テクノロジー

暗号のまま計算する技術〜準同型暗号に関する参考文献〜

暗号は秘密を守るための重要な技術です。

情報を伝えたい相手以外に情報を漏らさないよう、暗号は古くから工夫されてきました。

近年ではビットコインなどの暗号資産(少し前の言い方では、仮想通貨)を支える技術として、暗号は重要な役割を果たしています。

 

情報を暗号化すると、これを元に戻す(復号する)ことなしには、情報を知ることはできません。

当然、暗号化したままの情報では、検索を行ったり、計算をしたりするのは困難です。

たとえば機密情報に統計処理を行いたいとしても、暗号化してから統計処理をするわけにはいかず、どうしても機密情報そのものにアクセスせざるを得ません。

機密情報そのものを扱うということは、当然それが漏洩するリスクも負ってしまうことになります。

 

情報を加工したい、しかし情報そのものは持ちたくない。そんな課題を解決するのが「準同型暗号」という技術です。

 

準同型暗号を使うと「暗号のまま計算できる」ようになります。

機密情報そのものを持つことなく、機密情報を加工して得られる結論が手に入るのです。

 

準同型暗号は、そのアイデア自体は40年ほど前に既に認識されていましたが、ここ20年ほどで急速に研究が進んでいるようです。

 

準同型暗号に関する書籍・テキストは少なく、日本語の文献では以下のテキストに詳しい説明があります。

 

準同型暗号をわかりやすく解説した論文はいくつかあり、以下では準同型暗号の応用例についても述べられているので、とても参考になります。

 

量子コンピュータの脅威を考慮した高機能暗号:格子問題に基づく準同型暗号とその応用, 四方順司, 2019

公開鍵暗号型の高機能暗号を巡る研究動向, 清藤武暢、青野良範、四方順司, 2017

 

「暗号のまま計算できる技術」、準同型暗号。

ぜひ勉強してみてはいかがでしょうか。

ブロックチェーンは会計界のゲームチェンジャーとなるか-Deloitteのホワイトペーパーを読む-

国際的な会計・コンサルティングファームであるDeloiiteも、ブロックチェーンが会計業界に与える影響について注目しているようです。

こんなペーパーを見つけました。

Blockchain Technology A game-changer in accounting?(PDFリンク

 

ブロックチェーンは、その改ざん困難性により、会計帳簿の記録媒体として適性があると言われています。

冒頭のDeoillteのペーパーにも、次のように書いてあります。

すべての仕訳は分散化・暗号化されているため、取引を隠すために改ざんしたり破棄したりすることは事実上不可能である
Since all entries are distributed and cryptographically sealed, falsifying or destroying them to conceal activity is practically impossible.

 

特に、あるひとつの取引(商品を仕入れたり、固定資産を買ったり)について、自社と取引の相手方に加え、分散台帳たるブロックチェーンにその取引記録を記帳することで、会計情報の改ざん困難性と発見可能性を高められると言われています。

このような新しい会計の機構は「Triple-Entry bookkeeping」と呼ばれ、「三式簿記」と約されます。

ブロックチェーン的三式簿記はゲームチェンジャーとなりうるか

三式簿記は、ブロックチェーンの発明によってもたらされた新たな境地という印象が持たれますが、個人的にはあまり大それたものではない気がしています。

ブロックチェーンによる会計帳簿が改ざん困難、というのは、従来の「複式」簿記において一つの勘定だけ金額を改ざんしたら、帳簿の貸方借方が不一致になり発見される(もしくは会計システム上改ざんできない)というメカニズムと、大差ありません。

昨今の粉飾事例として見聞きするものの中には、架空の取引を関与企業が結託してでっち上げる、というようなケースも有り、このような場合にはいかにブロックチェーンに取引を記録しても、取引そのものが架空、つまり記録時点で粉飾が行われているわけですから、改ざん困難であっても意味がありません。

会計監査人は、当然会計帳簿の改ざんには目を光らせますが、それ以上に「企業が作成した会計帳簿が、現実の取引を適切に表しているか」をチェックします。

記録された情報が正しいか否かという判断は、ブロックチェーンには出来ません。

その意味でブロックチェーン的三式簿記は、帳簿の改ざんに対して一定の牽制効果は持ちつつも、会計のあり方を根本から変えるような(ましてや会計監査を不要にするような)ものではないと思われます。

