株主資本コストの推定に関する近年の研究

企業が発行する株式の価値を算定するために,株主資本コストが必要になります。株主資本コストの推定は会計研究の重要なトピックの一つであり,理論面と実証面から研究が進められています。本記事では株主資本コストの推定に関する近年の研究と,それを理解するために役立つ資料・教材をまとめます。

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種類株式の評価手法を解説する書籍・参考文献

本記事では、種類株式の評価手法について書かれた書籍を紹介します。

株式会社プルータス・コンサルティング編著の以下の書籍では、第10章「ベンチャー・ファイナンスで用いられる種類株式」の中で価値評価の概要や実務上の留意点が述べられています。ベンチャー企業の株式評価においてDCF法を適用する際に、割引率としてどの程度の値を用いるべきかが書かれているのも注目です。

 

上述のプルータス社のテキストのなかで、米国公認会計士協会の以下の書籍が参考文献として取り上げられています。種類株式の評価にはオプション評価理論を用いますが、その具体的方法は、以下の書籍に開設があります。

Accounting and Valuation Guide: Valuation of Privately-Held-Company Equity Securities Issued as Compensation

 

日本公認会計士協会が発行する経営研究調査会研究報告第53号「種類株式の評価事例」も実務的に参照される資料であり、こちらもプルータス社のテキストのなかで参考文献に挙げられています。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/53_1.html

上記研究報告は普通株式の評価については解説されていません。種類株式の評価はは普通株式の評価を前提とする場合があります。普通株式の評価に関しては、日本公認会計士協会が発行する経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」が参考になります。

https://jicpa.or.jp/specialized_field/32.html

 

 

統計検定2級の概要と対策テキスト・問題集

統計検定2級を受けることに決めました。この記事では試験の概要と教材について整理します。

統計検定2級の内容とスケジュール

統計検定2級の範囲は大学1・2年次の基礎課程でカバーされる内容です。文系学部でも「確率・統計」などの名称で基礎科目に組み込まれていることもあるでしょう。詳しくは統計検定2級の案内ページから、出題範囲をご確認ください。

出題方式はマークシート式ですが、問われる内容は統計図表の読み方やら各種統計量の計算やら仮説検定やら、いろいろな問われ方がされます。

試験の実施スケジュールですが、2級はCBT方式(Computer Based Testing)になっており、受験会場に応じて随時受験が可能です。

当日持ち込み可能なものは、筆記用具と電卓と時計です。計算用紙は試験会場で配布されるそうです。こちらのQ&Aをご覧ください。

 

対策のための教科書・テキスト

試験範囲をカバーした公式問題集が出版されており、インプット教材の基本はこれになりそうです。

SNSでインプット教材について伺ったところ、東京大学出版会から出ている通称『赤本』を利用している方もいらっしゃるようです。認定テキストで理解しづらいところや網羅しきれていない箇所は、赤本を参考にしたいと思います。

 

 

また、以下のWebサイトも教材としておすすめというアドバイスをいただきました。むしろこちらをメインにしてもいいくらい、という声もあります。スマホからアクセスできるので、移動時間の勉強にもよさそうです。

統計学の時間 | 統計WEB

 

 

問題集・過去問

問題演習は試験合格の必須要件です。テキストを「ふむふむ」と眺め読み進めても知識は定着しません。

問題演習は前述の公式テキストと『赤本』に章末問題として載っているものが使えます。統計WEBにも各単元に練習問題があります。

これらのほか、過去問を使った傾向把握と演習も必須と思われます。こちらも公式問題集が出版されています。どんな出題がされるのかをイメージしながらインプットを進めることで、学習効率も高まるでしょう。

財管一致に関する論文・書籍

財管一致とは,財務会計と管理会計の情報を(何らかの意味で)一致させることをいいます。

財管一致の再定義:「財管一致の現状と課題-管理会計からの考察-」(川野2018)を読む

財管一致はEPRシステムにおいて志向された考え方でもあります。多目的に使用可能な単一の会計帳簿は大福帳と呼ばれ,ERPにおけるデータベースの基本構造にもなっています。

大福帳型データベースは単一性の原則を満たすか

財管一致は2000年代以降のEPRの普及に伴いクローズアップされてきました。近年は学術研究においても注目されているようです。以下に主な文献を挙げます。

櫻井康弘,財管一致とは何か―会計情報システムの視点から―,専修商学論集,2018(PDFリンク

中嶋隆一,統一論題「「財管一致」から国際会計基準の適用を考える」~報告の概要~,国際会計研究学会 年報 2018 年度第 1・2 合併号PDFリンク

籔 原 弘 美, 緒 方 朱 実,会計の基礎理論と情報構造からみた会計システムのアーキテクチャ── SAP と Oracle EBS の比較を通じて,UNISYS TECHNOLOGY REVIEW 第 101 号,2009(PDFリンク

高橋賢,管理会計の再構築―本質的機能とメゾ管理会計への展開,中央経済社,2019(第Ⅱ部 情報システムとしての管理会計:財管一致の会計 第6章財管一致の会計)


