企業が似ているとはどういうことか

会計を企業の状態から会計情報への写像と見たとき、異なる2つの状態が「似ている」ならば、アウトプットとしての会計情報も「似ている」ことが期待されます。

本記事では企業の状態が「似ている」ことを数学的に同定式化するかについて考えます。

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実務課題を抽象化するメリット

ビジネスパーソンは、日々さまざまな課題に直面します。それは社会構造に由来する事業上の課題であったり、社外のお客さんとの関係から生じる課題であったり、組織内の人間関係に起因する課題であったりします。

業界人と話をしてみると、意外とみんな似たような課題に直面していることに気付きます。

そして多くの場合、似たような結論にたどり着いています。

このような状況は、個々の実務的課題は具体のレベルで異なってはいても、抽象的なレベルでは同じ課題に直面していることを示唆しています。抽象的なレベルで共通しているが故に、同じ業界では「あるある」と同意してくれるのです。

もし、個々の具体的課題を具体的に解決するのではなく、抽象的なレベルで解を用意しておくことができれば、多くの課題を一網打尽にできます。

MBA(経営管理修士)の課程では、そうした抽象的問題解決の訓練をしています。

座学で抽象論・原則論を学び、それをケーススタディなどに活かすことで具体化の術を学ぶのです。

実務課題を抽象的に考えることで、広範な問題に立ち向かうことができます。

【君の知らない複式簿記 補遺】会計規則の違いを自然変換であらわす

会計には、異なるルールのさまざまな会計があります。例えば、財務会計や税務会計、日本基準と国際基準、連結と単体などは、同じ取引に対して異なる会計を適用することで生じる差異です。

本記事ではこの会計ルールの違いを、圏論における「自然変換」と関連付けてみたいと思います。

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自然変換【簿記数学の基礎知識】

この記事では自然変換(natural transformation)の定義を紹介したあと、会計という関手の自然変換について触れます。

本記事の内容は以下の書籍を参考にしています。

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会計の基礎概念としての「経済主体」は会計が対象とする「系」のこと?

新版 現代会計学』では、会計を以下のように定義しています。

会計は,これらの経済主体が営む経済活動(資金の調達建物の購入など)およびこれに関連して発生する経済事象(建物の焼失,機械の損耗,商品の破損・値下りなど)について,主として貨幣額で測定・記録・報告する行為である

会計の定義のなかに「経済主体」という言葉が登場することに注目しましょう。

同書には「経済活動を営む主体を経済主体といい」とあり、この経済活動こそが会計報告の対象となるものですから、経済主体は会計における重要な概念と言えます。

マテシッチによる会計の基本的仮定やRenesの公理にも、経済主体の存在が会計の前提になっています。

経済主体は会計の「適用範囲」を左右するファクターでもあります。

通常、企業の取引には相手方、つまり異なる経済主体が存在し、その相手方との取引を一定の会計規則に当てはめて仕訳を行い、報告します。

一方、異なる経済主体間の取引であっても、それが連結グループ内の取引であれば、連結会計上の会計処理に影響しません。

このように、経済主体は会計の対象となる範囲を規定する役割を果たしています。これは自然科学における「系(system)」に近い概念です。

経済主体を考えるということは、会計モデルの系を考えるということ、なのかもしれません。

「会計上の取引ではない」を数学的に定義する

企業におけるあらゆる状態変化が会計情報に反映されるわけではありません。

たとえば、企業の役員の交代は、企業の状態を変化させる重要な理由と考えられますが、役員の交代に関する会計処理はありません。

このような「会計上の取引ではない」状態変化は、数学的にどのように表したらよいのでしょうか。

ひとつの考え方は、ある状態遷移\( f\)に関して、その会計的な表現\(\boldsymbol{v }=C_A(f)\)が恒等写像になるとき、\( f\)を「会計上の取引ではない」と定義するというものです。

【参考記事】【君の知らない複式簿記8】会計は写像であり、関手である。

\(\boldsymbol{v }=C_A(f)\)が恒等写像になるということは、\( f\)という状態遷移がおきても、会計状態には変化がない(つまり仕訳を行わない)ということです。

このような\( f\)は、少なくとも\( C_A\)という会計規則に基づく限りにおいては、会計情報にはなんら影響を及ぼさないという意味で「会計上の取引ではない」と考えられます。

このような考え方は、以下のテキスト第6章において、会計システムをオートマトンとして描く際に述べられています。

複式簿記は会計の必須要件か

複式簿記は財務諸表を作成するための基本原理であり、会計とは切っても切れない関係にあります。

しかし、会計は財務諸表による企業ディスクロージャーのみではありません。財務会計とともに会計学の中核をなす管理会計においては、必ずしも複式簿記による会計情報は用いられず、それどころか貨幣単位での測定や記録すら行われない場合があります。

【参考記事】財務会計と管理会計の相違点・共通点

このように、会計という大きなくくりで考えたときには、複式簿記を伴わない会計もメジャーな存在です。

『新版 現代会計学』では、会計を以下のように定義しています。

会計は,これらの経済主体が営む経済活動(資金の調達建物の購入など)およびこれに関連して発生する経済事象(建物の焼失,機械の損耗,商品の破損・値下りなど)について,主として貨幣額で測定・記録・報告する行為である

この定義にも「複式簿記」という言葉は出てきていません。

財務会計制度において作成が求められる財務諸表は複式簿記に則る必要がありますが、より一般の会計を考えたときには、複式簿記は必須要件ではないと言っていいでしょう。

監査の抽象化としての保証業務

監査と(公認会計士による財務諸表監査)は、企業がみずから作成した財務諸表が、一般に構成妥当と認められた企業会計の基準に準拠していることを確かめる手続きであり、「保証業務」のひとつです。

具体と抽象、という言葉を使うなら、監査というのは保証業務の具体のひとつであり、保証業務は監査の抽象化です。

監査・保証実務委員会研究報告第31号では、保証業務を次のように定義しています。

「保証業務」とは、適合する規準によって主題を測定又は評価した結果である主題情報に信頼性を付与することを目的として、業務実施者が、十分かつ適切な証拠を入手し、想定利用者(主題に責任を負う者を除く。)に対して、主題情報に関する結論を報告する業務をいう。

保証業務の対象となる主題、つまり「なにを保証するか」については、財務諸表以外のものもあります。

上記研究報告においては財務諸表のほかに、内部統制の有効性、サステナビリティに関する状況、温室効果ガスの排出に関する状況などが挙げられています。

このように、監査を抽象化した保証業務という概念を見出すことで、監査「のような」業務を考案したり、適当な仕組みを作るのに役立てたりできます。

複式簿記に関する素朴な疑問

この記事では、複式簿記に関する素朴な疑問を投げかけます。

複式簿記の利用は、現代の企業開示制度においては前提となっており、複式簿記そのもの、もしくは複式簿記に関する社会のあり方に関する疑問は、正面から答えられていない気がします。

しかし、こうした素朴な疑問に答えることは、複式簿記の構造をより深く理解する助けになると考えています。

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