三式簿記について

三式簿記については、過去の記事でも取り上げました。

【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

「三式簿記」というと、日本ではブロックチェーンとは全く別の文脈で、研究があります。

「複式簿記の拡張」という野望に満ちた偉大な研究です、興味がある方は是非調べてみてください。

30歳になって思い知る、高校数学の大切さ

こんにちは、毛糸です。

数学は科学を語る「言葉」として広く受け入れられており、物理学やAIなどのテクノロジーも数学によって記述され、その確かさが証明されます。

社会科学も昨今、数学による分析が多く取り入れられ、経済学や会計学においても数学が用いられています。

最近読んでいる会計学のテキスト『Equity Valuation』にも、数学が用いられており、論理性と検証可能性を要する議論には、数学はなくてはならないものとなっています。

【参考記事】
会計を数学的・経済学的に表現する方法を考える

 
 

AIなどのテクノロジーを理解するために数学が必要なこともあってか、社会人になってから数学を学び直す人は増えているようです。

私が参加している勉強会でも、数学を扱うセミナーは大変好評です。

【参考記事】
【数学ガール】社会人の数学再入門に

 
数学は物事を抽象化し、その構造を浮かび上がらせ、論理の力で結論を導きます。
 
こういった考え方は、数式の展開や計算にとどまらず、日常生活で多くの気づきを与えてくれます。
 
【参考記事】
 
 
私は今年30歳になりましたが、未だに研究意欲を持ち続けており、ビジネスのなかで問題意識を見つけては、これを数学的に解決しようと日夜励んでいます。
 
ときには高校数学で学んだことを復習する必要にかられたりもして、あの頃の勉強はたしかに役に立っているなぁと感慨深くなることもあります。
 
是非、日常に数学のある生活を送る人が増えてほしいと思います。
 
【参考記事】
 
 

種類株式の評価事例| 日本公認会計士協会(経営研究調査会)経営研究調査会研究報告第53号

こんにちは、毛糸です。

「種類株式」は、スタートアップや大企業の資金調達に用いられる、柔軟に設計された株式です。

種類株式は普通株式とは異なり、配当や残余財産請求権を制限したり強化したり、議決権や取得条項などを付けられるなど、各会社の都合に合わせてカスタマイズできます。

当然、種類株式に関する約束が普通株式と異なれば、価格も異なるものになります。

種類株式はその発行時に、その価値に見合う金銭を出資してもらう必要がありますので、当然種類株式の「評価」の問題が浮上します。

 日本公認会計士協会(経営研究調査会)は2013年、経営研究調査会研究報告第53号「種類株式の評価事例」を公表しました(リンク)。

「種類株式の評価事例」では日本の制度上許される種類株式の多くの条件について整理し、実際にそれらをどう評価に織り込めばよいのかを、例題を用いて説明しています。

種類株式の発行時には、どういう目的で、どういう設計にし、それをどう評価すべきかという問題を常にセットで考えねばなりません。

「種類株式の評価事例」には、その問題に対応するための指針が提供されています。

YouTubeで量子力学が勉強できる時代

こんにちは、毛糸です。

数学をライフワークとしている私ですが、この世界のルール・理(ことわり)を数理的に解き明かす物理学にも当然興味を持っています。

物理学には物理学特有の数式表現が数多く存在しています。

ブラケット記法とか、アインシュタインの縮約記法とか、物理を論じる上で都合のいい数式の記述方法には色々あります。

私は物理学をきちんと勉強したことがなかったので、それらに出くわすときはしばらく時間をとって調べる必要があります。

今日も調べ物をしていましたら、偶然こんな動画を見つけました。

予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」というチャンネルでは、大学レベルの数学と物理学を、「予備校のノリで学ぶ」ことができます。

講師のたくみ先生の講義は大変わかりやすく、教育系YouTuberとして有名なようです。

これまでは、なにか勉強をしたいと思ったら、その分野の教科書を読み、学校に通い、もしくは近くの詳しい人に聞いたり、ネットの文字情報を読み込む必要がありました。

しかし、インターネット環境が整う中で、このような動画による教材が多く提供されつつあり、学びの幅は更に広がっています。

また、SNSの発展により、同じ興味を持つ人と、物理的な距離を問わずつながることができるようになりましたし、オンラインの人間関係を発展させ気軽にリアルな勉強会を開くこともできるようになっています。

そう、現代は学びを楽しむ人にとっては、とても幸福な時代なのです。

私も自分の興味を共有したくて、勉強会を開いたりしていますが、普段の仕事だけでは得られないつながりを持つことができ、とても楽しいです。

【参考記事】
勉強会「意識高い……」「レベル高そう……」いやいや、誤解してませんか?

