節税効果を企業価値に織り込む2つの方法

こんにちは、毛糸です。

最近こんな本を読んでいます。

本書『Equity Valuation』は、企業が発行する株式の評価方法について、会計学と経済学の立場から論じた研究書です。

この本の中で、節税効果(タックスシールド)を企業価値に織り込む2つの方法について述べられていたので、簡単にまとめておきます。

税引き後資本コスト(WACC)による方法

1つ目の方法が、フリーキャッシュフローや営業利益などの会計数値を割り引く際に用いる資本コストとして、税引き後の割引率を用いる方法です。

フリーキャッシュフローは債権者と株主に配分されるべきキャッシュフローで、これを以下のように定義される税引き後WACC(加重平均資本コスト)で割り引くことで、企業価値を算出できます。

\begin{equation} \begin{split}
k=\frac{ E}{ D+E}k_E+\frac{ D}{ D+E}(1-\tau)k_D
\end{split} \end{equation}ここで\( E\)は株主資本、\( D\)は負債、\(k_E \)は株主資本コスト、\( k_D\)は負債コスト、\( \tau\)は税率です。

この方法はPenman2007Lundholm&Sloan2004に詳しく説明してあるようです。

修正賞味現在価値法(Adjusted NPV、APV)

節税効果を企業価値に織り込むもうひとつの方法が、修正賞味現在価値法(Adjusted Net Present Value Method, APV)です。

この方法は、節税効果(タックスシールド)を営業活動から生じるキャッシュフローの一部であるかのように扱い、割引率には税引前のWACCを使って企業価値を計算をする方法です。

Grinblatt&Titman2002にはAPVによる企業価値評価が説明されているようです。

税引き後WACCとAPVの比較

いずれの方法でも、条件が同じであれば同一の結果を導きます。

しかし、『Equity Valuation』によれば、APV法のほうがより柔軟で、企業価値の源泉となる営業活動と(税引前で)NPVがゼロの金融活動とを区別する考え方と整合しているといいます。

倒産コストを明示的に扱うような応用的なケースにおいては、税引き後WACCによる計算では企業価値に「歪み」が生じます。

しかしAPV法によれば、倒産コストも営業活動の一部として、通常の割引計算のなかで対応できるため、適用範囲が広いのです。

税引き後WACCもAPVも、企業活動をいくぶん単純化しているため、必ずしも現実の問題を正しく捉えられない場面もありますが、企業価値評価の実務においては広く用いられる方法です。

日本語のコーポレート・ファイナンスの定番テキストにも、これらの方法が説明されているので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。

【参考記事】
【ファイナンス・金融工学】おすすめテキストと有名大学の指定教科書・参考書まとめ

【君の知らない複式簿記4】簿記代数の教科書『Algebraic Models For Accounting Systems』とバランスベクトル

こんにちは、毛糸です。

【君の知らない複式簿記】シリーズ第4弾となる本記事では、複式簿記の代数的構造に関する研究書『Algebraic Models For Accounting Systems』についてお話します。

【君の知らない複式簿記】シリーズの過去記事は以下のリンクから辿ることが出来ます。

本記事は下記記事を読まれていない方にも理解いただける内容です。

【君の知らない複式簿記1】行列簿記の意義、性質、限界

【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

 

『Algebraic Models For Accounting Systems』の概略

本書『Algebraic Models For Accounting Systems』は、数学の一分野である代数学を、会計の問題に応用することを企図した学術書です。

代数学は、昨今注目を集めるコンピュータサイエンス(情報科学)にも適用され、多くの実利を生み出す数学の大分野であり、コンピュータサイエンスを学ぶ学生は代数学の基礎学習に多くの時間をかけているといいます。

代数学は、数学で扱われる集合の「構造」に関する研究分野です。

といった代数的構造は、方程式を解くといった具体的な問題において重要になるほか、解析学・幾何学といった他の数学の分野においても利用される重要な概念です。

Algebraic Models For Accounting Systems』は、そんな代数学を、会計システム(会計情報が示す状態)の研究に適用することを目的としています。

