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資産運用


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投資信託はインデックスか、アクティブか。日経ヴェリタスの記事を読み解く

こんにちは、毛糸です。

投資信託の愛好家には、

アクティブ型投資信託の多くはインデックスに勝てない

という主張をする方が多くいます。
ファンドマネジャーが銘柄を選定し、売買のタイミングを図るアクティブ運用は、平均的にはインデックスを上回る成果は上げられない、という主張です。
この主張に関して、日経ヴェリタス 2019年3月31日号に興味深い記事が載っていたので、紹介します。

アクティブはインデックスに勝てないのか?

投資の分散効果や手間の最小化の観点から投資信託を選択する人達の間で、次のような主張をよく目にします。

アクティブ型投資信託の多くはインデックスに勝てない

例えば、インデックス投資の入門書であり、優れた解説書である『お金は寝かせて増やしなさい』には、

大半の投資信託が市場平均のインデックスに負けてしまうという結果が、古今東西明らかになっています。

と書かれています。

大手投信評価会社モーニングスターの2016年の分析でも、

2014年、2015年と2年連続で40%を下回り、2016年も9月末までの年初来で39%と低迷している。

という結果が出ています。

このように、アクティブ型投資信託は、少なくともインデックスに「常勝」する存在ではないことが、データから明らかになっています。

では、直近のデータまで含めた成績はどうなっているのでしょうか。

インデックス優位の常識を疑う

日経ヴェリタス 2019年3月31日号は「インデックス優位」という主張に対し「二元論で投信を評価するのは少々乱暴」と述べています。

記事では運用期間5年以上の追加型株式投信について運用成果をまとめており、その結果、5年、10年のリターンはアクティブ型がインデックス型を上回っていることが明らかになっています。

(出典:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO42785400S9A320C1000000/)

特に中小型株投信のリターンが大きく、記事ではインデックスの3倍近い信託報酬を控除してもなお収益を稼いでいることを強調しています。

また、日本株式以外の資産クラスについても、例えば新興国債券については、アクティブ型がインデックス型の成績を上回っていることが明らかになっています。

記事では、インデックスかアクティブかの二元論ではなく、どんな分析・情報が投資家にとって有用なのか議論をすべきと締めくくっており、インデックス優位という「常識」に疑問を投げかけています。

結局、インデックスか、アクティブか

金融工学・ファイナンスの標準的な枠組みにおいて、「最適」なポートフォリオは広く分散されたものであるべき、という結論が出ています

CAPM(資本資産評価モデル)やその派生形・拡張系の多くは、市場ポートフォリオと呼ばれる極めて広範な分散ポートフォリオに投資することが、投資家の効用を最大化させることを証明しています。

したがって、金融工学が依拠する前提に立てば、広く分散されたポートフォリオとしてインデックスを保有することは一定の合理性があります。

ただし、金融工学が依拠する前提が現実に成り立っていないことも十分にありえるため、現実的にはインデックスが唯一絶対の投資手法であるとは言えません

また、インデックスかアクティブを過去データから分析する際も、過去の実績がそのまま将来にも当てはまるとは限らないため、過去データによる結論を一般論として解釈するのも危険です。

将来の予測ができず、投資の成果も確率的に決まる以上、ある一期間のデータを取り上げて、勝った負けたというのはナンセンスです。

より科学的に、統計的に立証されたアプローチにのっとった分析を行うことが重要です。

まとめ

アクティブはインデックスに勝るか。

その問いかけに対する答えは、過去の特定の期間データを分析するだけでは、結論づけることはできません。

統計的科学的に、一歩進んだ分析が必要です。

少なくとも「インデックス優位」という「常識」を疑うことを気づかせてくれた日経ヴェリタス 2019年3月31日号の記事は、一読に値するものでしょう。

なお、インデックス投資に関する基本的な事項を学ぶための教科書としては、下記の本をおすすめしておきます。

レバレッジETFのブルベアショートが必ずしも儲からない理由を数式で示す

こんにちは、毛糸です。

先日こんなつぶやきを見つけました。

この戦略が「けっこうな利回りになる」のは、偶然なのか、それとも市場原理に基づく収益機会なのか、

金融工学で大学院まで出てる毛糸は大変気になりましたので、少し掘り下げて考えてみます。

結論から言うと、レバETFのブルベアショートは必ず儲かる戦略ではありません

この理由を、今回は数式で示します

レバレッジETFとはなにか?(レバレッジとインバース、ブルとベア)

そもそもレバレッジETF(レバETF)とはなんでしょうか?