 

学ぶことを苦痛と思わず、知ることを純粋に楽しめるようになったら、現代社会の充実感を噛みしめることができるでしょう。

今回紹介した動画は量子力学(量子論)の解説ですが、量子論を考えるには「波」に関する理解が必須です。

波(波動)は高校物理でも扱いますので、高校レベルの参考書を読んでみることから始めるのが良いでしょう。

私も以下の本が高評価だったので、この夏の宿題として、読んでみようと思っています。



MacユーザーがAtomでLaTeX環境を整えるためにやったこととエラー

こんにちは、毛糸です。

本記事では、汎用テキストエディタAtomでLaTeXを使うためにやったことと、生じたエラー、その対応策についてまとめます。

AtomでLaTeXを書くための環境設定on Mac

>>TeXをAtomで書くための環境構築をMacでやってみる

の手順に従えばOKです。以下ではこの記事の内容をさらっと追っていきます。

Atomでパッケージをインストール

この記事を読んでいるあなたはすでにAtomはインストール済みであると思う(まだの方はこちらの記事を参照)ので、LaTeX環境の構築に必要な以下のパッケージをインストールします。

  • latex
  • language-latex
  • pdf-view

Homebrewをインストール

Macのファイル管理システムHomebrewをインストールします。
ターミナルを起動して、

以下をコピペしEnter。
/usr/bin/ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"
パスワードを聞かれるので入力します。●●●のように表示されたりしないので不安になりますが、きちんと入力されているので、間違いのないように入力しEnter。
完了したら、Homebrewの拡張機能caskをインストールします。
以下をコピペしEnter。
brew tap caskroom/cask
これで準備完了です。

Homebrewを使ってmactexをインストール

>>TeXをAtomで書くための環境構築をMacでやってみる

ではHomebrewを使いMac用のTeXパッケージ「mactex」をインストールするよう説明されています。
ターミナルで
brew cask install mactex
と入力し、上手く行けば、そのまま進めて構いません。
私は以下のエラーが出たので、別の方法をとりました。

curl: (56) Recv failure: Connection reset by peer

Error: Download failed:

このエラーは、ターミナルコマンドからインターネットにリクエストを送ったが、データの受領が失敗したときに出るらしいです。
ターミナルをアクティブなままにしておくと上記エラーは回避できるようですが、インストールまで進みませんでした。
したがって、Homebrewでmactexをダウンロードするのではなく、.pkgファイルをブラウザ経由でダウンロードすると解決できます。

mactexのミラーサイトにアクセスし、HTTPの中からどれでもよいので選び、mactec-yyyymmdd.pkgをダウンロードします。
以下はhttp://ftp.jaist.ac.jp/pub/CTAN/systems/mac/mactex/にアクセスした際の画像です。
.pkgをダウンロードしたら、ファイルを開き指示通りに進むと、mactexのインストールが完了します。

AtomでのLaTeX環境設定

mactexがインストール出来たら準備OK、LaTeX環境の設定を行います。
Atom > Preferences > Packages > latexを検索し、以下の通り設定。

この状態で.texファイルをAtom上で保存(command+S)すると、同じフォルダにpdfファイルが作成されます。
ペインを分割することで、左にLaTeX文書、右にPDFを表示し、LaTeX文書を保存するたびにPDFに反映されるように出来ます。
ペインの分割は、メニューバーの表示からペイン>ペイン→と進み、タブをドラッグアンドドロップします。

その他のエラー

Texification failed!Builder executable ‘latexmk’ not found.

