収益・費用は資本の増減内訳

収益・費用は期中の資本増減の原因を細分化したものです。

販売取引は通常、

①現預金100/売上100

のような仕訳で表現します。しかし貸方の売上という勘定科目は資本勘定の内訳の一つと考えれば、上の仕訳を

②現預金100/資本100

のように表しても間違いではありません。②の仕訳における資本の増加原因を原因をよりはっきり表したいがために①のような仕訳を行っているのです。

実は、こうした考え方は財務会計論の有名なテキストにはきちんと書かれています。

『財務会計講義』の図表2-6では損益を生じさせる取引はすべて資本の増減として扱われています。

『新版 現代会計学』では収益と費用を以下のように定義しています。

収益とは「増資その他の資本取引以外による純資産の増加原因」を指し,費用とは「減資その他の資本取引(および配当などの剰余金処分)以外による純資産の減少原因」をいう。

以上の参考文献からも、収益・費用は資本(純資産)の変動要因の内訳ないし細分化にすぎないということがわかります。

貸借対照表と損益計算書は何を表しているのか?

私たちの社会において,企業は重要な役割を果たしています。

企業は投資者から集めた資金を使って,製品を作ったり工場設備を整えたりしています。こうした企業の経済活動は,財務諸表という報告書によって,投資者に伝達されます。

財務諸表のなかで特に重要なのが,貸借対照表と損益計算書です。

この記事では貸借対照表と損益計算書が何を表した報告書なのかを解説します。

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お金のない世界で会計は存在しうるか

私たちが目にする財務諸表は,企業の財政状態や経営成績を必ず貨幣価値で表現します。これは企業会計の基本ルールのひとつであり,会計はお金と密接に関わっています。

では,お金のない世界では,会計は存在しないのでしょうか。

 

財務会計の枠組みと貨幣的測定の公準

財務会計は企業の経済活動を貨幣単位で測定し,報告書として企業外部の利害関係者に伝達する仕組みです。

この定義のもとでは,お金のない世界で財務会計は存在しえません。

財務会計の定義の中で,貨幣(つまりお金)を尺度として企業の活動を表すことと明言されているため,お金のない世界では財務会計の定義を満たす会計は存在しないということです。

財務会計情報が貨幣単位で表されるという要請は,貨幣的測定の公準とよばれ,財務会計における基本的条件のひとつとされています。

 

管理会計と非貨幣的尺度

会計学の主要な分野として財務会計と並び立つのが,管理会計です。

財務会計と管理会計の相違点・共通点

管理会計では必ずしも貨幣額における測定・報告は求められていません。

管理会計は経営意思決定において役立つ情報を把握し,適切な意思決定者に伝達するすることで,経営目標を達成しようとするプロセスです。

意思決定に必要な情報は貨幣的に測定されるものである必要はなく,例えば生産性などパーセンテージで図られる指標であったり,製品の原料となる材料の重量といった物的尺度も広く用いられます。

したがって,お金のない世界でも管理会計は存在するといってよいでしょう。

管理会計の定義

狩猟時代や自給自足の生活に会計はあったのではないか


Twitterで「会計が不要な世界」について問いかけたとき,狩猟時代や自給自足の時代には,会計はなかったのではという意見をいただきました。

たしかに,貨幣が発明される以前の物々交換の時代には貨幣測定は行われませんし,農業が発達し作物の備蓄(つまり資産)が行われる以前の狩猟・採取の時代には,会計報告の対象となる状況は多くなかったのかもしれません。

しかし「一族の若者の誰々は狩りが得意だから栄養をつけさせよう」とか「誰々が良い矢尻をたくさん持っているらしい」というような情報があれば,そうしたスキルをみんなに役立てるための管理会計的視点が生まれても不思議はありません。

また「今日の釣り担当は誰々,目標は5匹だ」というようなコミュニティのルールが生まれれば,漁獲高を測定単位とした財務会計が求められていたかもしれません。

こう考えると,原始的な営みの中にも会計の考え方は(今の姿と異なっているとはいえ)存在していたように思えます。

参考文献

この記事で触れた財務会計の定義や会計の考え方は,こちらのテキストを参考にしました。会計に関する基本的事項から,最新の会計基準の考え方までを網羅した,会計学テキストの決定版とも言える本です。

簿記・会計におけるいくつかの「矢印」概念について

この記事では簿記・会計における「矢印」を3つ紹介します。

複式簿記を前提とする会計の世界において,ここであげる3つの概念はいずれも「矢印」で表現できます。

簿記・会計の概念を「矢印」で表現することで,専門用語を理解する助けになります。

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報酬は固定額にすべきか,出来高払いにすべきか

ある業務を社内外の誰かに委託するという構図は,多くの場面で表れます。

例えば以下のような例があります。

  • 組織(委託者)が社員(受託者)に業務を任せ,給与という報酬を払う(企業の日常的な業務)
  • 組織(委託者)が取引先(受託者)にサービス提供を任せ,対価として報酬を払う(取引先へのサービス依頼)

私はコンサルタントとして会社の課題解決を支援する仕事をしています。そういった仕事も,上記のような委託関係にあります。

委託関係において,報酬を固定額にする(固定報酬制)か,作業量や成果に連動する出来高払いにする(変動報酬制)かは,悩ましい問題です。

この記事では固定報酬制と変動報酬制メリット,デメリットを,委託者と受託者の立場から整理します。

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プロジェクトの管理会計の難しさ

非定型の有機的業務であるプロジェクトに対して,伝統的な管理会計を適用するのは難しいと言われています。

この記事ではプロジェクトの定義に触れたあと,プロジェクトマネジメントのなかで管理会計を適用する難しさについて述べます。

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企業の主観を伴わない「生の会計データ」の開示について

会計情報の利用の仕方や、会計情報に期待する性質は、利用者によってさまざまです。

現在の財務会計制度においては、企業は経済事象を一般に認められた会計原則(GAAP)に基づきつつ、主観や判断を交えて会計処理を行い、財務諸表として公表します。

しかしXBRLなどの会計データベースの普及が進み、会計情報を分析するツールも豊富になっている現状に鑑みれば、もはや企業の主観が混ざった財務諸表よりも、報告書の作成根拠となる財務データベースを公開するほうが、利用者にとって都合がいいという可能性もあります。

多目的に利用可能な財務データベースを企業が構成しこれを公開すれば、利用者は自分の目的に沿った会計情報を都合に合わせて作り出すことが可能となるかもしれません。

【参考記事】大福帳型データベースは単一性の原則を満たすか

『新・現代会計入門』では、このような会計のあり方が実現したとき、

会計基準の役割は,減価償却方法や棚卸資産評価法などの会計処理を定めることではなく,むしろどういう項目がデータベースに含められるべきかを決めることが重要となってくる

と述べています。

企業の経済活動に関する情報を可能な限り削ぎ落とさずにデータベース化し、それを開示しようという考え方は、以下の研究書でも解説されています。

 

事後的分析に学ぶ、過去の振り返り方

企業はその経営を効率的なものにするために、利益目標を立てます。

利益目標は組織の道標になるとともに、事後的に活動を振り返る際の基準になります。

この記事では利益目標と実際利益に差異が生じたとき、その原因を究明するための手法「事後的分析」について紹介します。

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