※ここでいう会計システムは、記帳ソフトやERPパッケージといった会計用ITアプリケーションの意味ではなく、入力と出力を伴う計算機構のことです。

会計情報は複式簿記という記帳規則によって生成されるため、我々はこの研究分野を「簿記代数」と呼ぶこともあります。

簿記代数では、複式簿記で示す会計システムの状態が、借方貸方の対照的表現を持つ1つのベクトルとして表されるという基本考え方を採用しています。

すなわち、借方貸方のT字形(Tフォーム)をした試算表を、以下のような縦ベクトルとして表現します。

\[ \begin{array}{cr|cr} \hline 資産 & a & 負債 & l\\ & & 純資産 & e\\ 費用 & c & 収益 & r\\ \end{array}  = \left( \begin{array}{r} a\\ -l\\ -e\\ -r\\ c \end{array} \right)\leftarrow \left( \begin{array}{c} 資産\\ 負債\\ 純資産\\ 収益\\ 費用 \end{array} \right)\]

この縦ベクトルは、各要素の和が0になるよう決まる(つまり貸借が一致する、バランスする)ようなベクトルとして定義されることから、バランスベクトルと呼ばれています。

Algebraic Models For Accounting Systems』はこのバランスベクトルを基本概念として、会計システムの代数的構造や、会計状態の移り変わりを示す有向グラフ、会計計算をモデル化したオートマトンの理論などを用いて、会計システムの代数的構造を明らかにしています。

バランスベクトルとはなにか:会計のモデル化

複式簿記を数学的に取り扱おうとする試みは過去にも行われており、有名なのは行列簿記でしょう。
【君の知らない複式簿記1】行列簿記の意義、性質、限界

行列簿記はTフォームの貸借の類別を、行列の列(column)と行(row)に対応させます。
しかしバランスベクトルは、Tフォームの貸借を、会計数値の正負に対応させます。
これによって、会計システムの状態は列ベクトルとして簡潔に表わされ、かつ代数的構造が把握しやすくなります。

会計システムの状態をバランスベクトルとして表現するということは、会計と代数を結び付けているということです。会計システムの状態をバランスベクトルとして表現し、代数の世界に引き込むことで、会計のもつ「意味」をいったん離れ、単純な代数学の問題として会計を捉えることが出来るようになります。

現実の物事のうち考察の対象としたい部分を抽出・抽象化して、数学の問題として扱うことを、モデル化と呼びますが、簿記代数における代数の利用も、まさしくモデル化にほかなりません。

Algebraic Models For Accounting Systems』というタイトルが示すように、会計システムの状態をバランスベクトルとして抽象化・モデル化して数学的に取り扱うことで、私たちは数学的に厳密な理論展開によって、その性質を調べることが出来ます。

【参考記事】
理論・モデルの意義と、理論と現実の差異を知ったあとにとるべき行動


バランスベクトルとして表現する会計状態は、「」を始めとする代数的構造を備えていることがわかります。

本書ではこのようなモデル化によって、抽象的な会計システムに関する分析を行い、会計が備えている特徴について理解を深めることができるようになっています。

【参考記事】
【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

現在、このテキストを読み解く輪読コミュニティが発足しています。

興味のある方は是非お声掛けください

【投信定点観測】21週目|インデックス、ロボアドバイザー、アクティブファンドに積立投資

こんにちは、毛糸です。

【投信定点観測】2019年8月第1週(スタートから21週目)の損益の報告です。

今週末における損益率は2.57%(年率4.56%)です。

損益状況

商品ごとの含み損益率は以下のようになりました。【投信定点観測】開始から21週間経過時の含み損益率は2.57%(年率換算で4.56%)で、先週から0.80%のプラスです。

インデックス投資信託の変動

決算シーズンを受けて買い戻しが広がり、日本株式は週間0.47%上昇、先進国株式は1.16%の上昇となりました。

ロボアドバイザーの振り返り

ロボアドバイザーのWealthNavi(ウェルスナビ)は今週+1.47%(含み損益2.87%)、THEO(テオ)は今週1.09%(含み損益1.37%)でした。

今週の含み損益ランキングは、【投信定点観測】の全14の投資先のうち、WealthNaviは第6位、THEOは第11位です。

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WEALTHNAVI(ウェルスナビ)