非加法的測度とは,加法性を単調性に変えた測度のこと

渡辺澄夫,決定理論 と ベイズ法(PDFリンク)の最終ページに

◆ 人間の主観そのものの表現のために確率測度の一般化を考えたい人は「非加法的測度」を調べてみましょう(主観ベイズ法ではありません)。

とあったので調べました。

非加法的測度とは,測度\(\mu\)の定義における加法性の条件\(\mu(A\cup B)=\mu(A)+\mu(B)\)(\(A,B\)は互いに素な可測集合)を,単調性\(A\subseteq B\Rightarrow\mu(A)\leq\mu(B)\)に置き換えたもの。\(\mu\)が測度であれば単調性を満たすので,非加法的測度は測度の一般化になっています。

ググると以下のような資料が見つかります。

渡辺 俊一 ,非加法的測度の正則性について(PDFリンク

河邊 淳, 非加法的測度と非線形積分, 数学, 2016, 68 巻, 3 号, p. 266-292(J-STAGE

非加法的測度とそれに基づく積分(非線形積分)の応用は,上記の河邊2016のp.1と参考文献をご覧ください。

非加法的測度を学ぶ前に,通常の測度論があやしいという人は,測度論を復習してからの方がいいでしょう。

確率論・への応用を見据えて測度論を学べるテキストとしては,こちらの評価が高いようです。


「フィルトレーションが関手っぽい」と思って調べたら見つけた論文

フィルトレーション(情報増大系)は時間が進むにつれて情報が増えていくさまを記述できる確率論の概念です。

時間が進むという「動き」と,情報が「増える」という動きが,フィルトレーションという概念によって結び付けられています。

いわば構造を保っているわけです。

構造を保つというキーワードから想起される数学概念には,例えば準同型があります。

このほか,圏論における関手も,構造を保つ対応付けといえます。

この意味で,フィルトレーションは関手っぽいわけですが,そうした視点からフィルトレーションを扱った論文を見つけたのでメモしておきます。

足立高德,中島克志,琉佳勳,一般化フィルトレーションと二項資産価格モデル,オペレーションズ・リサーチ,2020年7月号(参考URL

 

2n式簿記

複式簿記の「複」を「二」ととらえると,二式簿記は三式簿記や四式以上に拡張できるのではと思えてきます。

そうしたアイデアを実現させたのが井尻先生の三式簿記の理論です。

【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

四式以上への拡張も可能なのかという疑問も当然湧いて出てきます。

この疑問に対して\( 2n\)式簿記を提唱する研究を見つけたので紹介します。

大貫裕二,交換代数による多元簿記とバリュー・マネジメント, 国際P2M学会研究発表大会予稿集,2013(J-STAGE

以前このブログでテンソル簿記なる概念を披露しました。仕訳や試算表がベクトル表現できるというアイデアを,行列やテンソル(多次元配列)へと拡張するというものです。

【君の知らない複式簿記5】簿記とベクトル、行列、そしてテンソルへ

テンソル簿記は\(2^n\)式簿記をイメージしており,\(2n\)簿記とは趣が異なります。

おそらく,\(2^n\)式簿記は\(n\)組の基底のテンソル積,\(2n\)簿記は\(n\)組の基底の直和なのではないかと考えています。

この記事で述べたような「複式簿記の拡張」に関する議論は今なお続いています。以下の書籍は複式簿記の本質的な構造に鋭く切り込む良書です,是非チェックしてみてください。


深谷圏について言及がある書籍『数物系のための圏論』

梶浦『数物系のための圏論』は圏論のホモロジー代数的側面に関する入門書です。


圏論のホモロジー代数的側面がそもそも入門的内容ではないので,このテキストも相当にハイレベルですが,興味深いトピックを数多く扱っています。

本書で語られる中心的な概念は,導来圏,三角圏,\( A_\infty\)圏で,これらは物理学における弦理論の定式化に用いられます。

\( A_\infty\)圏のなかで特別なものに深谷圏があります。

深谷圏の対象は D-Brane で、射は Stringであると考えることができます。

『数物系のための圏論』では深谷圏は第1章「背景と概観」に登場するだけですが,その基礎となる\( A_\infty\)圏については第7章で詳しく論じられています。

弦理論と深谷圏について完全に理解したい方は、以下の動画をご覧ください。

梶浦『数物系のための圏論』はAmazonでは中古のプレミア価格になっています。

サイエンス社からPDF形式の電子書籍が購入できるので,こちらを利用するのが便利です。

第1章「背景と概観」では数理物理において圏論がどう使われているのかを知ることができます。

第2章「集合論,環と加群の基礎」では代数学の基礎を復習しています。

第3章「ベクトル空間と加群のホモロジー代数」ではベクトル空間とその一般化である加群について復習し,ホモロジー代数の知識を整理しています。

第4章「導来圏」以降が本格的な内容です。以下に章目次だけ挙げておきます。

第5章「三角圏」

第6章「有限次元代数の表現理論」

第7章「\( A_\infty\)圏と三角圏」

より詳細な目次はサイエンス社のHPからどうぞ。