Homebrewでmactexをインストールし、Atomで必要な設定を終えたあと、上記エラーがでました。
これはmactexのインストールに失敗しているときに起こります。
katexmkはmactexに含まれているので、mactexが正しくインストールされていれば回避できます。

Homebrewを使わず、mactexのミラーサイトにアクセスし、HTTPの中からどれでもよいので選び、mactec-yyyymmdd.pkgをダウンロードすると、解決できます。

こちらのサイト(>>Atomでのlatexコンパイルのエラー)でもmactexをインストールしたら解決したとの報告があります。
インストールが出来ていても表示される場合は、latexmkの設定ファイルが必要と考えられます。
私が行ったのは以下の手順です。
まずPDF閲覧ファイルskimをHomebrewでインストールする。
brew cask install skim
ターミナルで以下を入力し、ホームディレクトリに移る。
cd ~
latexmkの設定ファイルを作成する。
touch .latexmkrc
このままだとファイルはFinderで見られないので、これを可視化する。
defaults write com.apple.finder AppleShowAllFiles true
killall Finder
Finderで. latexmkrcが見られるようになったので、それを開いて以下をコピペし保存。
#!/usr/bin/env perl
$latex            = ‘platex -synctex=1 -halt-on-error’;
$latex_silent     = ‘platex -synctex=1 -halt-on-error -interaction=batchmode’;
$bibtex           = ‘pbibtex’;
$biber            = ‘biber –bblencoding=utf8 -u -U –output_safechars’;
$dvipdf           = ‘dvipdfmx %O -o %D %S’;
$makeindex        = ‘mendex %O -o %D %S’;
$max_repeat       = 5;
$pdf_mode         = 3;
$pvc_view_file_via_temporary = 0;
$pdf_previewer    = “open -ga /Applications/Skim.app”;
再び余計なファイルを見えなくするために、以下をターミナルで実効。
defaults write com.apple.finder AppleShowAllFiles false
killall Finder
ターミナルで新しいファイルを作る方法はこちら>>ターミナル学習まとめ

【君の知らない複式簿記4】簿記代数の教科書『Algebraic Models For Accounting Systems』とバランスベクトル

こんにちは、毛糸です。

【君の知らない複式簿記】シリーズ第4弾となる本記事では、複式簿記の代数的構造に関する研究書『Algebraic Models For Accounting Systems』についてお話します。

【君の知らない複式簿記】シリーズの過去記事は以下のリンクから辿ることが出来ます。

本記事は下記記事を読まれていない方にも理解いただける内容です。

【君の知らない複式簿記1】行列簿記の意義、性質、限界

【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記


【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

『Algebraic Models For Accounting Systems』の概略

本書『Algebraic Models For Accounting Systems』は、数学の一分野である代数学を、会計の問題に応用することを企図した学術書です。

代数学は、昨今注目を集めるコンピュータサイエンス(情報科学)にも適用され、多くの実利を生み出す数学の大分野であり、コンピュータサイエンスを学ぶ学生は代数学の基礎学習に多くの時間をかけているといいます。

代数学は、数学で扱われる集合の「構造」に関する研究分野です。

といった代数的構造は、方程式を解くといった具体的な問題において重要になるほか、解析学・幾何学といった他の数学の分野においても利用される重要な概念です。

Algebraic Models For Accounting Systems』は、そんな代数学を、会計システム(会計情報が示す状態)の研究に適用することを目的としています。

※ここでいう会計システムは、記帳ソフトやERPパッケージといった会計用ITアプリケーションの意味ではなく、入力と出力を伴う計算機構のことです。

会計情報は複式簿記という記帳規則によって生成されるため、我々はこの研究分野を「簿記代数」と呼ぶこともあります。

簿記代数では、複式簿記で示す会計システムの状態が、借方貸方の対照的表現を持つ1つのベクトルとして表されるという基本考え方を採用しています。

すなわち、借方貸方のT字形(Tフォーム)をした試算表を、以下のような縦ベクトルとして表現します。
\[ \begin{array}{cr|cr} \hline 資産 & a & 負債 & l\\ & & 純資産 & e\\ 費用 & c & 収益 & r\\ \end{array}  = \left( \begin{array}{r} a\\ -l\\ -e\\ -r\\ c \end{array} \right)\leftarrow \left( \begin{array}{c} 資産\\ 負債\\ 純資産\\ 収益\\ 費用 \end{array} \right)\]

この縦ベクトルは、各要素の和が0になるよう決まる(つまり貸借が一致する、バランスする)ようなベクトルとして定義されることから、バランスベクトルと呼ばれています。

Algebraic Models For Accounting Systems』はこのバランスベクトルを基本概念として、会計システムの代数的構造や、会計状態の移り変わりを示す有向グラフ、会計計算をモデル化したオートマトンの理論などを用いて、会計システムの代数的構造を明らかにしています。