アクティブファンドの変動

日本株式に投資するアクティブファンドひふみ投信は、インデックスであるTOPIXの週間上昇率0.47%に対して、1.87%の上昇となり、優位なパフォーマンスを上げています。

まとめ

【投信定点観測】を始めて20週、累積リターンを見るとJ-REITの+9.11%から、日本株式(TOPIX)の-1.18%まで、資産クラスによって明暗が別れています。

日本株式については、アベノミクスで脅威的な上昇を見せたとはいえ、バブル崩壊と失われた20年のイメージが強く残っているためか、投資対象として魅力的に映らない人が多いようです。

しかし、市場の効率性を考えると、日本株式の先行きは現在の株価に反映されていると考えられるので、安易な思考で投資対象から除くのは懸命ではないように思います。

【参考記事】
「日本株に投資すると長期的には損」は本当か?

将来のリターンを予測するのは大変困難なことなので、個人投資家は広く分散した投資によって、リスクを低減するのが王道でしょう。

引き続き、投資信託による「コツコツ」積立投資で、安定的な資産形成を目指していきます。

クリーン・サープラス関係と最適配当戦略

こんにちは、毛糸です。

最近、企業の配当はどう決まるか?ということを考えています。

配当とは、企業が獲得した利益を株主に分配することであり、株主にとってみれば投資の回収を意味します。

配当は、会計的には純資産の一部を取り崩すと同時に現預金を社外に流出させるものです。

配当と純資産などの会計数値の関係は、以下の「クリーン・サープラス関係」と呼ばれる関係式で記述されます。

\begin{equation}\begin{split}
B_t=B_{t-1}+e_t-d_t
\end{split}\end{equation}

この式は、時点\(t\)における純資産の額\(B_t\)は、1期前の純資産額\(B_{t-1}\)に\(t\)期の利益\(e_t\)を加え、配当\(d_t\)を差し引いた額として決まる、という規則を示しています。

配当\(d_t\)はキャッシュフローであるのに対し、純資産額\(B_t\)や利益\(e_t\)は会計数値ですから、キャッシュフローを中心とした理論展開が行われるファイナンスと会計とは、このクリーン・サープラス関係を通じて関連付けられることになります。

ファイナンスでは配当の割引現在価値として株価が決まるという「配当割引モデル」がよく知られていますが、これをクリーン・サープラス関係と組み合わせることで、会計数値に立脚した「残余利益モデル」と呼ばれる会計数値ベースの株式評価モデルが構築できます。

配当割引にせよ残余利益モデルにせよ、配当はそれ自体が確率変数であると考えて理論展開されることが多いです。

しかしながら、配当は企業が株主との関係を伺いながら、ある意味で「適切な」水準で「決定」するものです。

したがって、その決定プロセスを考察することなしに、天下り的に確率変数(ランダムな変数)と考えてしまうのはよくないのではないかと考えています。

私はこの問題意識に基づき、企業はどんな意思決定に基づき「最適な配当戦略」を決めているのかを、経済学的観点から検証しています。

何か発見があったら、ブログでも取り上げたいと思います。

会計を数学的・経済学的に表現する方法を考える

こんにちは、毛糸です。

最近、会計学を数学の言葉で表現できないか、という問題に取り組んでいます。

本記事では数学(確率論)と会計の対比をしつつ、両者の大きな差異について述べたあと、経済学の枠組みで決まる「最適な会計」についてまとめます。

写像としての会計

会計学でもっとも有名な教科書の一つ『財務会計講義』には、

会計はこのような経済活動を所定のルールに従って測定し、その結果を報告書にとりまとめる。したがってその報告書は、経済活動という実像を計数的に描写した写像である。

と述べられています。

「写像」とは数学の言葉で、関数とほぼ同義です。

つまり数学の言葉を用いて会計を形容するということは、すでに行われていたということです。

しかしながら、「会計は写像である」という立場を発展させて、会計学を数学的に厳密に扱おうとする研究は、あまりメジャーではないようです。

「分析的会計研究」と呼ばれる会計学の一分野がありますが、これは会計とそれを取り巻く経済主体の行動について、経済学などをベースとした数理的アプローチにもとづいて分析するものです。

