オリジナルの仮想通貨を作りたい!アイデアと方法について

こんにちは、毛糸です。

最近、仮想通貨(今は暗号資産と言うのでしたっけ)の価格が持ち直して来ているようです。

仮想通貨が現代のバブルとして大きな爪痕を残したのは記憶に新しいです。
参考記事:ビットコインはバブルである

さて最近、オリジナルの仮想通貨を作って配布したら、なにか楽しいことになるんじゃないか、というアイデアを思いつきました。

今回はこの目論見の概要と方法について整理しておきたいと思います。

業界型仮想通貨がおもしろいんじゃないか

仮想通貨はコミュニティーの帰属意識を高めるのに役立つのではないか、と考えています。

仮想通貨を会員証のように発行し、保有者はそのコミュニティの一員であることを示すことができる、そんな使い方ができると思っています。

ある業界の振興や発展のためにデザインされた「業界型」仮想通貨というのは、すでにいくつかあります。

  • アニメやマンガなどのエンタメ業界の振興を目的としたOtaku coin
  • 歯科業界で使われることを目的に開発されたDentacoin
  • 格闘技界での普及を目指したMAS OYAMA COIN

残念ながら、これら業界型コインは、仮想通貨バブル崩壊とともに、大きなムーブメントを起こすことなく鳴りを潜めてしまったものがほとんどです。

しかし、ICOによるマネタイズや「通貨」としての利用に重きをおかず、保有していればコミュニティへの帰属意識は高められる「会員証」として位置づけることで、コミュニティの活動に何かしらの利益をもたらすのではないかと思います。

今回の試みでは、オリジナルな仮想通貨を作り、私が参加する勉強会で配布しようと考えています。

私が参加している会計×テクノロジー勉強会PyCPA(外部リンク)というコミュニティには、新しいテクノロジーに敏感な優秀なメンバーが揃っています。

そんなコミュニティの話題として、オリジナルの仮想通貨を作るというのは、よいネタになるのではとも考え、今回こうしてアイデアを公開している次第です。

NEMのMOSAIC(モザイク)トークンでオリジナル仮想通貨をつくる

業界型仮想通貨は、業界の発展に寄与するものであることが必要です。

したがって、業界内で何らかのアクションを起こした人の間で、簡単に・頻繁にやりとりされるようなものであると良いと思っています。

仮想通貨の送金は、Twitterで気軽にやり取りが出来るのが良いかなぁと思います。

仮想通貨の中にはTwitter上のリプライで送金を行えるサービスがいくつもあります。

そのサービス(bot)を利用することで、業界型仮想通貨を気軽にやり取りすることが出来るのではないかと考えています。
参考記事:仮想通貨で気軽にチップ!Twitterを利用した投げ銭の方法をご紹介!

Twitterで送金が行える仮想通貨には、BitcoinやMonacoinがありますが、今回のオリジナル仮想通貨の発行にはNEMが役立ちそうです。

NEMは、オリジナルの仮想通貨(厳密にはMOSAICと呼ばれるトークン)を発行することが可能です。

いくらかのNEMを使ってMOSAICトークンを作ることが出来、これをTwitter上で送り合うことが出来ます。

割と簡単に作れるようなので、当面はNEMのモザイクトークンでオリジナル仮想通貨を作ってみようと思います。

まとめ

勉強会でオリジナルな仮想通貨を作り配布したら面白いのではないかと考えました。

業界振興のため、仮想通貨は簡単に送金できるようにしたいので、NEMをベースとしたトークンを作ろうと思います。

まだアイデア段階ですが、あまりお金をかけずにできそうなので、楽しみながらやってみようと思います。

終身雇用のインセンティブとは何だったか?そして、なぜそれが破綻したのか?

こんにちは、毛糸です。

先日、トヨタの豊田社長が「雇用を続けている企業へのインセンティブがあまりない」と述べたことが話題になっています。

経団連の中西会長も「終身雇用なんてもう守れないと思っている」と答えています。

終身雇用(しゅうしんこよう)とは、

同一企業で業績悪化による企業倒産が発生しないかぎり定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用においての慣行(Wikipedia)

のことですが、そのインセンティブとは一体何だったのでしょうか。

そしてなぜそれが今、破綻してしまったのでしょうか。

今回は終身雇用のインセンティブとその崩壊について整理したいと思います。

終身雇用のインセンティブ

日本の終身雇用の原型は、第一次・第二次大戦の中間期に始まり、日本がまだ高度経済成長を果たす前、企業が熟練した作業者の確保に悩まされていた時期に、昇給や退職金の仕組みを整えたのがきっかけと言われています。

その後、大正デモクラシーによる雇用の慎重化や、高度成長時代の労働者不足の深刻化により、企業が人材流出を食い止めるべく、終身雇用が確立しました。

我が国の企業が長きに渡り「守ってきた」とされる終身雇用には、以下の4つのインセンティブがあります(正確には、ありました、というべきかもしれません)。

終身雇用のインセンティブ1:人材投資の不確実性の低減

終身雇用を前提とすれば、企業は採用した人材を長期的な人的資源として利用でき、人材投資の不確実性が減るというメリットがあります。

雇用した人材がすぐに辞めてしまうような状況では、企業は短期的な利益に貢献しない社内教育などを実施しづらくなりますが、終身雇用が浸透していれば、長期的戦略に基づいて人材投資を行うことが可能になります。

