管理会計の定義

スタンダード管理会計』において、管理会計は以下のように定義されています。

管理会計とは,経営活動のさまざまな局面で,経営管理者が要求する各種の情報を提供し,また当該情報の作成と伝達のプロセスを通じて彼らの行動に心理的な影響を与えることによって,経営目的の実現を支援するシステムである。

財務諸表の作成・公開が社会的に義務付けられるようになった20世紀移行、経営者は会計数値を用いて経営の諸活動を管理したいと望むようになりました。また、効率的な生産を可能にする科学的手法にも注目が集まるようになりました。

管理会計は、経営の管理を担う者が合理的な目標を設定し、それを達成するための意思決定に有用な技術と考えられます。

加えて、会計の「情報システム」としての本質に着目し、管理会計もまた意思決定のための情報システムの中核とみなされるようになりました。

ただ、管理会計の全体像や個々の技術を端的な表現で言い表すのは難しいと、『スタンダード管理会計』では述べられています。

なぜなら、管理会計は制度的要請である財務会計とは異なり、法律や社会制度から制約を受けるものではないからです。つまり、多様な企業における、多様な意思決定を支援する情報システムが管理会計であり、それらに共通する特性や共通の枠組みを示すのは困難なのです。

このことを踏まえ、『スタンダード管理会計』でも前述の定義を述べる前置きとして、以下のように述べられています。

われわれは「管理会計とは何か」という根源的な問いに直截応えられるだけの術を持たないし,実際,管理会計はそれほど単純なシステムではない。それでも,あえて誤解を恐れずに,必要最低限の定義をここで付与するなら,以下のようになろう。

そうして与えられた「必要最小限の定義」が、この管理会計の定義なのです。

管理会計とは,経営活動のさまざまな局面で,経営管理者が要求する各種の情報を提供し,また当該情報の作成と伝達のプロセスを通じて彼らの行動に心理的な影響を与えることによって,経営目的の実現を支援するシステムである。

企業が似ているとはどういうことか

会計を企業の状態から会計情報への写像と見たとき、異なる2つの状態が「似ている」ならば、アウトプットとしての会計情報も「似ている」ことが期待されます。

本記事では企業の状態が「似ている」ことを数学的に同定式化するかについて考えます。

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実務課題を抽象化するメリット

ビジネスパーソンは、日々さまざまな課題に直面します。それは社会構造に由来する事業上の課題であったり、社外のお客さんとの関係から生じる課題であったり、組織内の人間関係に起因する課題であったりします。

業界人と話をしてみると、意外とみんな似たような課題に直面していることに気付きます。

そして多くの場合、似たような結論にたどり着いています。

このような状況は、個々の実務的課題は具体のレベルで異なってはいても、抽象的なレベルでは同じ課題に直面していることを示唆しています。抽象的なレベルで共通しているが故に、同じ業界では「あるある」と同意してくれるのです。

もし、個々の具体的課題を具体的に解決するのではなく、抽象的なレベルで解を用意しておくことができれば、多くの課題を一網打尽にできます。

MBA(経営管理修士)の課程では、そうした抽象的問題解決の訓練をしています。

座学で抽象論・原則論を学び、それをケーススタディなどに活かすことで具体化の術を学ぶのです。

実務課題を抽象的に考えることで、広範な問題に立ち向かうことができます。

【君の知らない複式簿記 補遺】会計規則の違いを自然変換であらわす

会計には、異なるルールのさまざまな会計があります。例えば、財務会計や税務会計、日本基準と国際基準、連結と単体などは、同じ取引に対して異なる会計を適用することで生じる差異です。

本記事ではこの会計ルールの違いを、圏論における「自然変換」と関連付けてみたいと思います。

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自然変換【簿記数学の基礎知識】

この記事では自然変換(natural transformation)の定義を紹介したあと、会計という関手の自然変換について触れます。

本記事の内容は以下の書籍を参考にしています。

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会計の基礎概念としての「経済主体」は会計が対象とする「系」のこと?

新版 現代会計学』では、会計を以下のように定義しています。

会計は,これらの経済主体が営む経済活動(資金の調達建物の購入など)およびこれに関連して発生する経済事象(建物の焼失,機械の損耗,商品の破損・値下りなど)について,主として貨幣額で測定・記録・報告する行為である

会計の定義のなかに「経済主体」という言葉が登場することに注目しましょう。

同書には「経済活動を営む主体を経済主体といい」とあり、この経済活動こそが会計報告の対象となるものですから、経済主体は会計における重要な概念と言えます。

マテシッチによる会計の基本的仮定やRenesの公理にも、経済主体の存在が会計の前提になっています。

経済主体は会計の「適用範囲」を左右するファクターでもあります。

通常、企業の取引には相手方、つまり異なる経済主体が存在し、その相手方との取引を一定の会計規則に当てはめて仕訳を行い、報告します。

一方、異なる経済主体間の取引であっても、それが連結グループ内の取引であれば、連結会計上の会計処理に影響しません。

このように、経済主体は会計の対象となる範囲を規定する役割を果たしています。これは自然科学における「系(system)」に近い概念です。

経済主体を考えるということは、会計モデルの系を考えるということ、なのかもしれません。

「会計上の取引ではない」を数学的に定義する

企業におけるあらゆる状態変化が会計情報に反映されるわけではありません。

たとえば、企業の役員の交代は、企業の状態を変化させる重要な理由と考えられますが、役員の交代に関する会計処理はありません。

このような「会計上の取引ではない」状態変化は、数学的にどのように表したらよいのでしょうか。

ひとつの考え方は、ある状態遷移\( f\)に関して、その会計的な表現\(\boldsymbol{v }=C_A(f)\)が恒等写像になるとき、\( f\)を「会計上の取引ではない」と定義するというものです。

【参考記事】【君の知らない複式簿記8】会計は写像であり、関手である。

\(\boldsymbol{v }=C_A(f)\)が恒等写像になるということは、\( f\)という状態遷移がおきても、会計状態には変化がない(つまり仕訳を行わない)ということです。

このような\( f\)は、少なくとも\( C_A\)という会計規則に基づく限りにおいては、会計情報にはなんら影響を及ぼさないという意味で「会計上の取引ではない」と考えられます。

このような考え方は、以下のテキスト第6章において、会計システムをオートマトンとして描く際に述べられています。

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