何についての書籍か:抽象化の方法論と、具体人間との意思疎通
細谷功『具体と抽象』は、ものごとを抽象に考えることの重要性を説いた書籍です。
私たちは「具体的なものはわかりやすい」「抽象的なものはわかりにくい」と印象を抱きがちです。
しかしものごとを抽象的にとらえると、一般的な性質に着目できるため、私たちの理解を助ける場合があります。
本書はものごとを抽象的に考え、思考力・発想力・理解力を向上させたいという読者に向けた本です。
また、具体的なレベルでしかものごとを捉えられない人とのコミュニケーションの齟齬に悩む人も、想定読者に上げられています。
なぜ手に取ったのか:抽象化による課題解決を目指すため
具体と抽象の行き来は、課題解決に役立つと考えています。
ユニクロの柳井社長は、具体と抽象の行き来が上手かったそうです。
「赤のフリース売れません!」という販売部門からの報告会の出来事です。
会議の参加者は「白は売れ行きは?」「トレンドカラーは茶だよ」という、色に着目した議論を進めようとしたそうです。
そんな中柳井社長は「フリース全体は?そもそも衣類支出の動向は?」と、より広い視野での質問を投げかけ、この問題を抽象化して考えようとしました。
このように、具体的な課題をさらに高い次元で考察することに、柳井社長は長けていたのだそうです。
ここに抽象化(もしくはカテゴリーの上位化)を伴っています。
このような抽象化による課題解決のアプローチを学ぶため、この本が役に立つと考えました。
何を学んだか
具体的には異なるものを、まとめて同じものとして扱う。これが抽象化の例です。
ものごとを抽象的に捉えると、異なるものを統一して見ることができるようになり、思考の幅が広がります。
また、共通する性質に対して考察することで、広く応用しやすい結論を得られます。
これは数学を学ぶことにも似ています。
数学は数や論理を使って議論を繰り広げます。しかし、具体的に何を扱っているかは問題とせず、例えばりんごひとつもみかんひとつも「1」という数で表しますし、コーヒーカップもドーナツも穴が1つという意味で「同じ」とみなしたりします(これはトポロジーという数学の考え方です)。
具体的なものではなく、抽象的なレベルで議論を展開しておくことで、あらゆる場面に応用できる一般性のある結論が得られます。
これが抽象化のメリットです。
何に応用できそうか、関連するものはなにか:会計における勘定科目
抽象と具体は「1:N」の関係で表現できると『具体と抽象』には書いてあります。
これは会計システムにおいて、勘定科目が階層構造を作っていることと似ています。
流動資産という抽象的な1つの勘定科目に対して、現金・預金・売掛金といった具体的な複数の勘定科目が対応しています。
また、流動資産・固定資産といった勘定科目は、さらにまとまりをつくり、資産というより抽象的な勘定科目を作ります。
このように、勘定科目の階層構造は、本書に書かれた具体と抽象のパターンそのものといえます。
参考文献:『勘定科目統一の実務』
まとめ
細谷功『具体と抽象』は、ものごとを抽象的に考えることの重要性を学べる本です。
抽象的に考えることで、理解を助け、発想を豊かにし、一般的な性質を見極められます。
より広い視野でものごとを考えたいという方に、おすすめしたい一冊です。
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