終身雇用が破綻し、労働の流動性(離職転職率)が高くなった場合、企業は採用のための広告費といった直接的なコストや、離職転職が多いことによる労使関係への悪影響などの間接的コストを負担することになります。

しかし終身雇用が確立していれば、企業は余計なコストを負担せずに済み、人員投資の不確実性は小さくなります。

終身雇用のインセンティブ2:余剰労働力の確保

企業はさまざまなビジネスリスクにさらされており、需給の変化によって業績が下がることもあります。

人員は基本的には自由な解雇が行えないため、需要低下時には雇用過剰(人余り)の状態になります。

しかし、その需要低下が一時的であり、いずれ需要は回復し業績は改善するという前提に立てば、教育コストを勘案すると、一時的な雇用過剰でも雇い続けることに経済合理性があります。

したがって、終身雇用によって教育コストを回収することができるのです。

終身雇用のインセンティブ3:企業特殊熟練の蓄積による生産性向上

終身雇用は勤続の長期化をもたらします。
勤続が長期化することで、その企業の文化や方法を反映した、企業独自のスキル(企業特殊熟練)が蓄積されるようになります。
企業特殊熟練はその企業のビジネスを遂行する上で必要なスキルであり、この企業独自スキルが高まることで、生産性が向上します。
終身雇用はこうした企業特殊熟練の蓄積に貢献し、生産性を上げるのに役立ってきました。

終身雇用のインセンティブ4:監督費用の削減

労働を高い能率で働かせるためには、監督が必要ですが、終身雇用は低能率な労働者を発見するのに役立つと言われます。

短期で離職転職が起こる企業では、短期的な非効率を発見するための労働者監督コストが高く付きますが、終身雇用(と退職金や年功序列制度)では、長期の労働実態から能率的でない労働者を発見し、異なった待遇に処することが可能です。

したがって、終身雇用によって長期的な目線で労働者を「品定め」することが出来るというメリットがあります。

終身雇用のインセンティブはなぜ崩れたか

トヨタ社長豊田氏の言葉を借りれば、現代日本は「雇用を続けている企業へのインセンティブがあまりない」状況になりました。
一体、何が状況を変えてしまったのでしょうか。

もっとも大きな原因は、現代という社会が目まぐるしい変化を伴うようになってきた、ということでしょう。

インターネットの普及以後、情報はまたたく間に世界に伝播し、ビジネスを国際化させ、あらゆる前提が揺らぐようになり、全く新しいテクノロジーが次々ともたらされるようになってきました。

企業の将来予測や戦略采配のミスにより、またたくまに企業生命を脅かすような状況に見舞われるようになった現代においては、もはや「需要の回復を待つ」というような悠長なことは言っていられません

したがって、企業の教育コストはもはや回収の蓋然性が高いものではなくなり(「インセンティブ2:余剰労働力の確保」の崩壊)、熟練した労働者のスキルもあっという間に陳腐化します(「インセンティブ3:企業特殊熟練の蓄積による生産性向上」の崩壊)。

一旦崩れ始めた終身雇用制は、終身雇用を前提とした均衡を崩し、採用コストの増加や人材投資の不確実性を高めます(「インセンティブ1:人材投資の不確実性の低減」の崩壊)。

流動的になった人員のマネジメントのため、追加的なコストもかかるようになるでしょう(「「インセンティブ4:監督費用の削減」の崩壊)。

このようにして、現代の日本においては、終身雇用の前提となっていた経済状況は完全に過去のものになったのです。

つまり、我が国を代表する企業のトップが「終身雇用は守れない」と口にするようになったことの背後には、変化の激し現代に終身雇用がそぐわなくなったという理由があるのです。

まとめ

企業が終身雇用を守るインセンティブには、以下のようなことが考えられます。

  • 人材投資の不確実性低減
  • 余剰労働力の確保
  • 生産性向上
  • コスト削減

しかし、これらが成り立つ前提は崩れました。

テクノロジーの進歩により、企業を取り巻く環境は様変わりしています。

終身雇用のインセンティブがなくなった現在、労働者としての私たちも、そのあり方を見つめ直す必要があります。

参考文献

勉強会「意識高い……」「レベル高そう……」いやいや、誤解してませんか?