バランスベクトルとはなにか:会計のモデル化

複式簿記を数学的に取り扱おうとする試みは過去にも行われており、有名なのは行列簿記でしょう。
【君の知らない複式簿記1】行列簿記の意義、性質、限界

行列簿記はTフォームの貸借の類別を、行列の列(column)と行(row)に対応させます。
しかしバランスベクトルは、Tフォームの貸借を、会計数値の正負に対応させます。
これによって、会計システムの状態は列ベクトルとして簡潔に表わされ、かつ代数的構造が把握しやすくなります。
会計システムの状態をバランスベクトルとして表現するということは、会計と代数を結び付けているということです。

会計システムの状態をバランスベクトルとして表現し、代数の世界に引き込むことで、会計のもつ「意味」をいったん離れ、単純な代数学の問題として会計を捉えることが出来るようになります。

現実の物事のうち考察の対象としたい部分を抽出・抽象化して、数学の問題として扱うことを、モデル化と呼びますが、簿記代数における代数の利用も、まさしくモデル化にほかなりません。

Algebraic Models For Accounting Systems』というタイトルが示すように、会計システムの状態をバランスベクトルとして抽象化・モデル化して数学的に取り扱うことで、私たちは数学的に厳密な理論展開によって、その性質を調べることが出来ます。

【参考記事】
理論・モデルの意義と、理論と現実の差異を知ったあとにとるべき行動


バランスベクトルとして表現する会計状態は、「」を始めとする代数的構造を備えていることがわかります。

本書ではこのようなモデル化によって、抽象的な会計システムに関する分析を行い、会計が備えている特徴について理解を深めることができるようになっています。

【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

現在、このテキストを読み解く輪読コミュニティが発足しています。

興味のある方は是非お声掛けください

GeoGebraで数学のグラフをきれいに描く

こんにちは、毛糸です。

「数学 グラフ」でググっていたら、良さげなツールを見つけたのでメモしておきます。

GeoGebraで関数のグラフをかんたん描画

GeoGebraは関数を指定してグラフを描画したり、平面図形などを簡単に描くことのできる、教育的なオンラインツールです。
関数が既知のものであれば、それを入力するだけで、すぐにグラフが描画されます。
授業用教材にはさまざまな分野・レベルの例題が満載で、数学を勉強し直そうと思っている人がテキスト代わりに使うのも良いでしょう。

棒グラフもかけます

私は調和級数\( \sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}\)について調べるなかで、棒グラフを描きたかったのですが、これも


BarChart({1.5,2.5,3.5,4.5,5.5},{1,1/2,1/3,1/4,1/5})

で描くことができます。前半のカッコで各バーの始点を、後半のカッコでバーの高さを規定します。
調和級数\( \sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}\)は上下から以下のように評価できます。

\begin{equation} \begin{split}
\int_1^{n+1}\frac{ dx}{ x}<\sum_{k=1}^n\frac{ 1}{ k}<1+\int_2^{n+1}\frac{ dx}{ x-1}
\end{split} \end{equation}

これをグラフにしてみると、この関係式は一目瞭然です。

AIに仕事を奪われた私たちに何が出来るのか

こんにちは、毛糸です。

「AIやロボットによって、人間は単純作業から開放され、付加価値の高い業務に集中できる」

そんな声を聞きます。

本当にAIは私たちの仕事を楽にしてくれるのでしょうか?

本記事は「AIで私たちは単純作業から開放されるのか」という主張に対する私見を述べつつ、高付加価値業務にシフトすることの難しさに触れながら、来るべきAI時代を前に私達は何をすべきかを考察します。

機械は単純作業の担い手になるのか?

本記事では「機械」という言葉をよく用いますが、これを「人間の作業を支援・代替する、自動化等のコンピュータ技術全般」と定義します。

一般に「AI」「人工知能」と呼ばれるものよりも、本記事における機械の定義は広い範囲を指していますが、多くの(専門家でない人の)AIに関する主張は、上記意味での「機械」を指すと考えたほうが自然な場合も多くあります。

さて、AIを含む近未来の労働力としての「機械」の実体は、コンピュータのプログラムです。

プログラムですから、決まった同じ処理を繰り返したり、ルール通りの手続きをひたすら行うことは大得意といえます。

プログラムされたコンピュータは、単調な作業に文句も言わず、疲れもせず、ルールを一度決めればミスをすることもありません。

こうした特性から機械は、「単純作業」=「プログラミング可能な作業」を行う主体としては、人間より適しているとさえ言えます。

AI等のコンピュータプログラムは、これまで人間が行ってきた単純作業を代替する可能性を十分に秘めているのです。

AIに仕事を代替された人はどうなるのか?

