こんにちは、毛糸です。
最近、携帯電話会社の料金プラン改革が進み、スマホの端末代金を料金から差し引く「実質値引き」ができなくなりつつあります。
また、QRコード決済サービスが乱立し、多くのサービスでポイント還元が行われ、ここでも「実質○%オフ!」というような説明がされることがあります。
さて、この実質値引きや実質無料という考え方ですが、なぜ「実質」なのでしょうか。
もちろん単純な値引きや無料ではないので「実質」という枕詞をつけて区別しているわけですが、値引きや無料の「効果」は同じなのでしょうか?
本記事ではこの「実質」の考え方について、数式を用いて考えてみたいと思います。
値引き・無料とはどういうことか
まず、通常の意味での値引き・無料について考えてみましょう。
値引きの定義
a%の値引きとは、価格X円の商品を購入するときに、 X × a%円分を減額して支払うこと、つまり
X – X × a%=X(1-a%)円
を支払うこと、と考えられます。
価格100円の商品が5%の値引きになっているとき、支払額は
100 – 100×5%=100-5=95円
です。
a%の値引きが行われたとき、X円の商品をX(1-a)円で購入できるわけですから、支出額1円あたりの商品価値は
X ÷ X(1-a)=1/(1-a)
となります。
なぜ支出額1円あたりの商品価値なんて話をするのかと言うと、こうすることで実質値引きとの比較がわかりやすくなるからです。
無料の定義
無料とは、100%の値引きのことです。つまり価格X円の商品を、
X – X×100%=0円
で買えるということです。
このとき、支出額1円あたりの商品価値は
X ÷ X(1-100%)=1/(1-1)=∞(無限大)
となります。
実質値引き・実質無料とはどういうことか
次に、実質値引き・実質無料について考えてみましょう。
実質値引きの定義
a%の実質値引きとは、価格X円の商品を購入するときに、代金X円を支払った上で、X × a%円の現金やポイント(以下、現金等)が還元されること、と考えられます。
価格100円の商品が5%実質値引きになっているとき、支払額は100円であり、100×5%=5円が還元されます。
したがって、a%の実質値引きで価格X円の商品を購入したあとには、手元にはX円分の価値のある商品と、X×a%の現金等が残っています。
現金等は使って初めて効用(満足度)を生むと考えるのが基本的な経済学の考え方ですので、議論を単純化するためにも、還元された現金はその後消費する(つまりその現金等を使って別の商品を買う)と考えましょう。
このとき、実質値引きは1度だけ適用する、つまり追加購入には実質値引きが適用されないと仮定します(この仮定については、あとの節で再検討します)。
このような状況を整理すると、a%の実質値引きが行われたときには、X円を支出することで、X+X×a%=X(1+a%)円分の価値の商品を手に入れられる、ということになります。
したがって支出額1円あたりの商品価値は
X(1+a) ÷ X = 1+a
となります。
実質無料の定義
実質無料とは、100%の実質値引きのことです。つまり価格X円の商品をX円支払って購入し、X×100%=X円の現金等が還元されるということです。
したがって、X円の支出に対して、X+X×100%=2X円分の商品が購入できます。
このとき、支出額1円あたりの商品価値は
2X ÷ X=2
となります。
値引きと実質値引き、無料と実質無料の違い
以上のことを整理すると、
- 値引き(a%)とは、支出X(1-a%)円でX円分の消費をすることであり、支出1円あたりの消費額は1/(1-a%)
- 無料とは100%値引きのことであり、支出1円あたりの消費額は無限大
- 実質値引き(a%)とは、支出X円でX(1+a%)円分の消費をすることであり、支出1円あたりの消費額は1+a%
- 実質無料とは100%実質値引きのことであり、支出1円あたりの消費額は2
発展:条件によっては値引きと実質値引きはイコール
参考:値引きと割引の違い
値引きと似た言葉に、割引というのがあります。
5%の値引きを、5%割引と表現する場合も多くあり、両者は同じ概念と思っている方も多いでしょう。
しかし、会計の専門用語としての値引きと割引は、以下のように異なる意味を持ちます。
- 値引き:商品代金の減額のこと
- 割引:商品代金を早く払うことにより支払いが安くなること
最近のコメント