こんにちは、毛糸です。

このところ毎月のように勉強会を企画したりしているのですが、先日「意識が高い」「近寄りにくい雰囲気」という声を耳にしました。

私はそういう声にはあまり気持ちを乱されないタイプですが、しかしそういうイメージを持たれるのは本意でなく、誤解であると感じているため、今回はそういった声に対するメッセージをお届けします。

私はなぜ勉強会を開いたか

私は昨年のプログラミングブームの中で、自分と同じようにテクノロジーを学ぶ人達と交流したいという思いで、勉強会を企画しました。

当時の私はプログラミング言語Pythonに興味を持っていました。

日頃、会計士として仕事をしていますので、Pythonを会計の仕事に役立てられないかと考え、会計×テクノロジーの勉強会 PyCPAを立ち上げました。

PyCPAという勉強会は昨年の発足以来、10回以上の開催実績があり、参加者も述べ250人を超える規模となりましたが、最初はプログラミングに興味のある会計士ツイッタラーを集めた小規模な集団でした。

会計とテクノロジー(プログラミング)という、ある種「オタク」な趣味を共有するために、SNSで仲間を募り集まってみた、とうただそれだけの勉強会です。

PyCPAという勉強会は、これまで色々な形式で開催されてきました。

  • ただ集まって各自黙々と作業を行うもくもく会
  • 講師を招き実務の最先端を学ぶセミナー
  • 実際にプログラミングをしながら学ぶハンズオン
  • 専門書をみんなで読み進めていく輪読会
などなど、多彩なバリエーションで開催しています。
勉強会は完全無償で運営されており、会場の提供や講師の登壇まで、すべで勉強会のビジョンに共感して下さる方々の善意で成り立っております。

勉強会に対する誤解

そんな勉強会PyCPAですが、最近「意識が高い」「レベルが高くて近づきがたい」という声をちらほら耳にするようになりました。
前述の通りPyCPAは、Twitterに生息する一部の「オタクな」会計士による趣味の集まりとして発足しました。
今でこそ多くの支援者に恵まれ、コミュニティとしての輪郭を備えつつありますが、「楽しさを探求する」というあり方は、当初から全く変わっていません。
意識の高さを志向しているようなことはまったくなく(おそらくコミュニティメンバーもそれを望んでおらず)、ただ楽しいから・知りたいからと言う理由で、探求し発信しています。なので、
なに意味わからんこと追い求めてるんだあいつら……
という方向で近寄りがたいのならよくわかりますが、
なんかレベル高いことやってるよ意識たかっ……
と思ってるなら、それは大きな誤解です。
もちろん、会計やテクノロジーに興味を持ち探求することを楽しむ人種が世の中の多数派だとは思っておりませんので、そういう意味では「尖った」集団であることには間違いないのですが、もし「意識高い」奴らと映っているのであれば、それはこのコミュニティの本質を十分理解いただいていないということでしょう。

やりたいからやる、楽しいから学ぶ

私の周りには、私の興味ある話題について話を深められる人があまりいません(私の交友関係の狭さゆえです)。
私が気になる、AIの新技術とか、正規分布の和とか、簿記の代数的構造とか、そういう話題を一緒に楽しめる人が近くにいないのです。
しかしSNSは違いました。
SNSではどんなにニッチな趣向でも、広く発信すれば必ずと言っていいほど共感してくれる人が現れます。
SNSの広がりによって、リアルな人脈を超えた人間関係が構築できるようになりました。
こうしたネットでのつながりをリアルに感じたい、同じ志を持ち共通の話題を楽しめる人たちともっと交流したい、そういう気持ちが勉強会を企画する原動力になりました。
やりたいからやる、楽しいから学ぶ。
そうした娯楽を一緒に楽しめる仲間が、勉強会に集まっています。
そこにあるのは決して意識の高いインテリジェンスな集団ではなく、ちょっと変わったことに興味を持つ人たちが集まる探求の場なのです。

まとめ

「意識高い」「近寄りにくい」という声が、私たちの勉強会を形容する言葉としてはちょっとずれていると思い、考えていることを述べました。
私たちの勉強会は、ただ楽しいから集まり、知識を共有しているだけです。
もし「レベルが高くて……」と遠ざけてしまっている方がいたら、それは大きな誤解です。

PyCPAで登壇する人たちだって、最初はみんな手探りで学んでいたのです。

もし、今まで勉強会なんて行ったことも開いたこともないけれど、興味があるという方がいらっしゃったら、勉強会に足を運んでいただくか、こんな勉強会を開きたいとリクエストしてみてください。
参考記事:PyCPAで勉強会を開催する、もしくはリクエストする方法

どうせ楽しむなら、話のわかる人と一緒にやったほうが楽しいのです。

一緒に楽しく学びませんか。

【投信定点観測】9週目|やめてくれトランプ!含み損に突入!

こんにちは、毛糸です。

【投信定点観測】2019年5月第2週(スタートから9週目)の損益の報告です。8週目はゴールデンウィークで市場が開いていませんでしたので飛ばしています。

今週末における投資総額は154万円、含み損益は-5,497円、損益率は-0.39%(年率-10.07%)です。


損益状況

商品ごとの時価は以下のようになりました。【投信定点観測】開始から9週間経過時の含み損益は-5,947で、先週から40,621円のマイナスです。

損益率に直すとこんな感じです。今週末の損益率は-0.39%(年率換算で-10.07%)です。

インデックス投資信託の振り返り:株価暴落!!!

今週は米国トランプ大統領が対中国の関税引き上げに言及しリスク回避の流れとなったことで、新興国株式が前週比−5.66%、先進国株式−3.77%、日本株式−4.27%と大打撃を受けました。

今週の週次収益率がプラスだったのは日本債券のみです。

【投信定点観測】は広く分散されたポートフォリオに機械的に積立投資していますが、今週のようにリスク資産の市場全体で不安感が高まるような状況においては、分散効果もあまり感じられません。

とはいえ、こういう場面で狼狽してしまうのはもったいないこと、というか意味のないことですので、「ほったらかし」インデックス投資をもくもくと実践しています。

▼インデックス投信をコツコツ積み立て分散投資!