機械が単純作業をやってくれるとすると、今までそれを仕事にしてきた人は、余剰人員となります。

この点に関して「人間が単純作業から開放されれば、より付加価値の高い仕事に集中できる!」という主張があります。

しかし、私は機械に・AIに仕事を代替された(≒AIに仕事を奪われた)ことで生まれた余剰人員が、みな付加価値の高い仕事にシフトできるとは思えません。

そもそも、人間が行う単純作業が減って、付加価値が高い仕事にシフトする、という流れの背後には、

  • 高付加価値業務はたくさんある
  • 単純作業をしてきた人は、高付加価値業務も担当できる

という前提があるように思えます。

この前提はなりたっているのでしょうか。

高付加価値業務、そんなにたくさんありますか?

第一に、人間が行うべき高付加価値業務というものは、そんなにたくさんあるのでしょうか?

仮にあるとして、現在それに着手できていないのは、果たして単純作業が多いから(つまり手が足りないから)なのでしょうか?

企業は利益獲得のため合理的に行動しますが、高付加価値業務が十分にあるなら、これまでも採用を拡大し、高付加価値業務を推進してきたはずです。

労働力不足が問題視されているのは確かですが、単純作業に忙殺され高付加価値業務が出来ていない、という言説は、よく聞かれる主張ではありません。

高付加価値業務がそう多くない環境で、単純作業を機械に代替させたら、余剰人員分が解雇されて終わりです。

少ない人員でより利益を高められるという意味で、企業のROIは上がるかもしれませんが、

少なくとも十分に高付加価値業務のストックがなければ、単純作業をAIに代替させても、人員のシフトは行えないでしょう。

単純労働を機会に任せることで生じた余剰人員の受け皿になるほど、高付加価値業務がたくさんあるとは思えません。

高付加価値業務、すぐにできますか?

第二に、これまで単純作業ばかりしてきた人が、人間にしかできない高付加価値な仕事ができるのでしょうか?

付加価値の高い仕事には、専門知識や技術や経験が要求されますが、通常それらを習得するにはコストがかかります。

そのコストを負担するのは誰なのでしょう?企業でしょうか?

高付加価値な業務を提供し、利益体質に改善した企業が、多大なコストをかけて、それまで単純作業を行ってきた従業員に丁寧に仕事を教えるのでしょうか。

考えづらい状況です。

先日、日本を代表する大企業のトップや、経済界のリーダーが、終身雇用の限界を口にし始めましたが、それは教育投資の不確実性の高まりも関係していると思われます。

【参考記事】
終身雇用のインセンティブとは何だったか?そして、なぜそれが破綻したのか?

 

技術進歩に伴い、単純作業のAIによる代替は進むのでしょうが、それを上回るペースで、今まで単純作業を担ってきた人間を高付加価値業務に転換させるのは、簡単なことではないように思います。