レバレッジETFとは、ある指数(TOPIXやS&Pなど)の日次騰落率の2倍の騰落率となるよう設計されたETFのことです。

日経225が今日2%上昇したとき、日経レバレッジETFは4%上昇する、というイメージです。

レバレッジETFの逆パターンもあります。

ある指数(TOPIXやS&Pなど)の日次騰落率の-2倍の騰落率となるよう設計されたETFがあり、これを(ダブル)インバースETFといいます。

日経225が今日2%上昇したとき、日経ダブルインバースETFは4%下落する(−4%上昇する)、というイメージです。

レバレッジETFをブル、インバースETFをベア、と呼ぶこともあります。

ブル(雄牛)は角を上へ突き上げるイメージから上昇を、ベア(熊)は爪を下へひっかくイメージから下落を象徴しています。

まとめです。

  • レバレッジETFは、指数の日次変動の2倍の動きをする
  • レバETFをブルとも言う
  • インバースETFは、指数の日次変動の−2倍の値動きをする
  • インバETFをベアとも言う
このレバ・インバETFには、日々の値動きが指数の3倍になるような商品も設計されています。

レバレッジETFのブルベアショート戦略とはなにか

では、最初に取り上げたツイートにもあった「レバETFのブルベアショート」とはどんな戦略なのでしょうか?

まず前提となるのが、「レバETFは減価する」という主張です。

レバレッジETFは長期で保有すると減価するため、長期投資に向かない、とされています。

こちらのサイトでも数値例を使って、長期投資に向かない理由を説明しています。

ここで、こんなことを思いつきます。

レバETF(ブル)とインバETF(ベア)を両方買うと、
日々の変動は完全に相殺される。
しかし、レバ・インバETFは減価するのだから、
このポートフォリオをショート(売建)することで、
リスクなしに収益が得られるのではないか?

こんな考えから生まれたのが「レバETFのブルベアショート」という戦略です。
本記事では、この戦略が「リスクなしに収益が得られる」ような取引ではないことを数式を使って説明します。

レバレッジETFはなぜ減価するのか

レバETFについて、

「日々の変動率の2倍動くのだから、長期で持っていても単純に指数の2倍になるだけでは?」

と思われる方もいるでしょう。

しかしこれは誤りです。

こちらのサイトでは「相加平均(算術平均)と相乗平均(幾何平均)」の考え方を使って、この考え方が誤りであることを説明しています。

本記事では「ETFの減価」とはどういうことか、より一般的に、数式で説明してみましょう。

レバETFが減価する(?)数学的理由

【0日目】
指数に1円を、2倍のレバETFにも同じく1円を投資することを考えます。

【1日目】
指数の変動率が\( r_1\)%だったとしましょう。

指数は変動し、\( 1+r_1\)円になります。

レバETFは変動率の2倍の値動きをするので、\( 1+2r_1\)円になります。

【2日目】
指数の変動率が\( r_2\)%だったとしましょう。

指数は変動し、\( (1+r_1)(1+r_2)=(1+r_1+r_2+r_1r_2)\)円になります。

\( 1+r_1+r_2\)円、ではありませんよ。

変動「率」は掛け算で増えていきます、複利効果というやつです。

\( r_1r_2\)の項が、複利効果を表しています。

レバETFは変動率の2倍の値動きをするので、\( (1+2r_1)(1+2r_2)=(1+2r_1+2r_2+4r_1r_2)\)円になります。

この式を少し変形して

\[ \begin{split}
1+2r_1+2r_2+4r_1r_2=1+2(r_1+r_2+r_1r_2)+2r_1r_2
\end{split} \]