ロボアドバイザーの振り返り:WealthNavi(ウェルスナビ)もTHEO(テオ)もマイナス圏へ

ロボアドバイザーのWealthNavi(ウェルスナビ)THEO(テオ)ともに、今週は含み損に落ち込みました。

全世界的な株安を受けて、ほぼすべての資産クラスが下落した今週は、ロボアドバイザーにも打撃を与えました。

WealthNavi(ウェルスナビ)THEO(テオ)も、金融工学を用いた最適ポートフォリオを志向した投資運用を行っていますが、全資産が連動して下がるような状況(システマティック・リスク)には対処するのは難しいようです。

今後の成績に期待です。

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WEALTHNAVI(ウェルスナビ)

▼ロボアドバイザーTHEO(テオ)は登録はこちらから!
THEO

アクティブファンドの振り返り:ひふみ、TOPIXに週次で負け

TOPIXの今週の下落幅が-4.27%であるのに対し、ひふみ投信は-4.37%と、週次ではインデックスを下回っています。

ひふみは週次リターンで見ればTOPIXに買ったり負けたりですが、累積リターンで考えた場合にはインデックスを大きくアウトパフォームしています。

個人的にはひふみ投信にはインデックスETFを超える信託報酬を支払うにたる「選別力」があると思っていますので、このまま資産を託したいと思います。
参考記事:ひふみ投信の対TOPIXの勝率を調べてみたら、統計的に有意に1/2より大きかった件

▼ひふみ投信はSBI証券で月々100円から積み立てできます

まとめ

【投信定点観測】を始めて9週間、GW前の「適温相場」から一転し、波乱の相場となりました。

株式が大きく毀損した一方で、債券やREITはダメージが小さく、今週末現在でも含み益を確保しています。

特定の資産の上下に関わらず安定的にリターンを追求していけるのが、【投信定点観測】でも実践している投資信託を使った分散投資です。

投資信託積立の優位性については、下記の書籍に丁寧に解説されていますので、是非読んでみてください。

引き続き積立投資の状況をリポートして参りますので、もしよろしければSNSでのシェアよろしくお願い致します!

PyCPAリアル・オプション輪読会まとめと参加者アンケート結果

こんにちは、毛糸です。

先日、会計×テクノロジーをテーマとした勉強会コミュニティPyCPAの『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』輪読会第1回が開催されました。

今回は20名近い参加者にお集まりいただきました。

本記事では今回の輪読会の振り返りをしてみたいと思います。

参加者には事前にアンケートにお答えいただいてますので、その結果もあわせて公開します。

PyCPAとは

PyCPAは、テクノロジーの進化を武器に次世代の担い手となる探求者たちのコミュニティです。

もともとは、プログラミング言語Pythonに関心のある公認会計士(CPA)の勉強会として発足しましたが、現在ではより広く、テクノロジー全般に興味を持ち、探求する意欲のある、会計士、経理財務人材、エンジニアなどがメンバーとなって活動しています。

PyCPAは毎月勉強会を開催しており、もくもく会やセミナー、参加型ワークショップを行っています。

現在のコミュニティメンバーはSlack登録者ベースで170名ほど、2019年5月現在の勉強会の累計参加者は250名を超えます

PyCPAコミュニティと勉強会への参加は無料となっており、運営事務、会場確保、講師の登壇等はすべて、コミュニティのビジョンに共感していただいている組織・個人のボランティアでなりたっています。

PyCPAにコミュニティメンバーとして参加したい方はPyCPAのSlackにご登録ください。

ツイッターでのPyCPAコミュニティメンバーのやり取りは、こちらからご覧いただけます。

リアル・オプション輪読会の概要

今回の勉強会は初の輪読会となりました。

輪読会とは、複数人で同じ本を読み進め、集まって内容を共有し、理解を深める方法です。

今回の輪読会で取り組んだのは『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』という専門書です。


この本は、ファイナンス(金融工学)とプログラミング(ExcelVBA)を用いて、経営意思決定の柔軟性が創出する価値=リアル・オプションを定量的に評価する手法が学べる本です。
参考記事:『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』内容の概説、こんな人におすすめ、いい点と注意点

本書はリアル・オプションを学ぶとても良い題材である一方で、なかなか難易度の高い本だったので、輪読会の題材にしました。

今回は初回ということで、輪読会の目的や進め方について説明しました。
参考記事:【開催前夜】リアル・オプション輪読会の目的、理由、進め方

輪読は第1章を扱いました。

第1章はプログラミング言語ExcelVBAの基礎で、テキストに書かれたコードを入力しながら参加者全員で読み進めました。

VBAの始め方や、変数や関数の定義、for文やDoWhile文などの基本構文、配列の使いかたなどについて学びました。

途中、ファシリテーターから「このコードはモンテカルロ法のこんなシーンで役に立ちます」「この構文は株価シミュレーションの計算で使います」というような解説をはさみながら進めました。

