2021年 3月 の投稿一覧

簿記代数に可逆性は必要なのか

複式簿記を代数的に表現するという研究があります。私はそれを簿記代数と呼んでいます。

簿記代数では、仕訳や試算表といった「複式簿記のオブジェクト」の集合に「仕訳の追加」「試算表の合算」といった加法を定義し、群や環上の加群を導入します。

【参考記事】【君の知らない複式簿記3】複式簿記の代数的構造「群」

複式簿記の構造を群として考えるということは、複式簿記のオブジェクトにはどれも逆元が存在するということです。

この逆元というのは、ある仕訳の逆仕訳が想定されます。この逆仕訳というのは、ある仕訳の取り消し処理のことです。

どんな仕訳にも逆仕訳が存在するということは、どの仕訳も取り消せるということです。その取り消しは実務的な要請(誤謬の訂正)という意味合いが大きいように思えます。

しかし、もし「理想的な」会計実務が想定でき、仕訳の誤りがなくなったら、どうでしょうか。それはつまり、仕訳の取り消し処理が不要ということです。そのような場合、もはや複式簿記の代数的構造において必ずしも逆元の存在を認める必要はありません。

したがって、群よりもさらに原始的な構造であるモノイドを複式簿記の構造として考えることができます。

【参考記事】代数的構造の関係を図示してみた(マグマ、半群、モノイド、群、アーベル群、環、可換環、整域、体)

 

EXCELマクロという資産

Excelマクロは資産です。

それはなにも「この経験はきっと人生を豊かにするんだ」的な意味ではありません。明確な意味があります。

この記事ではマクロがなぜ資産なのか、マクロ資産を作る際に気をつけるべきポイントについてお話します。
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「貨幣評価の公準」を緩めた簿記会計の可能性

会計は貨幣金額を用いて行われます。

製品製造用の木材1トンも、建物1棟も、社内システムのアカウント10名分もすべて、何らかの方法で貨幣金額(日本では円)を付し、仕訳に登場し財務諸表に反映されます。

これは会計における重要な決まり事として、貨幣評価の公準とよばれます。

貨幣評価の公準は、会計の公理にも含められることがあります。

参考:複式簿記会計の公理:Renes(2020)の紹介

もしこの公理が緩められるとすると、どんなことが起こるでしょうか。

貨幣金額という会計の「あたりまえ」を取り除くのはイメージしづらいかもしれません。しかしもしこれが可能だとすれば、会計や簿記は貨幣の介在しない、より広い世界の現象を記述するのに役立つかもしれません。

たとえば、物理現象や情報科学など、貨幣以外にも「交換」や「因果」や「等価性」を伴う概念はたくさんあります。

こういう概念にまで簿記・会計の概念を広げようと思ったとき、たとえば簿記・会計の公理があれば、それを共通理解として議論を深めることができます。

参考:簿記会計の公理を考えると何が嬉しいのか?

【君の知らない複式簿記 補遺】複式簿記の座標

このブログでは複式簿記の数学的な表現についていくつか記事を書いています。

【参考記事】【君の知らない複式簿記】目次まとめ

複式簿記における仕訳や試算表は、ベクトルとして表現できます。このとき、勘定科目は「座標系」と解釈することが可能です。

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望月新一教授の宇宙際タイヒミュラー理論とはなにか:ABC予想の解決論文の「雰囲気」を知る

数学上の未解決問題「ABC予想」を証明した論文が2021年3月4日、国際専門誌「PRIMS」特別号でお披露目されました(共同通信記事)。

論文の著者は京都大数理解析研究所の望月新一教授です。この論文では「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT; Inter-universal Teichmüller Theory)」という全く新しい数学理論が創造されています。

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【君の知らない複式簿記 補遺】ブロックチェーン的三式簿記の3つの解釈

6世紀に渡り会計の基本言語であり続けている複式簿記。

そんな複式簿記が、最新のテクノロジーであるブロックチェーンによって進化しようとしています。

ブロックチェーン的三式簿記と呼ばれる新たな簿記です。

この記事ではブロックチェーン的三式簿記について2つの解釈が存在することを解説します。

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セミオートマトンとオートマトン【簿記数学の基礎知識】

この記事ではセミオートマトンとオートマトンの定義について解説します。

荒っぽく言えば、セミオートマトンとは入力によって変化する機構、オートマトンとは入力によって変化し、同時に出力も行う機構です。

本記事ではさらに、オートマトンと会計システムの関係についても触れます。

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財管一致の再定義:「財管一致の現状と課題-管理会計からの考察-」(川野2018)を読む

会計と一口に言っても、その目的はさまざまです。

なかでも、企業の活動を外部に報告する目的で行われる財務会計、社内の意思決定に利用する目的で行われる管理会計の2つは特に有名でしょう。

ある企業が財務・管理の2つの目的でデータを揃える「財管一致」いう考え方があります。

本記事では財管一致とはどういう考え方なのか、参考文献を提示しながら解説します。

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