会計と確率論

会計を写像として捉えるとき、会計は確率論と非常に似た設定であることがわかります。

【参考記事】
確率論のアナロジーとしての会計学と、それらの重要な差異

会計規則は確率論における確率変数に対比されますが、確率論と会計学の重要な差異は、その規則・確率変数が「どういうものであるべきか」を重視するか否かにあると、私は考えます。
通常、確率論において確率変数をいかに定めるかという問題は、重視されません。
コイン投げゲームをするときに、表裏に何点を設定するかという点は、あまり大きな意味を持たないということです。
しかし会計規則は、それをどう決めるべきかが主たる関心事です。
100万円の債権を持っているときに、会計情報として100万円とは異なるテキトーな数字を認識し開示すれば、会計情報の利用者は困惑してしまうでしょう。
したがって、確率論の枠組みをそのまま会計に利用することはできません。

経済学ベースの会計

会計というルールをどう決めるか、という問題は、経済学にその答えを求められるのではないかと、私は考えています。
以下で、経済学の枠組みで会計規則がどのように決定されるかをかんたんに説明します。

まず、会計とは、経営活動\( \Omega\)から会計情報\( B\)への写像\( A:\Omega\to B\)である、と定義します。

経営活動の\( \Omega\)は、確率論における標本空間に対応するもので、抽象的な集合です。

したがって(可測性など種々の条件を満たすとして)写像\( A\)は\( B-\)値確率変数とみなせます。

また、会計情報\( b\in B\)は\( n\)次元バランスベクトル\( (a_1(\omega),\cdots,a_n(\omega))^T,\sum_k a_k=0\)として表されるものを指すとします。

バランスベクトルとは複式簿記における試算表や仕訳を抽象化した概念です。

詳細は以下の書籍を参照してください。

バランスベクトルの各要素\( a_k(\omega)\)は経営活動\( \Omega\)から会計数値\( \mathbb{R}\)への関数ですが、この関数形はのちに定義する経済主体によって決定されます。

経済主体は会計情報から効用を得ると仮定します。
\begin{equation}\begin{split}
u:({a_k})_{k=1}^n \mapsto \bar{u}\in\mathbb{R}
\end{split}\end{equation}

会計情報(たとえば売掛金が100あるという情報)それ自体は消費対象ではありませんが、会計情報を参照する契約によりこの経済主体の消費水準が決まると考えれば、彼の効用関数は会計情報の集合上で定義されると考えられます。

経済主体は効用を最大化させるように、関数としての\(  ({a_k})_{k=1}^n \)を決定します。

すなわち会計規則として採用可能なものの集合(関数の集合)\( {A}_k\)を所与としたとき
\begin{equation}\begin{split}
\max_{{a_k}\in A_k,k=1,\cdots,n}u({a_1},\cdots,{a_n})
\end{split}\end{equation}という最大化問題を考えます。

この解として得られる最適な会計情報\(  ({a^*_k})_k \)が、この経済主体が依拠したいと考える会計基準です。

会計基準が「民主的な方法」で決まるとき、市場に存在する多数の経済主体が思い描く最適な会計基準を「統合」したものが、会計基準として施行されます。

【参考記事】
「俺の会計基準」モデル|社会的選択論は会計を考えるツールになるか

以上が、経済学の枠組みで会計規則がどう決まるかという問題を考える際の基本的枠組みです。

この考え方に基づいて、なにか具体的な会計規則や現実の現象が説明できないか、引き続き研究していこうと思います。

GeoGebraで数学のグラフをきれいに描く

こんにちは、毛糸です。

「数学 グラフ」でググっていたら、良さげなツールを見つけたのでメモしておきます。

GeoGebraで関数のグラフをかんたん描画

GeoGebraは関数を指定してグラフを描画したり、平面図形などを簡単に描くことのできる、教育的なオンラインツールです。
関数が既知のものであれば、それを入力するだけで、すぐにグラフが描画されます。
授業用教材にはさまざまな分野・レベルの例題が満載で、数学を勉強し直そうと思っている人がテキスト代わりに使うのも良いでしょう。

