターンが正規分布に従うとき、「レアな」リターンが実現する確率は、期待リターンから遠くなればなるほど急激に減っていきます。

しかし実際には、「レアな」リターンはそれほど急激に減っていくものではなく、「べき乗則」というゆったりとした減り方をしているという研究があります。

一般化中心極限定理の帰結として得られる安定分布はこのべき乗則に則った確率分布であり、実際の金融データへの当てはまりの良さが期待されています。

冒頭で述べた超一般化中心極限定理は、これを更に広範囲に拡張した定理のようです。