進度を合わせて読み進め、コードも入力しながらということでしたので、理解にばらつきが出るかな?と恐れていましたが、みなさん思いの外つまづくことも少なく、理解度、満足度ともに高かったように思います。

感想とフィードバック

予習について

全員でコードを入力しながら、さくさくと読み進めたので、ちょっと駆け足気味になりました。

この点に関して、参加者から「次回は予習して来ようと思った」という声が上がりました。

事前に準備をしてくれば、輪読会をより意義深いものにできそうです。

バグについて

事前に予習してきた方も、その場でコードを入力した人も、みなさんバグ=プログラムが動かない問題に悩まされていました。

しかし、参加者のひとり(エンジニア)の方から「バグは出るもの、人は完璧じゃない、能率的にバグがとれればOK」という前向きな意見が出て、参加者の気持ちも楽になったように思います。

プログラミングにはバグがつきものですので、輪読会のように他の人と助け合える環境で学習を進めるのがよいと思います。

練習と実践について

プログラミングは一度勉強しても、使わなければすぐ忘れてしまう、という感想が出ました。

たしかに、人は忘れる生き物ですから、どんなに勉強しても使わなければ忘れてしまいます。

もし勉強したことを忘れたくないのであれば、お仕事で使うなり、勉強会で披露するなりして、知識の維持に努める必要がありそうです。

参加者アンケート結果報告

PyCPA リアル・オプション輪読会第1回参加者には、事前に以下のアンケートにお答えいただいています。
  • 参加者の所属
  • 参加理由
  • 意見・感想・提案など
その回答状況を見ていきましょう。

参加者の所属

PyCPAは会計士の勉強会として発足したこともあり、会計士等の比率が一番多い結果となりました。

次いで一般事業会社(経理財務系)の方、金融機関勤務と続きます。

輪読会の内容がプログラミングであったため、エンジニアの方の存在感はとても大きかったです。

会の最後にMVPを決めたのですが、AI開発がご専門のプログラマの方が絶大な支持を得て見事MVPを獲得されました。

参加理由

リアル・オプション輪読会の参加理由は、金融工学、ファイナンスへの関心が首位、次いでリアル・オプション、企業価値評価への関心となっています。

みなさんお仕事で金融・ファイナンスに関わりがある方がほとんどで、その理解を深めたいという方が大多数でした。

リアル・オプションという経営意思決定のためのツールを学びたいという、このテキストの目的ど真ん中のかたもたくさんいらっしゃいました。

ファイナンスにせよ、VBAプログラミングにせよ、このテキストはとてもよい教材になりますので、是非チャレンジしてほしいと思います。

参考記事:『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』内容の概説、こんな人におすすめ、いい点と注意点

意見・感想・提案など

自由回答で寄せられた意見等についてまとめます。

まったく門外漢ですが、なにか楽しそうだと思いました

モンテカルロ法という言葉ぐらいしか知らないので、その内容を理解したい

私も最初はそうでした。

モンテカルロ法という何やら凄い技術があるらしい、なんか楽しそう。

そういう興味が人生を豊かにしてくれると信じています。

一緒に楽しみましょう。

将来的に転換社債のプライシンクモデルを作りたいです!

業績連動型のストックオプション

モンテカルロ法は金融商品評価の強力なツールで、その応用範囲は膨大です。

輪読会での学びをきっかけに、よりアドバンストな内容に挑戦してみるのもいいでしょう。

意思決定にどう活かすのかに興味があります。

リアル・オプションは経営意思決定のツールとして有用です。

単に本を読み、ふーん、そういう手法があるのね、で終わらせることなく、是非輪読会で他の方とディスカッションすることで、ビジネスへの応用について探っていきましょう。

私もとても楽しみです。

まとめ

PyCPA リアル・オプション輪読会の振り返りについて述べました。

徐々にその裾野を広げつつ、コミュニティとしての輪郭を備え始めたPyCPAですが、まだまだ始まったばかりです。

みなさんの学ぶ意欲と発信で、一緒に楽しみましょう。

【開催前夜】リアル・オプション輪読会の目的、理由、進め方

こんにちは、毛糸です。

この記事を書いている日の次の日(2019/5/11)に、『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』の輪読会を開催します。
『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』輪読会第1回 

第1回開催に際して、この輪読会の目的、なぜ輪読会を開くのか、どんな風に進めるのかについて整理しておきたいと思います。

そもそも輪読会とは何か

輪読会とは、複数人で同じ本を読み進め、集まって内容を共有し、理解を深める方法です。

大学のゼミやエンジニアの勉強会の一環として行われています。

事前に内容をまとめ、当日にプレゼンテーションを行う方式がとられることが多いです。

本を独りですべて熟読する必要がないので、効率的に内容を理解できます。

『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』輪読会の目的

この輪読会の目的は『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』を読破することです。

第一目標は「読むこと」であり、完全な理解は敢えて目指しません。

理解度の目安でいうと、他の人に「この本はこういうことが書いてあるんだよ」と雰囲気を語れるレベルでOKです。

なぜ「理解すること」を第一目標にしないかというと、本書がとてもハイレベルな内容であるからです。

本書の内容は本ブログの記事『『モンテカルロ法によるリアル・オプション分析』内容の概説、こんな人におすすめ、いい点と注意点』にまとめてありますので、その難しさの雰囲気がわかると思います。