棒グラフもかけます

私は調和級数\( \sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}\)について調べるなかで、棒グラフを描きたかったのですが、これも


BarChart({1.5,2.5,3.5,4.5,5.5},{1,1/2,1/3,1/4,1/5})

で描くことができます。前半のカッコで各バーの始点を、後半のカッコでバーの高さを規定します。
調和級数\( \sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}\)は上下から以下のように評価できます。

\begin{equation} \begin{split}
\int_1^{n+1}\frac{ dx}{ x}<\sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}<1+\int_2^{n+1}\frac{ dx}{ x-1}
\end{split} \end{equation}

これをグラフにしてみると、この関係式は一目瞭然です。

「高利回りのヘッジファンド」について金融庁に問い合わせてみた

こんにちは、毛糸です。

先日、金融庁から「老後までに2,000万必要」とも読める報告書が公開され、多くの国民が投資に意識を向けています。

【参考記事】
【年金は頼れない?】「老後までに2,000万」報告書を読んだあとに私たちが取るべき行動

老後に豊かな生活を送るには「リスクをとる」必要があるということを多くの人が認識し始めていますが、同時に金融詐欺の話もちらほら聞こえてきます。

先日私の友人から「平均利回り10%超のヘッジファンドがあるんだが、どうだろう?」という相談を受けました。

ヘッジファンドとは「金融派生商品など複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとする代替投資の一つ」(Wikipedia)であり、デリバティブなどの複雑な金融商品を利用して高いリターンの獲得を目的とする基金(ファンド)や運用主体のことを言います。

調べてみるとヘッジファンドに関する情報源はいくつかあり、ヘッジファンドを比較するサイトもいくつかあります(あえてリンクは載せません)。

友人から相談を受けた(ヘッジファンド)(本記事ではカッコを付けて呼称します)についても、比較サイトにはよく取り上げられているようなので、少し調べてみました。

しかし、どうも怪しいのです……

ヘッジファンド比較サイトのランキング上位に、いくつもの疑念

ぱっと気になった点だけでも

  • 金融商品取引業者の登録がない
  • ホームページに代表者名がない
  • 本店所在地が普通のマンション
  • 投資成績などの情報は個人情報を開示して問い合わせないと入手できない
  • 個人発信と思われる口コミがほぼない
  • ファンドを標榜する合同会社に直接出資する謎スキーム

などなど、引っかかる点がたくさんあります。

友人曰く「検索上位のサイトでおすすめされているから、たくさんの閲覧者がいる信頼できる情報だよ」とのことですが、検索上位であることは法的に信頼できる情報であることを意味しません。

直接話を聞きに行きたいという話も聞いていましたが、相手が「よからぬ輩」である可能性も否めません。

そこで、金融の専門相談窓口に電話してみることにしました。

投資詐欺かも?と思ったときの相談窓口

金融サービス利用者相談室は「あやしいな」「投資しても大丈夫なのかな」といった相談にも乗ってくれる金融庁の窓口です。

金融サービス利用者相談室より

こちらに電話をかけ、(ヘッジファンド)の名称や、その情報に行き着いた経緯をお話したところ、以下のような回答が得られました。

  • 金融商品取引業者や適格機関投資家等特例業者に登録・届け出はない
  • 無登録で業務を行っている、証券投資を業として行っていない詐欺的なもの、そのいずれか
  • 個人情報を渡すことになるので、連絡したり会ったりすべきではない

平たく言うと「付き合っちゃいけない人たちの可能性が高い」ということですね。

適格機関投資家等特例業者は登録が要らない?

ヘッジファンドについては、Wikipediaに「監督官庁に届け出る義務や規制がなく」と記載されていますがこれは誤りであり、日本においては金融商品取引法で明確に規制されています。

金融商品取引法においては、いわゆるファンド業務を行う者は、金融商品取引業者の登録を行うか、適格機関投資家等特例業務の届出を行わなければいけません。

【参考】
ファンド関連ビジネスを行う方へ(登録・届出業務について)-金融庁

あるまとめサイトにはこの(ヘッジファンド)について、適格機関投資家等特例業者等で少人数にしか勧誘を行わない私募であるから、規制は受けないのだ、と書いてありましたが、もし適格機関投資家等特例業者等であるとすると金融庁のこちらのページに公開されているはずです。