人員削減の波はすぐそこまで

メガバンクなどでは、無人店舗の導入やロボの活用によって万単位で人員を減らしているようです。

現状の人員は解雇しない、という方針のようで、採用を絞るなどして調整しているそうですが、

それも結局、従来入社すべきであった人員が採用されないという意味で、実質的には人員整理と大差ありません。

AI、広い意味での自動化、IT化によって、人間が単純作業から開放されたのはよいことかもしれませんが、現状、それによって雇用も減ってるように思えます。

単純作業から解放された従業員は、高付加価値業務を担当するはずではなかったのでしょうか。

実際に起こっている人員削減の波を考えると、「単純作業から高付加価値業務へ」という考え方は、あまり現実的でない気がします。

AIに仕事を奪われた私たちに何が出来るのか

単純作業を担ってきた私たち人間が、AIにその仕事を奪われようとしたとき、私たちは何が出来るでしょうか。

AIを使う側に回る。

AIとコスト競争をする。

AIにはできない人間的な働き方にかじを切る。

やりようはいろいろあります。

大切なのは、今起ころうとしている変化を察知し、情報を収集し理解することです。

そして、持てる知識と経験を総動員して、自分の価値を磨いていくことです。

恐れすぎることなく、しかし楽観視するでもなく、これから起ころうとすることを注意深く観察し、自分にできることから始めていきましょう。

自ら課題を見つけ、解決し、自己を高め続けられるのは、機械には真似のできない、極めて「人間らしい」営みです。

学びを止めることなく、常に前進し続けましょう。

【参考記事】
繁忙期にも学びを止めないための3つの心がけ

「ブロックチェーンで監査はなくなる」という誤解について

こんにちは、毛糸です。

AIやブロックチェーンなど、新しいテクノロジーが次々と生まれては、またたくまにビジネスに適用されていくのが今の時代です。

テクノロジーは我々の仕事を効率化し、人間がより人間らしく働くことの後押しをしてくれると期待されていますが、

一方で「仕事を奪われる」という脅威論もしばしば見られます。

本ブログの記事「AIで会計士の仕事(監査)はなくなるのか」に対するひとつの数理的整理では会計の数理モデルを用いて、会計のプログラム可能性という観点から、監査という仕事がAIに代替されるかどうかを考察しています。

ブロックチェーンの会計への応用と監査不要論

AIとともに会計分野への応用が期待されているのが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンはその改ざん困難性から、会計帳簿に活用することで、会計情報の正確性を担保できるのではないかと考えられています。

ある取引について、その当事者2社の会計帳簿に記帳を行うと同時に、その内容をブロックチェーンにも書き込むことで、当事者の会計情報の正確性を担保する仕組みは、ブロックチェーン式三式簿記と呼ばれています。

【参考記事】
【君の知らない複式簿記2】複式簿記の拡張、三式簿記

ブロックチェーン式三式簿記は、ブロックチェーンの改ざん困難性を会計情報の検証可能性に対応付けるという意味で新しい会計のあり方ですが、人によってはこの事をもって監査不要論を唱える方もいるようです。

企業の仕訳データをブロックチェーンに記録してオープンにしておけば、市場参加者がこれを確かめるので、監査は要らない

というのが、彼らの主張です。

監査における実態判断

たしかにブロックチェーン上の会計データは改ざん困難であり、これを外部から検証可能な状態にしておけば、市場原理によって監査は不要になるとも考えられます。

しかしながら、経済活動を適切に会計数値に写像しているかについて、ブロックチェーンは何ら保証していません。

例をあげましょう。

売上100万円、という会計情報がブロックチェーンに記録されており、100万円の領収書が公開されていたとします。

もしこの取引が通常の売上取引であれば、ブロックチェーン上の会計情報は領収書という証憑によって保証され、会計数値が適切であることを市場参加者が判断できます。

しかし、もしこの取引の裏で「商品を数日後に返却する約束」があったとすればどうでしょう。

この場合、当該取引の実態は商品を担保とした短期の借入であり、財務活動ですので、売上を認識するのは妥当ではありません。

当然、このような「踏み込んだ判断」を市場参加者が行うのは困難です。

現在の監査手続きにおいては、こうした「取引の実態」に即した会計処理が行われているかを総合的に判断し、企業の会計情報が適切であるかを判断しています。

つまり、ブロックチェーンは記録された会計情報が改ざんされていないことは保証できても、記録された会計情報が取引の実態を適切に示しているかについては、何ら保証しないのです。

したがって、ブロックチェーン式三式簿記によって監査は不要になる、という主張は、監査を矮小化した考えに基づく誤った理解と言えます。

ただ、実態判断を伴わないような標準的な取引や、会計情報と経済活動の対応関係が明確な取引に関しては、ブロックチェーンを使うことで監査上の判断を効率化できる余地はあります。

記事「AIで会計士の仕事(監査)はなくなるのか」に対するひとつの数理的整理でも述べたとおり、経済活動と会計ルールがプログラム可能であれば、コンピュータによって監査判断が行うことは可能です。

重要なのは「0か1か」の議論に陥ることなく、テクノロジーの性質を正しく理解したうえで、ビジネスへの適用可能性を模索していくことだと考えます。

参考文献

下記書籍はブロックチェーン技術の基礎とその応用を、実例とともに紹介する優れたテキストです。
 
本記事で登場したブロックチェーン三式簿記の考え方にも触れており、ブロックチェーンの可能性を知る上で良い教材になります。