とてもハイレベルなので、もはやみんなで足並み揃えて理解しよう、というのが不可能です。

十分に理解している人が参加者に講義するスタイルのセミナーであれば可能かもしれませんが、今回はそういった形式にはしないので、とりあえず「読む」ことができればOKということにします。

もちろん、「読む」ことから理解は始まりますし、輪読会への参加でかなりの理解が得られるので、決して「理解」を放棄しているわけではありません。

なぜ輪読会を開くのか、独りではいけないのか

本書を輪読会で読む理由は3つあります。

1.難しいから

本書はファイナンス(金融工学)とプログラミング(VBA)の理解がなければ読めません。

独りでこの本に取り組むとなると、かなり気合を入れて取り組む必要があります。

しかし、忙しいビジネスマンが、難解な数学やプログラミングにじっくり取り組むのはなかなか厳しいものがあります。

輪読会で読むことで、ファシリテーターや他の参加者の理解を共有でき、意見を聞きながら読むことが出来るので、理解が深まります。

2.甘えてしまうから

独りでは「わかったつもり」になったり、テキストに書いてあるプログラミング・コードを眺めるだけで入力しなかったりと、甘えが出ます。

本書はプログラミング・コードを実際に打ち込み、手を動かしながら読み進めることを前提としているので、甘えると何も身につきません。

同じ目標を持つ人で集まって、みんなで読み進めることで動機づけを図ります。

3.実務的だから

リアル・オプションは経営意思決定のためのツールであり、ビジネスに活かすことの出来る実務的な技術です。
 
したがって、リアル・オプション分析をどう活用するか、という視点がとても大切になります。
 
しかし、独りでは想像力に限界があり、学びをどう活かすかというところに目が向かない可能性があります。
 
輪読会でディスカッションすることにより、自分では思いつかないアイデアに触れられます。
 

輪読会の進め方

輪読会は通常、発表者を事前に決めておき、持ち回りで本の内容をプレゼンテーションします。
 
しかし、リアル・オプション輪読会はまず「読むこと」を目的としており、そのためには参加のハードルをなるべく下げたいと思っています。
 
したがって、参加者には特に事前準備を強制せず、輪読会の中で読み進め理解するようなやり方をとります。
 
リアル・オプション輪読会では、参加者が順繰りに、1人1パラグラフを音読します。
 
その内容について、意見がある人は発言してもらい、また、ファシリテーター(僭越ながら私が務めます)が解説を加えます。
 
テキストに記載されたVBAのコードは、事前に入力してきた人がいれば、そのプログラムを実際に動かしてみます。
 
動かなければ、その場でみんなで改善策を考えます。
 
なので、動くプログラムが作れたかどうかはさておき、事前にコードを書いてきた人の成長が加速するような進め方をとります。
 
会の終了後、動くコードを参加者で共有します。
 
また、会の終わりに、その日のMVPを決めて、みんなで讃えます。
 

まとめ

リアル・オプション輪読会の前日ということで、輪読会の目的や、理由、進め方についてまとめました。
 
ともに学ぶ人がいるというのは嬉しいことです。
 
是非こうした機会を活用し、スキルアップに役立ててください。
 

 

 

 

私の生活において「数学」は何に役立っているのか

こんにちは、毛糸です。

最近、数学を学びなおす社会人が増えているそうです。

ビッグデータやAIといった新しいテクノロジーを理解するに当たり、数学が重要であるというのがあるようです。

私も、大学院で金融工学を研究し、その後も趣味で勉強を続ける中で、数学をいつも身近に感じています。

今回は、私の生活において数学がどんなふうに役立っているのかを振り返ってみたいと思います。

続きを読む

「去年はこうでした」が通用するための条件

こんにちは、毛糸です。

先日、会計士の方がTwitterでこういった趣旨の発言をしていらっしゃいました。

「去年はこうでした」は通用しない。1年前と何も変わっていないと思っているのか。

このつぶやきに関して、私はこうツイートしました。

今回は「去年はこうだった」という発言が通用するための条件について考えてみたいと思います。

前例踏襲は悪いことか?

「去年はこうだった」という発言の趣旨は、「去年はこういう手順で仕事をして、特に問題にならなかった。今年も同じようにやっているのだから、問題ないはずだ」ということでしょう。

この「去年はこうだった」という考え方、前例踏襲の姿勢というのは、個人的には間違った考え方ではないと思います。

なぜなら、去年の作業結果が妥当で、今年も去年と同じ前提と手続きを踏襲しているのなら、今年も同様の結果になる蓋然性が高いからです。

もし、去年の作業内容と結果を完全に忘れ去り、毎年「スクラップ・アンド・ビルド」でゼロから作業を組み立て、結論を導くようなやり方をしていたら、同じ作業と判断を毎年繰り返すことになり、非効率です。

同じ手続き、同じ判断を繰り返したところで大きな意味はなく、単純に手間が増えるだけですから、既に得た結論(去年はこうだった)に依拠できるならしたほうが、負担が少なくて済みます。