しかしこの(ヘッジファンド)の名前は見つかりませんでした……

この事実を知った私の知人も、さすがに実際に会いに行くのは諦めたようです。

自分のお金と命を守るリテラシーをもとう

金融に関する規制は、我々一般市民を不慮の損害から守るための大切なルールであり、一般的な金融機関であれば法令遵守の重要性を強く認識しています。

しかし一部の悪質な(詐欺的な)集団は、「高利回り」「損失なし」といった謳い文句で消費者を煽動し、実態のない、もしくは法令に違反した形で資金を得ようとしてきます。

そうした資金は不適切な立場の人間に渡ることもあれば、実際に面会する相手がそういう立場の人間かもしれません。

「おかしいのではないか」と疑う気持ちが少し欠けるだけで、お金を、そして命をも危険に晒す可能性があることを忘れてはなりません。

「うまい話はない」とよく言われますが、これは金融経済学における無裁定の原理として知られており、この世をよく表しています。

投資について勉強するべきと感じたのはとても素晴らしいことですが、是非焦らず、きちんと勉強をして、リテラシーを高めてください。

【参考記事】
「投資しなきゃ……」焦るなキケン!

「投資しなきゃ……」焦るなキケン!

こんにちは、毛糸です。

先日、金融庁から「老後までに2,000万必要」とも読める報告書が公開され、多くの国民が投資に意識を向けています。

【参考記事】
【年金は頼れない?】「老後までに2,000万」報告書を読んだあとに私たちが取るべき行動

 
投資は正しく理解し実行すれば、資産を効率的に増やす可能性のある、魅力的な機会であり、金融理論においても「合理的な経済主体は投資を行うべき」という結論が数学的に導かれています。
 
しかしながらこの「正しく理解」というのが、実はとてもハードルの高いもののようです。

 

何に投資すべきなのか、どう勉強したら良いのか

まず、何をどう勉強し理解したら良いのかわかりません。

投資と一口に言っても、資金を投下する対象は星の数ほどあります。
 
日本の上場株式だけでも3,000社をゆうに超えますし、証券のおまとめ商品である投資信託も毎月のように新規の銘柄が生まれています。
この中から自分が儲かると思った株を好きに選んでいいよ、と言われたところで、そんな銘柄わかるわけもなく、途方に暮れてしまいます。 

私がおすすめするのは、まずFP(ファイナンシャル・プランナー)の勉強をしてみることです。

FPは家計の財産や資産運用など、お金に関する総合的なコンサルティングを行う専門職です。

そんなFPを名乗るための資格として、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士がありますが、その勉強のなかで、日常に潜む多くのお金の問題と向き合うことができます。

投資においてはリテラシー(判断能力)が重要であると言われますが、資格勉強はその分野の知識を体系的にインプットするのに適した教材を使うため、マネーリテラシーを高めるためにFP資格を目指すのはとても良い方法です。

【参考記事】
体系的インプットのための資格受験はおすすめです

分散投資を常に心がける

投資は、不確定な将来にお金を託す「リスク」のある行為です。
 
ここでいうリスクとは、将来うまくいくか、下手を打つか、現時点ではわからないという意味で、「損失の可能性」よりも広い意味です。
 
リスクは、分散投資によって低減できる、というのが、投資の原理です。
 
ときおり、虎の子の退職金を気になる会社の株に全部振り向けて、その会社が業績不調に陥った、なんていう都市伝説を聞きますが、これは分散投資を行わなかったことによる失敗です。
 
分散投資によって「たまたま」持ってる株で大儲けする確率は小さくなりますが、しかし損失を被る可能性も小さくなり、投資効率の観点からは分散はするほど好ましいという結論が出ます。
 
ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツは、投資に数学的手法を導入した先駆者として知られていますが、彼も論文の中で、もっとも「合理的な」投資戦略は、広く分散されたポートフォリオを持つことであると証明しています。
>>現代ポートフォリオ理論