と考えてみましょう。

\( (r_1+r_2+r_1r_2)\)は2日目までの指数の変動率ですから、

レバETFの変動率=\(1+2\)指数の変動率\(+2r_1r_2 \)

という関係にあります。

この式からわかることは、

2日間のレバETFの変動率は、2日間の指数の変動率と\( 2r_1r_2\)だけズレる

ということです。

さらに言えば、\( r_1\)と\( r_2\)の符号が逆の場合、\( 2r_1r_2\)の符号はマイナスになるので、

レバETFの変動率<\(1+2\)指数の変動率

となります。

\( r_1\)と\( r_2\)の符号が逆の場合、つまり上げと下げが交互に来た場合、レバETFの変動率は指数の変動率の2倍を下回ります

これが減価の正体です。

一方、\( r_1\)と\( r_2\)の符号が同じ場合、つまり上げ・下げが繰り返した場合、

レバETFの変動率>\(1+2\)指数の変動率

となり、レバETFの変動率は指数の変動率の2倍を上回ります

この数学的事実から言えるのは、

そもそもレバETFが減価していくというのは確定した話ではなく

変動の方向が同じような値動きをしたときは減価せず、


文字通り収益にレバレッジがかけられる。

ということです。

「レバETFは減価する」と書いてある記事をよく見てみてください、変動率がプラスとマイナスを行き来しているような設定になっているはずです。

以下の表にまとめました。

  • 2倍レバETFを複数日保有したときの累積収益率は、指数の累積収益率の2倍にはならない
  • 両者の差はレバETFが生む複利効果を意味する
  • 指数の上げと下げが交互に起こる場合、レバETFは減価する
  • 指数の上げと下げが継続して起こる場合、レバETFは指数の2倍以上の収益を生む

レバレッジETFのブルベアショートが必ずしも儲からない理由

レバETFは必ずしも減価しない、ということが数理的にわかりました。
したがって、レバETFの減価が戦略の前提になっていたレバETFのブルベアショートも、必ずしも収益を生まないのではないか、と考えられます。
次はレバETFのブルベアショートが必ずしも収益を産まない理由を数式と図で考えてみます。

レバETFのブルベアショートが儲かる(?)数学的理由

【0日目】
指数2円をロングし、2倍のレバETFに1円、-2倍のインバETFを1円、それぞれショートする戦略することを考えます。【1日目】
指数の変動率が\( r_1\)%だったとしましょう。

指数は変動し、\( 2\times(1+r_1)=2+2r_1\)円になります。

レバETFは変動率の2倍の値動きをするので、\( 1+2r_1\)円のショート・ポジションになります。

インバETFは変動率の-2倍の値動きをするので、\( 1-2r_1\)円のショート・ポジションになります。

レバETFとインバETFのポートフォリオ(以下、ブルベアといいます)の価値は、\( 1+2r_1+1-2r_1=2\)円(ショート)です。

すでに指数とブルベアの価格差が\( 2r_1\)円出てきていますね。

\( r_1\)がプラスかマイナスかで、この戦略は利益にも損失にもなります

【2日目】
指数の変動率が\( r_2\)%だったとしましょう。

指数は変動し、\( 2\times(1+r_1)(1+r_2)=2+2r_1+2r_2+2r_1r_2\)円になります。

レバETFは変動率の2倍の値動きをするので、\( (1+2r_1)(1+2r_2)=1+2r_1+2r_2+4r_1r_2\)円(ショート)になります。

インバETFは変動率の-2倍の値動きをするので、\( (1-2r_1)(1-2r_2)=1-2r_1-2r_2+4r_1r_2\)円(ショート)になります。

レバETFとインバETFのポートフォリオ(以下、ブルベアといいます)の価値は、\( 2+8r_1r_2\)円(ショート)です。

したがって、2日目における指数とブルベアの価格差は\( 2r_1+2r_2-6r_1r_2\)円となります。

この式からわかることは、

  • 2日間のブルベアの変動率は、2日間の指数の変動率とずれ、そのズレが損益となる
  • 損益の方向(利益か損失か)は\( r_1\)と\( r_2\)の符号、つまり日次の指数変動率の方向による