疑うことのコスト

前例踏襲は、最近よく目にする「疑うことはコスト」にも通じる考え方です。

「疑うことはコスト」というのはGoogleに浸透している価値観であるとされ、現代のビジネスマンのあり方に指針を与えてくれる良書『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』のなかで「ハイパー性善説」として紹介されている考え方です。

変化の激しい現代において、人を疑いスピード感を害するのは、大きな損失になりえます。

今回の「去年はこうだった」に関しても、去年の手続きと結果をいちいち疑うことで、追加的な負担が生じます。

毎回前年の結論を疑ってかかるのはコストがかかり、効果も大きくないでしょう。

むしろ、毎期踏襲しても問題が出ないように、しっかり作り込んで確実に引き継ぐべきで、私がコンサルを行っている大企業の経理では、そういう仕事の仕方をしています。

「去年はこうでした」が通用するための条件

「去年はこうでした」という前例踏襲のマインドは、同じ作業を繰り返すことを回避し、仕事を効率化するために一役買っています。

しかし、どんな場合でもこうした考え方が通用するわけではありません。

「去年はこうでした」が通用するための条件、それは、

去年と比べて作業の前提や手順に変更がない

ということです。

「去年はこうでした」というのは、去年と今年とで作業が同じならば結論も同じである、という仮説に基づいた判断です。

この判断が妥当であるためには、去年と今年の作業の前提条件が同じである必要があります。

去年と今年とで作業環境が様変わりしているなら、同じ手続きをとったとしても、同じ判断が行えるとは限りません。

したがって、「去年はこうでした」が通用するためには、「去年から前提に大きな変更はない」ということをきちんと確かめる必要があるのです。

冒頭の会計士さんも、「去年はこうでした」は変化の激しい状況においては通用しない、だから言ってはいけないのだ、という主張であると推察します。

前提が変わっていないかどうかをきちんと判定した上で、前例踏襲を行う分には、大きな問題は発生しないのではないかと思います。

前提の変化は、業務に組み込まれた仕組み(内部統制)でクリアできる問題ですので、安易に「去年はこうでした」と言わせないためのルールや仕組みをきちんと整えたいものです。

まとめ

「去年はこうでした」という前例踏襲は、仕事の無駄を省き効率化するのに役立ちます。

「疑うことはコスト」という考えにも通じるものがありますが、いつも妥当であるとは限りません。

「去年はこうでした」という主張が通用するためには、去年から前提に大きな変更がないことを、きちんと確認する必要があります。

ホワイト企業に失望する人の思考と理由

こんにちは、毛糸です。

先日こういった呟きをしました。

私はいわゆる「ホワイト企業」に勤めていますが、ときどき転職してすぐに「こんなはずではなかった」と失望して会社を去る人がいます。

今回はそんな人の思考とその理由について考えてみたいと思います。

続きを読む

年金のリスクとリターンを統計プログラミング言語Rで計算してみた

こんにちは、毛糸です。

私は【投信定点観測】と題して、投資を行っています。
参考記事:【投信定点観測】インデックス投資信託8つ・ロボアドバイザー2つ・アクティブファンド3つにドルコスト平均法で積立投資してみる

しかし、私のように投資をしていない人でも、日本人はほぼ全員、金融リスクをとっている、ということをご存知でしょうか。

それは「年金」です。

私たちが加入している国民年金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という機関によって運用されており、株や債券といったリスク資産に投資が行われています。

リスク資産に投資が行われているということは、ある程度のリターンを期待して、リスクをとっているということです。

今回は、私たちの年金がどれくらいのリスクを負い、リターンを求めているのかを、プログラミング言語Rを用いて計算してみたいと思います。

統計プログラミング言語Rと、オンラインでの利用

統計プログラミング言語Rは、データサイエンスで頻繁に用いられるプログラミング言語です。

統計解析や計算を簡単に行うことができ、計算機としても使えます。

本記事ではプログラミング言語Rを用いて、年金ポートフォリオのリターンとリスクを計算します。

Rを使うには、本来RというソフトウェアをPCにインストールする必要がありますが、今回はちょっとした計算に使うのみなので、ブラウザ上で完結するR onlineを利用します。
参考記事:ブラウザ上でRプログラミング(R online、Rオンラインを使う方法)

R onlineのサイト(リンク)でコードを打ち込めば、すぐにRによる計算が実行できます。

試しにサイト上で
1+1
と入力し、[Run it]してみると、すぐに下の方に計算結果が表示されます。

以下、このR onlineを使って、年金ポートフォリオのリターンとリスクを計算します。

すでに打ち込んである内容は、すべて削除して構いません。

GPIFの基本ポートフォリオ

年金はリスク資産に投資を行って運用されています。

年金運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、リスク資産への投資に関して、「基本ポートフォリオの考え方」(外部リンク)という指針を示しています。

GPIFは「基本ポートフォリオの考え方」のなかで、年金ポートフォリオとして

  • 国内債券
  • 国内株式
  • 外国債券
  • 外国株式
の4つの資産クラスに投資を行うことを取り決めています。
従来は資金の大部分を国内債券で運用してきましたが、年金は将来の長きに渡り、国民の老後の資金を供給する必要があり、国内債券だけでは資金を賄えなくなったため、リスクをとって高いリターンを得られるように方針を変更しました。
現在、GPIFは4つの資産クラスを、以下のような割合で投資することとしており、これを「基本ポートフォリオ」と呼んでいます。