投資信託を信じ、金融機関を信じるな

分散投資を手軽に行える金融商品が投資信託です。
 
下記書籍は投資信託による分散投資で、負担を抑えながら、効率的に資産運用を行う方法を詳しく説明しており、おすすめの書籍です。
 

 
資産運用を勉強したければ、こうした入門書を読んでイメージを膨らませてから行うのが良いでしょう。 

決して焦ってはいけませんし、金融機関に駆け込んでもいけません。

金融機関は営利企業であり、儲けを出すことを目的に活動しています。

したがって、彼らの勧める商品は、購入者が儲かること以前に、金融機関が儲かることが前提になっています。

最近は購入者の利益と金融機関の利益が同じ方向を向くように規制がしかれつつありますが、しかし基本的には、金融機関の商品はあまりおすすめできません。

下記書籍は、タイトルの割に中身がかなりまともで驚いたのですが、その中に「金融機関から買うべき金融商品はない」とすら書かれています(笑)

まとめ

インターネットには投資に関する情報が溢れかえっており、本屋さんに行けばズラーッと投資本が並んでいます。

この中から自分にあった投資商品を見つけるのは、容易なことではありません。

しかし、焦って投資を行おうとすると、小賢しい奴らの格好の的になります。

投資をしなければ、お金が減ることはありません。

でも焦って投資をしてお金を減らすことは高い確度で起こりえます。

まず調べる、勉強する、それからでも遅くありません。

【投信定点観測】20週目|インデックス、ロボアドバイザー、アクティブファンドに積立投資

こんにちは、毛糸です。

【投信定点観測】2019年7月第4週(スタートから20週目)の損益の報告です。

今週末における損益率は2.57%(年率4.56%)です。

損益状況

商品ごとの含み損益率は以下のようになりました。【投信定点観測】開始から20週間経過時の含み損益率は2.57%(年率換算で4.56%)で、先週から0.80%のプラスです。

インデックス投資信託の変動

決算シーズンを受けて買い戻しが広がり、日本株式は週間0.47%上昇、先進国株式は1.16%の上昇となりました。

ロボアドバイザーの振り返り

ロボアドバイザーのWealthNavi(ウェルスナビ)は今週+1.47%(含み損益2.87%)、THEO(テオ)は今週1.09%(含み損益1.37%)でした。

今週の含み損益ランキングは、【投信定点観測】の全14の投資先のうち、WealthNaviは第6位、THEOは第11位です。

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アクティブファンドの変動

日本株式に投資するアクティブファンドひふみ投信は、インデックスであるTOPIXの週間上昇率0.47%に対して、1.87%の上昇となり、優位なパフォーマンスを上げています。

まとめ

【投信定点観測】を始めて20週、累積リターンを見るとJ-REITの+9.11%から、日本株式(TOPIX)の-1.18%まで、資産クラスによって明暗が別れています。

日本株式については、アベノミクスで脅威的な上昇を見せたとはいえ、バブル崩壊と失われた20年のイメージが強く残っているためか、投資対象として魅力的に映らない人が多いようです。

しかし、市場の効率性を考えると、日本株式の先行きは現在の株価に反映されていると考えられるので、安易な思考で投資対象から除くのは懸命ではないように思います。

【参考記事】
「日本株に投資すると長期的には損」は本当か?

将来のリターンを予測するのは大変困難なことなので、個人投資家は広く分散した投資によって、リスクを低減するのが王道でしょう。

引き続き、投資信託による「コツコツ」積立投資で、安定的な資産形成を目指していきます。

「俺の会計基準」 会計ルールはどう決まるか・どう決まるべきか

こんにちは、毛糸です。

先日こんなつぶやきをしました。

会計基準とは、企業の経済活動を会計情報として表現するためのルールのうち、社会的合意によって決まったもののことです。

社会的合意によって決まったものでなくとも、一定のコミュニティの中で有用性が認められた表現ルールというのは考えてもいいわけで、そのようなものを総称して「会計ルール」と呼ぶことにしましょう。

このような用語の使い方を約束すると、たとえば自分の中で有用と認められた会計ルールは「俺の会計基準」と呼んでもよさそうです(笑)

本記事では、会計ルールはどのように決まるのか、そしてどう決まるべきなのかということを考えてみます。

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