2021年 6月 の投稿一覧

人的資源の会計処理について

2021年6月現在,主要な会計基準において人的資源を企業の貸借対照表に計上する(オンバランスする)会計処理は認められていません。

しかし,人材は企業の営業活動と成長に不可欠な経営資源であるため,これを会計情報として開示しないことにはひっかかりを覚えます。

この記事では人的資源の会計処理について,どういう可能性があるか考察します。

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ニーズ・ベースの研究,シーズ・ベースの研究

この記事では研究におけるニーズとシーズの考え方について説明します。シーズとは研究において解決したい課題のことであり,ニーズとは何らかの解決手段のことです。

何を解決したいのかをまず考える

教科書を読んで面白い分析手法や方法論について勉強したとします。

研究ではそれを何に使うか,何に活用するかという視点がとても大事になってきます。

何に使いたいかによって,その手法や方法論をどう改良し発展させていくか,その方向性が決まります。

重要なのは,課題意識がまずあって,それに対して道具を準備するのだということです。今できていないことを可能にするだとか,問題のあることを改善するだとか,そういう課題感に基づいて道具に向き合うことで,研究の方向性を見失わずに済みます。

課題ドリブンで学ぶ

ニーズとシーズ

「ニーズ・ベースで考える」というフレーズが,このような研究アプローチを端的に表現しています。

ニーズとは,何かを必要とする気持ちです。マーケティングの世界では,消費者が欲しいという気持ちや,消費者が解決したい課題を,ニーズという言葉で表しています。経営学における「マーケット・イン」の考え方にも通じるものがあります。

ニーズとシーズとは?マーケティングに欠かせない2つの視点を解説

ニーズ・ベースの対義語は,シーズ・ベースです。シーズ・ベースとは,すでに持っている技術や知識を活用しようというアプローチをいいます。経営学における「プロダクト・アウト」の考え方と似ています。

シーズとは種のことです。すでに持っている研究の種をまいて,それを成長させ果実を得る,そんなイメージです。

ニーズ・ベースとシーズ・ベース,どちらのアプローチによって研究を進めるかには,正解はありません。しかし,研究価値を他人に理解してもらうには,他人と共有できる課題を解決したという役立ちがあったほうが良いでしょう。

特に社会科学は,人間社会における諸課題を解決するという大きな目的がありますから,会計学や経済学の研究においてシーズばかりに目がいってしまうと,その研究は評価されにくくなるかもしれません。

 

課題,ニーズの見つけ方

自分の経験や知識のない分野でニーズを発見するのは難しいことです。必要であれば経験を広げたり知識を広げるといったことが必要になるでしょう。

しかし,ひとたび問題意識を持つことができれば,それを解決したあとの理想像を掲げることができます。そしてその理想と現状の差を知ることによって,自分の研究の方向性が見えてきます。

研究上の課題やニーズには,それを解決したいという強い熱意が必要で,それは自分の知識や経験に基づいて湧き上がってくるものです。

日頃から「課題はなんだろう?」と考え続けることで,研究テーマにふさわしい問題意識が醸成されます。

書籍『独学大全』の第7章には,ニーズの見つけ方に関連するテクニックが説明されています。「知りたいことを発見する」という章で,独学者が何を学ぶかを見つけるための方法論を解説しています。その方法論は研究課題を見つけるのにも役立ちます。


複式簿記と会計情報のフラクタル構造

複式簿記のフラクタル構造について,Twitterでこんなコメントをいただきました。

 

この記事では複式簿記のフラクタル構造についてアイデアを整理します。

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先行研究を整理するときの視点

独学大全』第10章「集めた資料を整理する」で紹介されている要素マトリクスは,集めた文献を同じ視点で読み,整理するためのテクニックです。

文献の「要素」もしくは「視点」を予め定めておき,その情報を拾うように文献を読むことによって,たくさんの論文を同じ視点・同じクオリティーで読むことが可能になります。

書籍の中で挙げられている必須のトピックは,次の3つです:

  • 著者や題名,掲載誌などの書誌情報
  • 発行年(年代順にソートするため)
  • 研究目的(仮説やリサーチクエスチョンを含む)

あまりたくさんの要素を挙げると機動力が落ちるので,自分が文献を読む目的に沿って,本当に知りたい情報のみを拾うのがいいのかもしれません。

『独学大全』その他のトピックとして10以上の視点を挙げています。私がこれから研究したいと考えている「複式簿記の数学的研究」について要素マトリクスを作るなら,次のようなトピックを挙げます:

  • 分析の手法と前提,用いる数学概念
  • 研究の著者によって書かれた意義,長所・短所
  • その研究の価値・貢献・新規性は何か
  • 残された課題・限界は何か
  • 論文に示された方法の中で厳し過ぎる条件はないか
  • 応用上の困難になりうる可能性はないか


PSYCHO-PASSの世界に近づいた「万引き察知AI」

PSYCHO-PASSというアニメをご存知でしょうか。高度に情報化した近未来の日本で,人々の心理情報から将来的な犯罪の潜在的可能性を計測することができる世界を描くSFアニメです。

PSYCHO-PASSの劇中ではドミネーターいう拳銃型の デバイスを相手に向けることで,その人の犯罪係数を測定し,一定の閾値以上の人はその場で「執行」(≒処刑)されます。デバイスを向けるだけでその人の潜在的な犯罪傾向がわかるというのはいかにも近未来的です。

PSYCHO-PASS

画像出典IGN Japan:TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』第3期の制作が決定!

こうした技術は徐々に現実のものとなっています。

万引きは捕まえずに防げ!! 怪しい動き AI大魔神が見ているゾ…

こちらの記事では万引きをしそうな人の行動をAIが察知することによって,万引きを未然に防ぐ仕組みを提案しています。万引き犯が起こしやすい行動の傾向を事前に学習させておくことによって,お客さんが不審な行動をしたときにそれを店員に通知するようなシステムです。

 

この万引き察知AIは,万引き犯が罪を犯す前にそれを察知し,犯罪に至る前に事前に予防できるという意味で,素晴らしいテクノロジーだと思います。

人間の行動のデータが蓄積され,犯罪に手を染めてしまうことを未然に察知できるというのは,まさにアニメの世界の中で犯罪係数を測定することに限りなく近いものだと思います(現実にはPSYCHO-PASSのように犯罪に至る可能性が高いという理由で「執行」されることはありませんが)。

アニメの中の未来的なテクノロジーが現実のものになろうとしているのは,とてもワクワクします。今後の技術発展に夢が膨らみますね。


物事を数学的に考える意義

すでに知られていることを数学的に表しただけでは学術的価値は見出しにくいものです。

数学という「言葉」に翻訳するだけでは単にものの見方が多様になるだけで,それ自体が新たな発見になるわけではありません。

この記事では物事を数学的に考える意義について述べます。

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書評『Algebraic Models for Accounting Systems』複式簿記と会計システムの代数構造を解明する

Algebraic Models for Accounting Systems

この記事は,複式簿記と会計システムの構造を代数的に解明する研究書『Algebraic Models for Accounting Systems』の書評です。

複式簿記の美しさや規則性の背後には,代数的な構造が見いだせます。本書はそんな複式簿記にもとづく会計システムの諸性質を証明によって明らかにするチャレンジングなテキストです。

この記事ではテキストの概要を述べたあと,章ごとに内容をまとめます。



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準同型写像【簿記数学の基礎知識】

この記事では代数学における重要概念,準同型写像(以下,準同型)について,直感的な説明と定義を与えます。

複式簿記の数学的研究において, 準同型がどのように登場するかも解説します。

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