(出典:https://www.gpif.go.jp/gpif/portfolio.html)

早速、この基本ポートフォリオをRでコーディングしてみましょう、以下のように入力して、[Run it]してください。

#基本ポートフォリオ(各資産クラスのウエイト)
weight<-c(0.35,0.25,0.15,0.25,0)

ここではweightという変数に、各資産クラスのウエイトを代入しています。c()というのは、数字を並べてひとくくりにします、というときに使う決まり文句です。

5つの数字はそれぞれ、図の中の資産構成割合を示しています(最後の0は短期資産ですが、表にはありません)。

資産構成割合をすべて足すと1(100%)になることが確認できます。

#足すと1になることを確認
(sum(weight))

基本ポートフォリオのリターン

2014年10月31日に公表された「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(PDFリンク)では、各資産クラスの期待リターンが記載されています。

(出典:https://www.gpif.go.jp/gpif/portfolio.html)
別に、名目賃金上昇率を差し引いた実質リターンというのも表記してありますが、本記事では実際の資産価格から推定されたであろう名目リターンに着目します。

これら期待リターンをもちいて、年金ポートフォリオのリターンを計算してみます。

まず、各資産の期待リターンをRでコーディングしてみましょう、以下のように入力して、[Run it]してください。

#各資産クラスの期待リターン(名目、経済中位)
mu<-c(2.6/100, 6.0/100, 3.7/100, 6.4/100, 1.1/100)

金融工学では期待リターンを\( \mu\)(ミュー、mu)と表すことが多いので、muとしています。

基本ポートフォリオのリターンは、各資産クラスのリターンに、前述の基本ポートフォリオのウエイトをかけることで求められます。

#ポートフォリオのリターンを計算
(mu_PF<-weight%*%mu)

テクニカルな話ですが、weightmuはどちらも「ベクトル」なので、その掛け算には%*%という記号を使います。

結果は0.04565(4.57%)となりました。これが年金の基本ポートフォリオの期待リターンです。

「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(PDFリンク)の9ページ目に、これと全く同じ数字が記載されています。

基本ポートフォリオのリスク

「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(PDFリンク)では、各資産クラスのリスクと相関係数が記載されています。
(出典:https://www.gpif.go.jp/gpif/portfolio.html)
リスクは各資産の期待リターンからのブレを標準偏差で表したものであり、相関係数は2つの資産クラスのリターンの連動性を表す尺度です。
これをRに入力しましょう、以下のように入力したら、[Run it]してください。

#各資産クラスの分散(標準偏差の2乗)
sigma<-c(0.047,0.251,0.126,0.273,0.005)
#相関行列
Rho<-rbind(
    c(1,-0.16,0.25,0.09,0.12),
    c(-0.16,1,0.04,0.64,-0.1),
    c(0.25,0.04,1,0.57,0.15),
    c(0.09,0.64,0.57,1,-0.14),
    c(0.12,-0.1,-0.15,-0.14,1))

rbind()というのは、c()でまとめた数値(ベクトル)を縦に並べる、という意味の関数です。

これら情報だけでは、基本ポートフォリオのリスクは計算できません。

基本ポートフォリオのリスクを計算する前に、各資産クラスの分散と相関行列から、分散共分散行列というものを作る必要があります。

以下のように入力したら、[Run it]してください。

#分散対角行列
sigma_diag<-diag(sigma)
#分散共分散行列
Sigma<-sigma_diag%*%Rho%*%sigma_diag

分散共分散行列にウエイトをかけることで、基本ポートフォリオの分散を計算することが出来ます。

なぜこういう計算になるのかという疑問がわきますが、「線形代数」という数学を勉強するとわかるようになります(記事の末尾に参考文献を挙げます)。

R onlineに以下のように入力したら、[Run it]してください。

#ポートフォリオの分散
Var_PF<-weight%*%Sigma%*%weight

分散の2乗根(ルートのこと、0.5乗も同じ)が標準偏差(リスク)になります。

#ポートフォリオのリスク(標準偏差)
(sigma_PF<-Var_PF^0.5)

結果は0.1276…(12.8%)となりました。これが年金の基本ポートフォリオのリスクです。

「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(PDFリンク)の9ページ目に、これと全く同じ数字が記載されています。

まとめ

本記事では、年金運用の基本ポートフォリオのウエイトと期待リターン、分散等の情報から、年金ポートフォリオのリターンとリスクを計算しました。

私たちの年金の原資となっている資産は、リスク12.8%を追うことで、期待リターン4.57%の獲得を目指しています。

こうした分析は、統計や数学を少し勉強すれば簡単に行なえますので、是非ご自分でも興味を深めてみてください。

参考文献等

投資分析に必要な数学は、高校数学が基本となっていますので、復習してみることをおすすめします。


一歩進んだ投資分析には、行列や線形代数の知識が必要になりますが、金融データ分析を扱うテキストではそういった分野を解説してくれているものもあります。

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