ということです。

たとえば1日目の変動が1%、2日目の変動が1%であった場合には、ブルベアショート戦略から利益が得られますが、

1日目の変動が-1%、2日目の変動が-1%であった場合には、ブルベアショート戦略からは損失が生じます。

具体的に\( r_1\)と\( r_2\)がどういうときに利益になり損失になるのか、というと、

  • \( r_1>0\)かつ\( r_2>0\)、つまり上昇が続けば利益
  • \( r_1<0\)かつ\( r_2<0\)、つまり下落が続けば損失
  • それ以外の場合、変動率の大小関係による

となります。

それを表しているのが以下の図です。

横軸が1日目の指数変動率\( r_1\)、横軸が2日目の指数変動率\( r_2\)で、グラフの上側がブルベアショートで利益を獲得できるゾーン、下側が損失ゾーンです。

以上のことから、レバETFのブルベアショートは、必ずしも収益を生む戦略ではなく、指数の変動の方向によっては損失を被る可能性もある、ということがわかります。

まとめ

本記事では、レバレッジETFが減価すると言われている理由を数式で明らかにし、「レバETFのブルベアショート」という戦略が必ずしも収益を生まないことを数式とグラフで示しました。

市場で広く知られている商品の組み合わせから、安定的な高収益を生み出すことは難しいものです。

うまい話のように思えたら、きちんと検証してみる姿勢が、投資においては重要だと考えます。

分析が得意な方の中には、過去のデータ(バックテスト)からこの戦略の有効性を実証している方もいるかも知れません。

いずれ、実際のデータやモンテカルロ・シミュレーションを用いて、レバETFのブルベアショート戦略の有効性を検証する機会を儲けようと思います。

参考文献

本記事を書くに当たり、以下の本が大変参考になりました。
神谷政敏『運もお金もない人のための資産の増やし方

数式を計算するに際しては、数式処理ソフトMaximaを利用しました。
複雑な数式の計算を自動でやってくれるので、大変便利なツールです。
梅野 善雄 『いつでも・どこでも・スマホで数学! Maxima on Android活用マニュアル

ビットコインはバブルである

ビットコインが話題になっています

現在、1BTC(ビットコイン)の価格は156万円ほどです。私がビットコインに興味を持ち始めた2017年3月ころは1BTC13万円ほどでしたから、この9ヶ月で10倍以上になっています。
ビットコインを始めとする仮想通貨の価格は、何度か調整を経つつも、右肩上がりの急成長を見せています。

Twitterではビットコイン価格とチューリップ・バブルやITバブルを比較して見せるグラフが注目を集めました。

ビットコインは従来の金融資産とは違うのか

投機対象として熱狂の渦を巻き起こしているビットコインですが、その性質は株や債券といった金融資産とは、大きく性質を異にします。

そもそも「資産」という言葉には経済学的に明確な意味があります。それは、
現時点で契約を結び、将来時点で財を受け渡しする契約
です。
ここでいう財は、モノやサービスのほか、キャッシュ・フローも含むものと考えます。資産の価格は、この将来財やキャッシュ・フローを今の価値に換算したらいくらになるか、という観点で決まります。

ビットコインはバブルなのか

ビットコインの価値の源泉はキャッシュ・フローではなく、明日には今日より値上がりするだろうという「期待」であると考えることが出来ます。

この「期待」を価値の源泉とする資産は、標準的な経済学の枠組みの中で起こりうるバブルという意味で、合理的バブルと呼ばれます。

合理的バブルは欲しいと思うプレーヤーが多ければ、際限なく価格を上昇させます。

しかし、キャッシュ・フローの裏付けのない資産を(持っていても誰も保証してくれない資産を)大金をはたいて買うことに疑問を抱き始めると、バブルははじけます。いつそれが訪れるかはわかりません。しかし、いつか必ずはじけます。

まとめと経済学的補足

終わりに 

ビットコインを標準的な経済学のフレームワークで考えると、これはバブルであると考えられます

しかし、バブルがいつはじけるか、はじけた後いくらになるかは、誰にもわかりません。

ビットコインが革新的技術の産物であることは否定しようもありませんが、これを投機対象とするには、相応の覚悟が必要です。

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